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Endless WAR  作者: 嵯峨時政(さが ときまさ)
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Phase3-23『神なる者』

Phase3-23 23/05/14

another prespective by unsigned…


「かくして、ティス=メディアが戦場を支配し、戦いの火蓋が切られたわけだが……。

 俺もそろそろフロクレスに合流しなければなるまいね」

 すたすたと聖域の南側へ向かいながら名無しの神父がひとりごちる。

「何をしていたのかって。

 そりゃ戦いが終わったあとのラウンドナイツのフォローだよ。

 戦闘が終わった頃には彼らはボロボロで分断された状態だ。回収する部隊を準備するくらいのアフターケアくらい必要だろう。

 まぁ、それも確実に助けられるわけではないが。

 何をしたのか説明しておくと聖域の外、北側数キロ離れたところに報酬の物資を放り投げてきた。後からアルキリオの部隊が回収に来るだろう。

 今からこの辺一帯は更地になるからね、聖域内には置いておけない。

 なんでこのタイミングかと言われれば……戦闘が始まる直前じゃないと発見される可能性があったからね。

 高級な物資を丸一日に放置なんて正気の沙汰ではないということさ」

 やれやれ、とため息を吐く。

「ま、いいか。現状の確認を言えということだったので大体済んだわけだが。

 せっかくだから補足をしておこうか」

 教会を超えて、さらに南へ。

「ラウンドナイツメンバーは誰一人としてこのまま素直にアルキリオに帰ることは出来ない。

 壊滅、とまではいかないが既に怪我をそれなりにしているし、これからもっとしんどい思いもする。

 アルキリオに……帰ることが出来ない者も、出る可能性が高い」

 駆け足のまま数秒黙り、神父は正面を見てラストスパートをかけた。

「可能性、と言っていることからわかる通り、俺は未来の事を確実に知ることは出来ない。

 可能性を全て啓示として知ることは出来ても、誰がどれを選ぶかまではわからないんだ。

 一番驚いたのはハイルロードのの遅刻だ。

 戦闘開始前、最初に聖域が破壊されるはずだったのにまさか本当に寝坊を引くとは……おかげで聖域が滅ぶのが十五分ほど先延ばしされたよ。

 そのせいで戦況も随分と読みにくくなった。

 現在進行形で啓示を受けているが……フロクレスは勝てるのだろうか、俺にもちょっとわからない」

腕を組みながら小走りする。

「ところで、俺が誰と話しているのかだけど。

 いや、とりあえず独り言で喋れと啓示を受けてね、言われた通りにしているだけなんだ。

 俺もいったい何のためにこんなことを言わされているのかはわからないんだよ」

 うーむ、と首を傾げるが神父やはり独り言の意味がわからない。が、とりあえず神様に頼みごとをされたのはこれでまだ二回目なので言われた通りにしてみたのである。

「まぁ、きっと意味があることなのだろうけど、さて。

『a cleric passes by.』(聖職者が通る)」

 聖域の南側出口に到着し、そのまま外に出た。

 ちょうど、セイが足に針を投擲された瞬間だった。

「やれやれ、間に合ったが……」

 まっすぐ走りながら耳を塞ぐ。

 身体強化の意味が無いことは知っているのでそのまま身を縮めて防御の態勢だけ済ませた。

 瞬間―――――あたりを眩しい光と認識できないほどの轟音が響いた。

「―――――ッ」

「―――――ァッ」

 目の前の三人が吹き飛び、神父は辛うじて膝を付く程度で難を逃れた。

「やれやれ、まいったな」

 セイに駆け寄り、神父が足から針を引き抜く。

「ぐっ……」

 いきなり引き抜かれたからだろう、セイが痛みで顔を歪ませる。

「大丈夫か、フロクレス。

 よく時間を稼いだな、もう大丈夫だ。

 足ももう自由になっているだろう」

「えっ、あ、……本当だ」

 何度か地面を踏みしめて確認すると、セイはクラーキィを睨んだ。

