Phase3-1『残響』
Phase3-1 22/12/12 投稿
気付くと、暗い暗い闇の中にいた。
目を凝らしても自分の手がうっすらとしか見えないほど視界が悪く、光源は一切見当たらない。
そんな中、どうにか状況をと思い耳を澄ませてみる。
「―――――ぁ」
瞬間、頭の中に引きずるような不快な耳鳴りが響き渡った。
ぎぃぎぃと頭に直接響き続ける音。いったい自分の身に何が起こっているのか、恐怖のあまり歯はかちかちと鳴り、あまりの気分の悪さに俺は思わずその場に蹲ってしまう。
乱れる呼吸、落ち着かない動悸……どのくらいそうしていたのか、視界がゆっくりと明けはじめた。
やっと楽になれるのかと視線を少しだけ上げると目の前には見覚えのある誰かの足。
―――――そこでようやっと、ここが夢の中であることを理解した。
これ以上はやめておけ、と自分の中の何かが制止する。何も知らないふりをしてこのまま目を覚ませば何も辛いことは無いのだ。
耳鳴りがひどくなっていく。日常に戻れ、朝を迎えろ、この行為に意味は無い。
そんな警告を無視して、ゆっくりと立ち上がる。顔を上げたそこには、俺が殺したはずのダイアスレフが佇んでいた。
目が合う。その清廉な顔立ちは、夢の中でも全く淀むことなく、俺の瞳の奥を射抜くように見つめている。
「セイ、なぜ俺を殺したんだ」
静かに、真摯にダイアスレフが尋ねる。
「ユグドラシルの事を調べるのに……貴方が邪魔だったから……」
俺が言うと、ダイアスレフは寂しそうに嘆息した。
「調べるだけならもっと上手いやり方があったんじゃないか。
協力を仰げば悪いようにはしなかった。
殺す必要があったのか」
彼の言うとおりだ。確かに、彼からしてみればユグドラシルを調査されて困ることは無い。
……だが。
「どう見積もっても失敗する試みだった、あんたは俺に殺されなくても別の誰かに殺されただけだ。
なら俺は利用できるものは利用して、少しでも安全な……」
「それは違う。それなら最初から仲間になったふりをして後ろから刺した方が確実だったんじゃないか」
核心を突かれ、思わず息を飲んだ。
「それがわかっていたのに拿捕できるかもしれないって思い上がったんだ。
そうしてセイ、君は失敗した。
俺を、殺したんだ」
何も言い返せなかった。
一番言われたくない人に一番突き刺さる言葉をそのまま向けられている。
「セイ、俺を殺したのは間違いなく君だ。
いつか必ずその罪を贖うときがやってくる」
これは自分の言葉だ。心の底にあるもう消えることのない疵。
目的の為に手段を択ばなかったくせに一人殺しただけでこれだけ心を痛める。
「俺、は……」
「殺したからには進んでくれよ、セイ」
言い淀む俺を難詰し、踵を返すダイアスレフ。
俺は慌てて手を伸ばすものの、その手が届くことは無かった。




