Phase3-20『八百年後の君と』
Phase3-20 23/04/24 投稿
Original perspective by Sei
ショップでこき使われた後の仮眠明け。
俺は宿泊施設の広間で神父の事をメンバーに根掘り葉掘り聞かれていた。
「――――なるほどな。神の啓示を……」
バーンがふむ。と、顎に手を当てながら何か考えている。
「セイはそれ本気で信じてんの」
ブレイドがつまらなさそうに訊いてくる。
「信じている、というより発言で信じざるを得なかった。
午前中のガラスのこともだけど情報がいちいち正確すぎる。読心と未来予知か、とも考えたけど……それだけできれば騙す必要性もないだろ……っていうのが俺の結論」
「あぁ、確かにそんだけ出来るなら確かに全てを知る権利を持つって言っても過言じゃないのか。
すげぇ爺さんだとは思ってたけど正体がそんなだとは思ってもみなかったなぁ」
ブレイドがへぇ、と感心したように頷く。
そして。
「でも正体って言ったらお前もだよな、セイ」
唐突に自分の事を話題に出され息を飲む。
なんと答えればいいかと恐る恐る三人を見るとバーンがブレイドを睨みつけ、言った当人はやば。と口を押さえた。シールは、と言えばあー。と、目を泳がせている。
……様子からして詰問しないよう口止めされていたのだろう。
息を吐いて決心する。おそらくこの三人に隠していてもメリットは無い。
「俺は八百年後の未来から来た、異邦人だ」
はっきりと告げる。
「いや、いやいや、おいおいおい。さすがにそれは突飛すぎるだろ、未来から来るって。
それもそんなに先だなんて、どうリアクションしたらいいかわかんないんだけど」
「黙ってろブレイド」
眉を顰めるブレイドをバーンがぴしゃりと切って捨てる。
「……なるほど、合点がいった。こっちの生活スタイルになじむのに少し時間がかかったのはそれが理由か。
あとは行動から察するに精細性こそないが歴史としてこの時代の事を知っていた、と言う感じか。
無理を承知で聞くが、これから起きることを教えてもらうことは可能か」
さすが、と言うべきだろうか。俺が来てからの事を思い返しながらだろう、バーンは俺のおおよその状況を当ててきた。
「いや、魔術的にも歴史的にも教えるのはきっとダメなんだろうけど……そもそも俺が知っている歴史と、今起きてることがほとんど噛み合ってない。
具体的に言うならキリアリスはグングニルを持ったまま、フリーカウンターも壊滅していない。
あと、ダイアスレフの謀反も二か月以上早かったし……そうだな、俺が知ってる歴史だとマギウス・クスフェルト・アバートの三国はまだ滅んでいない」
話し終えた後にタイムパラドクス関連の事が気になったが、俺が来る以前からここまで変わっているのなら俺が少々話したところで大差ないだろう。と、自分に言い聞かせる。
今は国の方針抜きで味方でいてくれているバーン達の知識を借りたほうがいい。
「その三国が無くなった時のことを俺は知らないんだよな。シール、知っているか」
「ええっと、アバートって言うと五年前に滅亡した国で……他の二つはもう少し前だから六年前、じゃないかな。
私もまだ小さかったから少し自信が無いけれど大体そのくらいだと思う」
思い出しながら自信なさげに言うシール。
「結構前だな。もし早まっているとしてセイが知っている歴史が変わっているのなら“セイ以外に歴史を変えた人間がいる”ってのが妥当だろうな。
それも、最低でも六年以上前に」
「俺以外に――――」
そこまで言われた時点で、点と点が繋がった気がした。
俺より以前にこの世界に落ちた者、世界を変えたいと願う者。
どういう経緯かは別として、その動機を持つ人物に心当たりがある。
ブロフ=マクラウド。
現状俺が知りうる人間でヴェル以外時間旅行してきた可能性があるとすれば彼だ。発言もいくつか気になる点がある。
