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Endless WAR  作者: 嵯峨時政(さが ときまさ)
21/72

Phase1-13『朽ち逝く短剣』

Phase 1-11 22/8/3 投稿

――――――――――†――――――――――


another prespective by killalice…


 遡ること約一時間。

 対峙するキリアリスとショートエッジメンバー五人。

「さて、誰から死にたい」

 腰に手を当て、正面から受けて立つ様相のキリアリスにキースが眉間に青筋を立てる。

「あの剣が何か知らんが、メインはおそらくグングニルで間違いないだろう。

 総員、浮いている武器にある程度注意しつつ魔術で削りに行く」

 キースが号令を掛けるとメンバーが『了解』と口を合わせ一斉に攻撃を仕掛ける。

 フィッキーとスワリアが前衛、キースが前衛の援護、そしてレイアとクックフェトが中距離で狙撃。

「なるほど」

 いいチームワークだ。と、感心しながらキリアリスは全体を俯瞰する。

「よそ見している暇は無いッ」

 フィッキーの片手剣が一閃、それに重ねるようにスワリアの長剣がキリアリスに襲い掛かる。しかし、キリアリスの前に浮かんでいた蒼い剣がその両方を切り払った。

「な、にッ」

 想像以上の速度で切り払われスワリアが思わず一歩下がる。フィッキーも小盾を構えながら足並みをそろえるように後退した。

 直後下がった二人を追うようにキリアリスの後ろの弓が狙いを定める。引き絞る手もないというのに、同時に放たれる三本の矢。

「待て待て、武器が連携してくるなんて聞いてねぇッ」

 慌てて小盾で三本の矢を叩き落としながらフィッキーが叫ぶ。

「我が指先は照らし導く赤の蜃気楼……道を開けろ、フィッキーッ、

 翳を照らせ、五芒の炎冠ッ」

 続けてスイッチするようにキースが五つの火炎弾を、クックフェトが負けじと四本の矢を連続で放つ。

「純粋な魔力で編まれた魔術なら有効なはず、行けッ」

「────眼を向けよ、歩みの先、陽光は全ての闇を削ぎ裂き無色の極光を放つッ」

 キースの後ろ、数節の詠唱を済ませたレイアの魔力弾が二十ほどキリアリスに降り注ぐ。

 雨のように降り注ぐそれを見ながらキリアリスは一言。

「ランスロット」

 そう、呟いた。

 火炎と魔力弾が降り注ぎながら周囲を照らす。

「私の矢、おまけすぎませんか」

 これは確実に仕留めただろう、という確信の元、クックフェトが愚痴る。

「その代わり詠唱抜きで連射できるだろ。

 それより、警戒を怠るな。アレで仕留められるなら国の英雄なんてやってないだろうからな」

 砂埃が晴れたそこには無傷で嘲笑を浮かべるキリアリスと、新たに展開された銀の十字剣。

「どういう、ことだ」

 キースが眉を顰める。彼としても今の攻撃が防がれるのは想定内であったが、グングニルを出さない理由に全く見当がつかない。非常に強力な武器であり防具のそれを何故彼は使わないのか。

