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Endless WAR  作者: 嵯峨時政(さが ときまさ)
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Phase3-6『忍び寄る悪魔』

Phase3-6 23/01/16 投稿

another prespective…


 「だぁ、くそ……くそぅ……」

 ラウンドナイツが立ち去って数時間。

 日も落ち、暗くなってきた道沿いで木に磔にされた山賊が悔しそうにぎりりと歯を鳴らす。

「相手が悪すぎんだよ……これからどうすればいいんだ……」

「どうするもなにもどうにも出来ねぇさ、数日したらアルキリオの回収部隊が来て俺たちはめでたく奴隷の仲間入りさ……」

 各々で不満を漏らすものの、三人とも戦意はひとかけらも残っていなかった。当然と言えば当然だろう、あれだけの力の差を見せつけられたのだから。

「みんな殺されちまった、何されたのかもわからなかった……。

 だから俺は嫌だったんだ、どうせ狙うならあんな立派なのじゃなくて普通商人の馬車だろ……」

 そう言うのは戦闘時一番奥に居た魔術師である。

「ンなこと言ったって聖域から出てきた商人襲ったらこれでもかっていうくらいの武器で応戦されてコテンパンだったじゃねぇか……」

「だからって壊滅させられることはなかっただろうがよ……」

 確かに。と、磔にされたまま抉れた道を三人で眺める。ところどころ血で汚れており、自分たちの仲間が死んだことを実感させられる。

 何度顔を背けても前を向けば嫌でも視界に入る。

「おやぁ、皆様久しぶりですね。

 遠目に見て酷いことにって思ってきてみれば……本当に酷い、実に惨い。どうやったらこのような惨状を作れるのか……大人数での魔術行使でもあったのですかね」

 そう言って遠くから歩いてきたのは入れ墨と顔を半分ほど隠した仮面の男。

 まじまじと焦げた道を眺める。

「お前確か、クラーキィ……クラーキィ=ワン。

 サクリファイスのエセ紳士がこんなところに何しに来やがった」

 山賊の魔術師が今来た男、クラーキィを睨む。

 しかしそんな視線などどこ吹く風。

「いやはや、今しがた別任務が終わったところなのですが、今度は聖域へ行くよう指示がありましてね。

 向かってる道中であなた方を見かけた、というわけです。

 ……それで、そちらはどういった状況で。一発芸でも練習中でしょうか」

 楽しそうですね。と、あからさまな挑発をするクラーキィ。しかし山賊たちはその挑発に乗らないよう、ぐっと堪えた。

「からかうな。

 つい数時間前にアルキリオの遠征部隊とカチ合って惨敗。

 仲間も七人殺された、明日にはアルキリオから回収部隊も到着するだろうから助けてほしい。

 助けてくれれば今の有り金全部出すし、アジトに戻れば追加で報酬も出す」

 と、悔しさを噛み殺しながら頼む山賊の魔術師。

 その言葉にクラーキィは顎に手を当て三人を値踏みするように眺めると、ふっと口元を釣り上げた。

「いえ、報酬は結構です。

 それよりも戦った遠征騎士の情報を教えていただきたい。

 情報如何によっては開放してもいいですよ」

「な……」

 クラーキィの物言いに思わず声を荒げそうになるのをぐっとこらえる山賊たち。ここで台無しにしてしまえば奴隷入りなのだと自分に言い聞かせ、山賊たちは遠征騎士と馬車から出てきた騎士との戦闘内容を話した。

