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Endless WAR  作者: 嵯峨時政(さが ときまさ)
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Phase1-7『一瞬の幻想』

Phase 1-7 22/6/20 投稿

「んー、幸い折れたり罅が入っていたりすることはないようだね。とりあえず今日は夕方まで安静にしたら帰っていいから」

「あ……ありがとうございます」

 見慣れない天井、初めて会った医者は俺に診断を言い渡すと愛想笑いすらせずにそそくさと部屋から去っていった。

 やれやれと思いながら肩を回してみる。派手に吹き飛ばされた割に大事には至っていないようだ。幸い、記憶にも異常はない。

 さて、これからどうしたものかと考えていると、外で待機していたのか入れ替わりでダイアスレフが入ってきた。

「……本当にすまなかった」

 これでもかというくらい深々と頭を下げながら謝罪をされぎょっとする。

「とんでもない、そんな、顔を上げてください。

 俺が相手を頼んだ側ですし、隊長に落ち度はありません。

 幸い、打撲だけで今日中に帰られるそうなので、明日には訓練に復帰できますし」

 慌てながら矢継ぎ早に説明する。だいぶ早く言った為きちんと敬語で喋れているか少し不安になった。

「そうか……大事がなくてよかった」

 本気で心配してくれていたのだろう、説明を聞くなりダイアスレフは安心したようにほっと胸を撫でおろした。

「なぁ、セイ」

 安心したような表情から一転、少し寂しそうな表情。

「なんですか、改まって」

「良ければ、ラウンドナイツに入隊した経緯を教えてくれないか」

 訊かれて、何が目的だろう。と、思わず勘繰ってしまった。この人の事だ、特に裏表もなく気になっただけだろう、常に疑っている自分が嫌になる。

「えっ……と、はい。

 なんとなく察しているかもしれませんが、ただの成り行きで入隊しました。

 自分は南の辺境からこちらに出てきたのですが、その途中の森でレダルキアの兵に襲われかけまして。

 今の部隊……ラウンドナイツのメンバー達に助けられて、特にこちらには身請けしてくれる人もいなかったため『戦うのであれば』と条件付きで部隊にかくまってくださいました」

 できるだけ丁寧な話し方と、矛盾のない内容を心掛ける。するとダイアスレフは俺の話を数秒だけ吟味し、

「なるほど。

 では、君は本意ではない戦いをしている、と」

少し心配そうな表情で尋ねてきた。

 どこまでお人好しなのだろうか。普通は俺みたいな人間はその部隊に相応しくない、というところだろうに、彼は俺が戦っていることに心配をしている。

「あぁ、いえ、出来れば戦いは無い方がいいですし戦いたくはないですが、不本意というわけではなくて。

 俺はちゃんと、自分の意志で戦場に立っています」

 そう言うと「ふむ」と、ダイアスレフはまた数秒考えこみ、

「なら、戦うという点において遠慮をする必要はないか。

 ……セイ、もし、今の部隊にこだわりがないのであれば俺の部隊に来ないか」

 そう、勧誘してきた。

「……え」

 思ってもみなかった、というとウソになるだろう。本来の目的として、彼に付け入って何かあったときに動きやすくなるようコネを増やしておきたいというものがあった。そういう意味では、俺はおおよその目的をこの時点で達成したことになる。

「ラウンドナイツではろくな訓練を行っていなかったのだろう、奉仕活動で忙しいとも聞くし、なによりキリアリスは人にものを教えられる人間ではない。

 君に戦う理由があるのであれば、私を師事し、強くなるのも選択肢の一つではないか」

「────」

 続けられる勧誘に言葉を失った、ダイアスレフの想いは俺の想像以上だった。確かにこの二週間一生懸命に頑張ってはいたが、それもうわべだけだ。

「ありがとうございます。

 お誘いは嬉しいのですが、仮にも助けてもらった部隊をフイにして都合がいい部隊に移籍したいというのは少々虫が良すぎますし、それに何より」

 胸に手を当て、ダイアスレフを見る。

「騎士は闘う場所を選ぶような卑怯な人間ではないでしょう」

 騎士道なんて自分にはないと思っていた。もう少し強くなれたら、俺も彼のような心がいくらかでも持てるようになるのだろうか。

「ふっ、そうだな。その通りだ」

 その解答に納得がいったのか、ダイアスレフは落胆しながらも満足げに笑った。

「そういえば、とりあえず数時間は様子を見るそうなので本日は申し訳ないのですが夕食をその辺で済ませて帰ります。

 先に休んでいてください」

「了解した、外で待機しているほかのメンバーにも伝えよう」

 言って踵を返すダイアスレフ。外にほかのメンバーも待っているのか、だいぶ長い間話し込んでいた気がするが……悪いことをしてしまった。

「隊長、明日からもよろしくお願いします」

「あぁ、任せておけ」

 俺の言葉を背に、ひらひらと手を振りながらダイアスレフは部屋を後にした。

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