「ふざけているのか……」

「さぁ」

 ふっと笑いながら肩をすくめておどけてみせるキリアリスにキースがぎりっ、と歯を鳴らした。

 甘く見られているのか、使わないのであれば使わないでこのまま正攻法で倒すまでだ、と、判断したキースはハンドサインで部下に連携を指示する。

 内容は防御をフィッキーだけに絞り、残りのメンバーで総攻撃をするもの。

 それを察知してか、キリアリスはふっと笑って呟いた。

「行け、アーサー。目標はあの紫色の炎だ」

 ぱちん、と、キリアリスが指を鳴らすと同時に蒼い剣が空中で踊りながらフィッキーの方へ踊りながら飛んで行った。

「いっ、こ、こいつ……ッ」

 もともと防御の姿勢だったからか、初撃こそ防いだものの、剣から繰り出される連撃にたじたじとあとじさるフィッキー。

 その動きはまるで、人が振る剣のようで。

「キース、あの剣筋隊長にそっくりですよ、どういうことですかッ」

 クックフェトがフィッキーを守りに入る。

 確かに、空中に浮いているからわかりにくいが、隊長が普段振っている剣筋に似ている。

「俺が知るか、キリアリスに訊け、ちぃっ」

 攻撃の出鼻をくじかれ、キースが歯を鳴らす。キリアリスは十字の剣と黒い槍の後ろに隠れながら余裕そうに五人を観察している。

「フィッキー、それ抑えられるか」

「少しはッ、大丈夫ですが、あんま長時間は無理ですよ……ッ」

 クックフェトと一緒に必死で剣を捌くフィッキー。その姿は申告の通り全く余裕がない。見たところダイアスレフの振るうそれと同等の技量で……いや、見間違いでなければそれ以上に早く、巧い。

