Phase1-2『セイ=ディリブ・フロクレスⅠ』
Phase 1-2 22/5/16 投稿
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唐突ではあるが、そろそろセイ=ディリブ・フロクレスについての話をしたいと思う。おおよそ二ページ程度なので飛ばして頂いても問題はない。
ひと月ほど前、この国アルキリオの南部辺境より中央へ上京してきた、一般の少年がいた。
少年は道中隣国のレダルキアの兵に襲われたのだが辛くのところで近くへ旅行中だった第一親衛隊ラウンドナイツのゼイミ=キリアリスに保護、連行された。
道中、機密に触れてしまった少年はやむなくキリアリスの部下となり、ラウンドナイツの新兵となる。
少年は戦闘経験もなければ魔術も一般人より劣るものの、日々切磋琢磨し親衛隊のメンバーとして相応しくあるよう努力している。
以上が、この国での彼、『セイ=ディリブ・フロクレス』である。
なお、若干ぼかしてあるものの、おおよそ事実である。
彼に何か他に特殊能力や得意技能があるのかと言えば……一般人並みの魔力以外残念ながらそういうものもないことをここで公言しておきたい。
魔術も普通の師を持って兄弟子と四年半修行をした結果がこれなので急に何かの魔術に目覚めるということも特にない。
ただ、非常に運がいい、と彼は自分でも思っている。レダルキアという国の兵に襲われたのは事実であり、その時に偶然居合わせた……というのもおかしいが、キリアリスに変な目の付け方をされ、今に至る。
具体的に言うと、彼は今政務者の部屋へ相談とお願いをしに参じている真っ最中だ。
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「……で、半月後の隊員交換に参加させてもらいたい、と。
ついでに相手方の部隊まで指定とは、あまりにも不躾ではないか、セイ」
この国の実質的な最高責任者、クロード賢士が頭を抱える。当然と言えば当然だ、たったひと月ほど前に他国から来た怪しい人間が怪しい行動をとろうとしているのだから。
「不躾なのは重々承知してるけどこの国の不利益になることをしようとしているわけではなくて、遠征隊とのコネを作るいい機会なので参加させてもらいたいと」
そう言うとはあぁ、と深くため息をつかれた。
「そうじゃない、別にそれがいけないと言っているわけではない。
問題なのは権力者の私にそんな指示をしろと言っている君の考え方だ、セイ。
お前の立場は理解しているつもりだがそもそも君みたいな人間をラウンドナイツに入隊させた時点でだいぶ無理をして……」
「了解、ならキリアリスに相談させてもらう」
長い説教が始まりそうだな、と思い、話を切り上げ、踵を返す。俺も出来れば頼りたくはないが、ここは上司に相談するとしよう。
「……まて、わかった」
呼び止められ、にっと笑いながら振り返る。昔何かあっての話らしいが、クロード賢士はキリアリスの頼みをおおよそ断れない。俺がこうやって面会を簡単に出来るのもそのおかげである。
「隊員交換の部隊をラウンドナイツとショートエッジで組んでおく、キリアリスに選出してもらえるようしっかりと伝えておけ。
お前が選ばれなくても私はもうフォローしないからそのつもりでいるように」
若干怒気を含む声で、あぁ、と天を仰ぐクロード賢士。悪いことをしている自覚はあるが仕方ない、俺には、手段を選んでいる時間が全くないのだ。
「ありがとう、恩に切る」
「一つ貸しだ、覚えておけ小僧」
そう言って机に腰かけると大量の書類を睨みつけて業務に戻るクロード賢士。
「覚えておくよ、何かあればなんなりと」
そう言ってクロード賢士の政務室をあとにした。