「あいつは……」

 視線の先、糸が切れたように転がったプリベッタの遺体と今まさに撤退しようとしているクラーキィがそこに居た。

「困りましたね、魔術が全て効果を喪うとは。

 ヴェルスターも先に言っておいてほしいものです……。

 上物の死体ですが詠唱する隙が無さそうだ……諦めるとしましょう」

 走り去るクラーキィ。

「待て……ッ」

 追いかけようとするセイを手で制しながら神父が視線を後ろに向けた。

「フロクレス、追いかけなくていい。

 君には別にやることが残っている」

 神父が振り向いた先をセイも同じように見ると。

「そんな、馬鹿な……」

 自分の想像をはるかに超えた状況が視界に広がった。

 半径おおよそ五キロほどの半球体だった聖域は見事に消え去っており、中央付近に半径一キロにわたる巨大なクレーター、中にあった建物のほとんどが原型をとどめないほど吹き飛ばされてしまっている。

「驚くのも仕方ない、君が想像できるものではないからね。

 だが、感傷に浸っている時間が無いのも事実だ」

 ぽん、と神父がセイの手に三十センチほどの棒のようなものを渡した。

「え……」

「これはデュナミス。

 俺が聖域を作った時に使ったナイフだ。

 魔力をある程度吸収、保存することが出来る……簡単に言うと何度も使える封石だ」

 唐突に渡されセイが困惑する。

「え、なん、でこのタイミングで……」

「割と便利だったからね、ついさっきまで魔力補助として使っていたんだ。

 この後は君が使うといい、きっと必要になる。すぐ裡に仕舞いなさい」

 そう言ってナイフを渡すとセイの後ろから近付いてくるヴェルスターを視界に収めた。

「さすが早い、本当に時間ないな……。

 フロクレス。君はヴェルと戦う前に今からいかなくてはならないところがある」

 ヴェルスターと戦う、と言われ目を泳がせるセイ。

「いや待ってくれ、ヴェルと戦うも何も状況を整理する時間を……」

「残念ながらそんな時間は無い」

 ぴしゃり、と神父が言い放つが時すでに遅し。

「よぉ、セイ」

「……ヴェル」

 後ろからゆらりとやってきたヴェルスターにセイが驚いた表情で振り返った

「色々、準備は整ったかよ」

 にっと、いつも通りアンニュイで、気さくな表情のヴェルスターにセイはが何も言えずにいると、神父が二人の間に割って入った。

「残念ながら君の相手はしばらく俺がさせてもらうよ」

 間に入った神父に、ヴェルスターがあからさまに不快な顔をする。

「誰だよお前……って、あぁ、ここの聖域の支配者さんか。

 ごめんな、任務だったから壊したんだ。悪く思わないでな」

 言葉のわりに悪びれることなくヴェルスターが肩を竦めてみせた。

 対する神父はため息を吐くとセイに首だけで振り返った。

「フロクレス。

 ショップに行きなさい。さよならは君が聞くべきだ」

「――――――」

 神父の言葉にセイは顔を蒼くするとヴェルスターを素通りして聖域の方へ走って行ってしまった。

 あまりにいきなりの事に目を見開いてセイの背中を見送ると、ヴェルスターはゆっくりと神父に向き直った。

「お前さ、セイに今何言った」

 その表情は視線だけで人を殺してしまいそうなほどにゆがんでいて、普段の温厚な彼から想像もつかないものだった。

「彼とお別れを済ませなければならない人がいたからね。

 ……その手伝いをしただけだよ。

 さっきも言ったけど、君の相手はしばらく俺だ。

 せいぜい時間稼ぎに付き合ってくれよ。

 全てを知る権利を持つ者の一人、ヴェルスター=ハイルロード」

 言って、短剣を二本取り出す神父に、応じるようにヴェルスターがグングニルを裡から展開した。

「あぁ、久々に冷静さを欠きそうだ。

 とっとと貴様を殺してセイの下に馳せ参じるとしようか。

 聖域マックスウェルの守護者、無銘の英雄ッ」

 電光石火、ヴェルスターが魔眼を開きながら神父の首を撥ねるべく槍を振りかざした―――――。

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