 だが、魔術でそれだけの操作を行っているということはそちらに相当量の魔力・意識リソースを割いているということ。

「陽炎の彩、穢れ鎮むる赤紅を以て」

 キースの剣が炎を纏う。

 ならば守りの武装の精度はさほど高くないはず、と、残り三人で一斉に攻撃に入った。

 夜闇を引き裂きながら炎の剣が黒い槍を弾き飛ばし、スワリアとレイアもそれに続いて追撃に入る。

 見るも鮮やかな連携。銀の剣が無防備なキースに襲い掛かるがスワリアがそれを難なく弾いて二人でキリアリスの懐に飛び込む。

 それを止めるべくキリアリスの後ろの弓が矢を放つがレイアが片っ端からそれを撃ち落としていく。

「────獲ったッ」

 想像通り、守りに入っている剣はそう脅威ではない。あと二メートルほど、状況は二対一、このままキリアリスの首を切り落として仕舞いだ。

 しかし、キリアリスはその場から動こうとせず、またも円卓の騎士の名前を呟いた。

「ジェレイント」

 新たに現れた金の柄の剣、この剣も他のものと同様空中で踊るような軌道でキースの剣を弾いた。

「いったい、何本あるんだよ」

 仕留める直前で止められたキースが慌てて下がりながら舌打ちする。いったいどれだけの魔力リソースがあるのか、ここまでくるともう予想が出来ない。

「スワリア、もういち、ど……」

 そう言ってスワリアの居たほうへ視線を移したキースはその姿を見て目を見開き凍り付いた。

 スワリアの右腕は肘から落ち、槍が心臓を貫いている。弾いた後二つの武器が一斉にスワリアを狙ったのだろう、簡単に弾かれたのは切り返しを早くするためだったのか……。

「……しく、じっ……た」

「スワリアッ」

 とどめとばかりに金の柄の剣がスワリアの首を跳ね飛ばした。二本の剣がキースの方に向きを変えると、槍もすぐに引き抜かれ同様に刃を向ける。

 二本に二人で手を焼いていたというのに今や三本を相手にすることになっている。

 キースは絶体絶命の状況に生唾を飲み込むと、迎撃すべく再び炎で体と剣を強化して剣を構えた。

「二人目」

 唐突なキリアリスの呟き。すぐさま意味を理解したキースが慌てて後ろを振り返ると、クックフェトが蒼い剣に袈裟切りにされたところだった。

「くっ、そッ」

 蒼い剣を弾き飛ばすと全力でクックフェトに駆け寄り、抱き寄せる。

「ぃ、き、ーーす、ご、め」

 言葉と一緒にこふ、と、血の塊を吐くクックフェト。傷は深く、一目で助からないものだと理解が出来た。

「すまない、くっ」

 クックフェトをそのまま地面に寝かせ、すぐさまキリアリスに向き直る。

 仕切り直しのつもりか、展開された五つの武器はすべての持ち主である彼の元に集まっていた。

 仲間をあっという間に二人も殺され沸騰しそうな頭を歯を食いしばって耐え、キースはハンドサインで残った二人に集合するように指示を出す。

「総員、正念場だ、行くぞ」

『了解ッ』

 真っ先にフィッキーが突撃する。一番弱い彼が良くわかっている。自分がこの中では真っ先に死ぬこと、防御が高いこと、残り二人が中、遠距離で本領を発揮すること。

 ならば自分がやることは一つ、と、まず走り寄って最も攻撃精度の高いであろう蒼い剣を大きく弾き飛ばし、

「おぉりゃあああああぁぁぁあッ」

 槍を掴んでそのまま地面に踏みつけた。

「副隊長ッ」

 二本の武器を一瞬攻撃から外し、叫んだ。

 次の瞬間金と銀の剣が心臓を貫いてきたが関係ない、むしろ好都合だ。これで四本、全部自分に向けることが出来たのだ。

「上等だ、これでッ」

 キースが現状の最大火力で炎を展開し、それを目くらましにしてレイアと一緒に懐に潜り込む。

 相手からはほとんど見えない。が、こちらは腐っても炎の使い手だ、ある程度向こう側が把握できる。それにレイアはわずかだが水属性の魔術を使える。

 いざとなればこちらの都合がいいタイミングで一部の炎を消せばいい。

「仕留めるぞ──ッ」

 武器も遠距離の弓以外、すべてフィッキーが文字通り命懸けで止めてくれた。これで届かなければどちらにしろ終わりだ。

 姿勢を低く、キリアリスの方へ真っすぐ踏み込んだ瞬間。

 ────すとん、とあっけなく終わりの音がした。

「いっ、ぅ──ッ」

 慌てて振り返るとレイアの右肩と左足に矢が刺さっていた。

「なっ……ぐっ、あ──ッ」

 続けざまにキースにも矢が降り注いでくる。何本かを撃ち落とし致命傷こそ避けたものの、続けざまに金と銀の剣に両足を切りつけられ、膝を付いた。

「やだ、まっ……」

 直後レイアのすぐ右、視界ぎりぎりのところから蒼い剣がその首を容赦なく切り飛ばした。絶叫を上げる間も、無かった。

「レイアッ……く、っそ……」

 目の前で仲間の首を飛ばされるも、不屈の心で立ち上がるキース。

 たった数秒の間に身体には無数の傷。もはや怪我をしていないところを探す方が困難である。

「一時間半、か、よく粘ったな」

 ふむ、とキリアリスが星空を背に感心したように数回頷く。そして、数秒目をつぶるとにっと口元を釣り上げた。

「────」

 そのままキリアリスは口を開かず、ゆらりと、蒼と銀の剣がキースに襲い掛かる。

 自分が知っていた情報とあまりにも乖離している戦法。グングニルのオーディンと言えば圧倒的防御力を盾にした近接で圧倒的に蹂躙していくものではなかったか。

「ぐぅ、くっ、貴様、なんだ、それは」

 必死に剣戟を捌きながら問いかけるも、すべて捌くことは出来ず、苦痛に顔をゆがめる。

「────さぁ、なんだろうな」

 はっ、と乾いた笑いを浮かべるキリアリス。

 その間も無慈悲に放たれる斬撃を見ながら、キースはその蒼い剣を思い出した。キリアリスにアーサーと呼ばれているそれは確か、第一親衛隊ラウンドナイツ前副隊長アルバ・カリンの聖剣『ティアレイン』……この国で最も優れた騎士と言われていたあのお方の聖剣ではなかったか。銀の剣も、確か同様、ラウンドナイツの旧メンバーの所有していた……剣だ。