もし俺が考えている通りなら目的もはっきりしている。
「まぁ、そう悩んでもすぐに答えが出ることは無いだろ。
もし何かこれだって答えがあったら教えてくれたらいい」
悩んでいる俺を見てどう思ったのか、バーンが言った。言い難いのではないかと気を使ってくれたようだ。
「なんか色々複雑になってきたな、頭こんがらがってきたんだけど」
ブレイドがむむむ。と眉をひそませる。
「そうだね。私もよくわかんない」
シールもあはは、と苦笑い。二人には話の内容的にお手上げらしい。実際理解できるバーンがすごいだけでこの反応は普通だろう。
「でもセイが未来から来たなんてな、未だに信じられないけど。
あ、そうなると詠唱無しのアレは未来の魔術なのか」
はて、と首を傾げるブレイド。
おそらく強化や阻害の魔術を言っているのだろうが……。
「いや、あれは……魔力量も出力も低い俺が多少なりとも戦えるようにした苦肉の策だよ。
それも、不意を突けなければ役に立たないし、誰でもできることだから」
言いながら目を伏せた。自分に才能が無いことは解っているが、それでももう少し、せめて常人くらいには使えればな、と。
しかしブレイドはそんな俺の考えなど知らないとばかりに目を輝かせた。
「え、じゃあソレ訓練して使えるようにしたのか。
それなら俺もやったことあるけど、効果全くなかったんだよな。結局効率悪いからやめとけって言われてさ。
セイ出来んだ、すげぇなー」
本心からの言葉だろう、不覚にも嬉しくなってしまった。ハイスクールからこっち、けなされることはあっても褒められることなんてなかった。
「なんだかんだ便利そうじゃんアレ。
詠唱無しって言えば副隊長も使えるよな、魔術」
言いながらむむむ、と手を睨みつけるブレイド。
もちろん、何かが起こる様子は無い。
「俺のはセイのとはまた違う。
生まれついてのものだ、気付いたら使えるようになっていたし、むしろ詠唱の概念がわからない」
バーンがパチンと指を鳴らすと掌周りを電気が走る。
そう、本当に才能がある、というのはこういう人間のことだ。生まれながらにして出来ることが違う。
「バーンのは出力も持続力も桁が違うからな。
どういう原理なのかはさっぱりわからないし属性も違うけどほとんど俺の上位互換だよ」
俺がそう言うとバーンが呆れたようにため息を吐いた。
「セイ、そういう言い方をするもんじゃない。
確かにお前はそんな強くないけど、それでも自分の努力をそうやって卑下するもんじゃねぇよ。結果は確かに重要だが全てじゃない。
積み重ねても駄目なことはあるが、積み重ねたから出来ることもあるんだから。
実際お前には努力したからこそ出来ることがある、そこは胸を張っとけ」
やれやれ、と、呆れたように嘆息するバーン。
「いや、卑下したつもりは無かったんだけど。まぁ、ありがとう」
どうやら励まされてしまったようだ。
わかればいいんだ、とバーンは満足げに頷いた。
「話を戻すが、神父と話したのはそれくらいか」
「え、まぁ。後は俺の事と……あ」
ノートの事もそろそろ話してもいいかもしれないな、と、考えたところで重要なことを思い出した。
「そう言えば……明後日の事はさすがに聞いてるよな……」
恐る恐る聞いてみた。さすがにこれを聞いていないことは無いだろう、と思う。
……思っていたのだが。
「え、何、明後日って。その日にアルキリオに帰るってことならさすがに知ってるぞ」
はて、と顔を見合わせる三人。
最悪の事態が容易に想像できてしまう。
俺は大きく息を吐くと、決心して口を開いた。
「その、明後日、この聖域が崩壊する」
瞬間、宿泊施設内に怒りとも戸惑いともとれる声が、響き渡った。
……常々適当な部隊だと思っていたが、本当に大丈夫なのだろうか。
俺はやれやれと首を振ると、三人に説明を始めた―――――。