「ほぅ、遠征騎士の技量の高さもさることながら、この惨状を一人でやった騎士が居る、と。

とんでもないですね」

「詠唱が長かった……とはいえ二十秒なかったと思う。

骨も残らない火力だ、見た俺も未だに信じられねぇよ」

 なるほどねぇ。と納得するクラーキィにしびれを切らしたのか、山賊の一人が声を上げる。

「もういいだろう、早く逃がしてくれ。

 腹も減ってるし、体中が痛いんだ……頼む」

 力なく頭を下げる山賊の顔を順番に見比べると、クラーキィは再び口元を釣り上げた。

「開放するとは申しましたが……逃がすつもりはありませんよ」

 くつくつと邪悪に微笑むクラーキィに状況を理解した山賊たちが一斉に暴れ出す。

「どういうことだ、ここまでしゃべらせておいてふざけたこと言ってんじゃねぇぞっ」

 拘束をがちがちと鳴らしながら吠え散らかすものの、クラーキィは意に止めずに地面に魔法陣を書いている。

「アルキリオの騎士を狙ったその心意気は称賛に値します。私も彼らは大嫌いなので。

 ですが、私たちはあくまでレジスタンス。間違った秩序に仇為す者。あなた方がどう思っているかはわかりませんが山賊行為のソレを許容しても推奨はしない。

さて、それじゃあ始めますか」

「―――――ッ」

 ゆらり、と振り返る視線に山賊たちが言葉を失う。

 嬉し気に、楽し気に。狂気に満ちた紫の眼光が夜の闇に閃いていた。


―――――†―――――


Original perspective by Sei


 初日にあった山賊の強襲から三日。

 俺達は特に何事もなく聖域に到着した。

 ……いや、特に何もなくと言うのは語弊があるだろうか。

 あのあと、ブレイドが馬車に酔って何度も道端でダウンしたし、シールは夜の森が怖いからって眠れなくてうんうん言ってたし、俺は俺で不味い保存食にうんざりしていた。

 なんだかんだバーンが一番我慢強くて大人だった……さすが副隊長。

 長かった道のりだが、そんな生活とも今日でお別れだ。

「……遠目には見えてたが、近くで見ると壮観だな……なんだこれ」

 そこには巨大なドーム状の物体。

「見ての通り全周囲を強力な結界で囲まれた、ここが聖域です。

 長旅お疲れさまでした」

 プリベッタが恭しく礼をする。

 そういえばプリベッタも道中一度も愚痴を言わなかった。それどころか酔ったブレイドの世話もしていたし、シールが夜寝やすいように防音用の魔術を使って、俺の食事も少しでも食べやすいよう工夫してくれていた。

「その、色々ありがとう。プリベッタ」

 俺が礼を述べるとプリベッタはやさしく微笑んで首を振った。

「とんでもない、ラウンドナイツの方々をお送りできるだけでも光栄なのにそう言ってくださるだけでみなさんをお送りした甲斐があったというものです。

 帰りは別の者が迎えに来るそうですが、また別に機会があれば是非お供させてください」

 そう言って右手を差し出してくるプリベッタ。魔術的に無用な握手などタブーでしかないが……俺はそんな考えが巡る間もなく右手で応じた。

「うん、こちらこそ」

 この三日間、文字通り命を預けた相手と固く握手を交わす。

 道中、送迎役の彼は俺たちのケアをする必要など全くなかったのだ。そんな相手を疑うなんてさすがの俺も出来はしない。

「では、自分はこのあたりで……」

「やあ、君がセイ=ディリブ・フロクレスだね」

 プリベッタが立ち去ろうとしたところで、後から掛けられた声にはっと振り返る。

 そこには初老の神父が俺を見ながら優しく微笑んでいた。

「誰、だ……」

 他の誰でもない、俺の名前を呼んだ。

 バーンやブレイドもいるというのに視線も真っすぐこちらを向いている。

 警戒しながらじり、と半歩後退する。

「聖域の、英雄……なぜ」

 プリベッタの驚きに満ちた呟きが聞こえる。

 彼が言うことが間違いでないのなら、この人物がこの聖域の支配者……。

 息を飲む。警戒は最大に。様々な憶測が思考に巡っていく。

 その予測すべてを超える試練が、待ち受けていると今は知らずに。



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