「なぜ、その剣が貴様の手にあるッ」

 不吉な考えが頭をよぎり、キースが歯を軋ませて唸る。

「────さぁ」

 必死な形相のキースをあざ笑うかのようにキリアリスは飄々と受け流す。

「まさか、お前は──がっ」

 問い詰めようと踏み出した足を黒い槍が地面に縫い付けた。後ろからは矢と、正面からは蒼の聖剣ティアレインが迫ってくる。

「個人的な恨みはないが、俺も叶えたいことがあるんでな。

 恨むならセイを恨んでくれ、じゃあな」

 まるで花でも摘むかの気軽さで首を撥ねる。

 ようやっと終わった作業にキリアリスは首を鳴らすと、ユグドラシルの方向へ意識を集中した。魔力反応が一つだけ。どうやらあちらも決着がついたようだが……さすがに距離があるため、それがセイのものかダイアスレフのものかまでは把握しきれない。

 とはいえ残り魔力は四割程ある、ダイアスレフが生きていたとしても速攻で片付ければ問題ないだろうと結論付ける。

「まぁ、行ってみればわかるか。

 それにしても……想像以上に手古摺ったな」

 余裕そうな表情とは裏腹に、ほぼ全力を『出させられた』キリアリスは不服そうに眉を顰めた。

 展開できる武装の種類は十三種類、そのうち同時に展開できるものはせいぜい四種類、無理をして五種類というところ。

 今回はそう言う意味で無理をさせられた。

「こんなことなら最初から全力で潰せばよかったかなぁ。

 あとは……前回の戦いもそうだが、ランスロットは早めに展開しておくべきだな」

 死体は完全に放置したまま。独り闇の中で反省しながらユグドラシルの方向へ歩いていく。

 感慨は無い、罪悪感もない。反省することはあっても殺人に後悔をすることは無い。

 錆びた空気が風に流れていく中、アルキリオ最強の剣士は闇へと独り消えていった。


――――――――――†――――――――――

Original perspective by Sei


「よう、無事で何より」

 ユグドラシルと待機所のちょうど中間あたりでキリアリスと鉢合わせた。

「────無事、と言うには満身創痍だ。

 魔力はカラだし、多分肋骨もひびが入ってる、すぐにでも休みたい」

 俺が状況を説明するとキリアリスははて、と首を傾げる。

「なんだ、敬語は終わりか」

「もう、必要なくなったから」

 俺が言うと、キリアリスは呆れたように嘆息した。

「んな顔するならやめときゃよかったんだ。

 どんな勝ち方をしたのかは知らんが余程堪える殺し方をしたんだろ。

 それなら最初から俺に任せておけば簡単に済んだのに。正面切って戦うなんて柄じゃないんじゃないのか」

 核心を突かれ、一瞬言葉を失う。

「少し前にも全く同じことを別の奴に言われたよ」

 反論する気力もなく、はは、と力なく笑って見せる。マクラウドにも俺には合ってないと言っていた。確かに、今なら自分に合っていないことだとよくわかる。

「それでも、自分には出来るかもしれないって思ってしまっていた。

 信用されて、信頼されていい気になってたんだ」

 ゆっくりと開いた掌を見る。乾きかけた血が染みついて、ひりひりと痛むような錯覚を覚える。笑ってしまう。血液で痛みを感じるなんて、聞いたこともない。

「セイ」

 キリアリスに呼ばれ、顔を上げると、彼は何時になく真剣な表情で。

「俺はお前の事を良く知らないし、目的もわからないけどな。

 それでも、今は俺の部下だ。

 死んでほしくはないし、出来るなら多少は信用してほしい。

 まぁ、完全に信用できていない俺が言うのもおかしな話だけど。

 あとはそうだな」

 余計なことかもしれないが、と付け加えたうえでキリアリスが続ける。

「もし、お前が殺していなくてもあとから合流した俺が殺していただろうから、その手は帰って綺麗に洗っておけよ」

 俺がずっと暗い顔をしているため遠回しに気を使ってくれているのだろう。

「いや、もう染みになっているから……せいぜい周りに見えないように隠しておく」

 俺がそうはにかみながら言うとキリアリスは諦めたように「そうか」と呟いて背を向けた。

「んじゃ、帰ろう」

「ええ」

 歩き出すキリアリスの後ろについていく。

 道の先からは、ゆっくりと日が昇り始めていた。


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