一話 スキル決定
こちらは完全不定期の新作です。
自分の息抜きに書いてみようかな?と、ふと買い物帰りに思い付いたもので(^_^;)
読者の皆様も、息抜きしてくださいな〜
この世界の住人は、成人を迎える十五歳になった年の3月1日、各地にある指定の会場にて、スキルを一つだけ与えられる。
スキルとは千差万別、似たものも中にはあるが、一人ずつ何かしら違う、完全なユニークスキルである。
当然中には当たりハズレがある。
いくつか例を上げてみよう。
自身を硬化させる能力なら、タンク系の戦士職を目指すにはもってこいだろう。
千里眼の能力があれば、盗賊や忍者、はたまた隠者などに最適ではないか?
他にも魔法系スキルなら、火魔法Ⅲのスキルを得た者なら、Ⅰ〜Ⅲまでの火魔法なら、魔力消費なしで使いたい放題だが、Ⅳ以上の魔法や、他の属性の魔法はどんなに努力しても一切使えない。
当然中には火風魔法Ⅱなど、複数属性を使えるスキルもある。
どうでも良い物で言えば、どの指でも擦ると指パッチンができるとか、投げたゴミは必ずゴミ箱に入る。足の臭いを好きな匂いに変えられるなどなど。
ただ、ハズレスキルというのは、何もどうでもいいスキルだけを指すものではない。
例えば戦士職を考えていた者が、暗算が出来るスキルを持つ。
逆に商人を目指していたのに、戦闘系特化のスキルになってしまう。
そんな悲しいことは日常茶飯事なこの世界。
そんな中でも、例えハズレを引いても、人々はみんな出来る事を頑張ろうと、強く強く生きている。
そう。十五歳という若さで、スキルというわけのわからない神託によって、自分の夢が崩れ去る経験をすることになってしまったとしても…
当然当たりの狙い通りになる者もいるし、スキルが決まってから、人生の歩み方を決める者もいる。
最初からスキルに頼らず、夢を見ずに現実だけを見据えて育つ者もいる。
まぁ…言ってしまえば宝くじみたいな物だ。
当たるも八卦。
当たらぬも八卦。
そんな理不尽な世界ではあるが、生まれたからには死ぬまで行き続けなければならない。
雑草魂だ。
話は変わるが、この世界にはモンスターが蔓延っている。
モンスターを生み出す魔王だっている。
様々な種族の人もいる。
当然、人がいればいざこざも起きる。
ましてや魔王がいるのだ。
ややこしい戦だって、望んでなくても勝手に起こる。
そんな世界に、見た目からしてザ!平凡!という言葉を、まるで体現したかのような少年が。
名前はアタル・ミチタカ。
スキルに恵まれなかった両親が、せめて息子には何か良いことがありますようにと、アタルと名付けてくれた。
割と気に入っている。
家柄もごく普通。
平民農家だ。
生まれてから普通に両親から愛情を注がれ、3歳の頃に妹が生まれ、際立った贅沢はしてこなかったが、とりわけ貧乏で困ったこともない。
普通に近所の友達と遊び、時には喧嘩をしたり、転んで怪我をしたり。
誕生日にはいつもより少し豪華な食事を食べさせてもらったり。
順調にすくすくと育ち、近所にある学舎にて友達を増やし、初等部の三年間を、これまた普通に過ごす。
そして試験はあれども、基本よっぽどのことがない限り、繰り上げで入る中等部に、これまた普通の成績で入った。
彼は今年、スキルの神託を受けるのだが、この時にはすでにこう悟りを拓いていた。
「どうせ今まで平凡で、何の取り柄もなく育ってきたんだ。スキルも当たり障りのない、ごく普通のものだ。平凡に生きることは、何も悪いことじゃない。そのうち親の仕事でも継いで、普通に誰かと結婚。そして子供を生み育て、相応の年になったら、ポックリいくんだ。」と。
そして神託の前日に、中等部の卒業式。
学友のみんなで集まり、普通に卒業式と成人式を兼ねた宴を楽しんでいた。
明日は神託によって、気持ちの浮き沈みが激しい。
だったら神託前に、みんなで思いっきり楽しんでしまえ!
大人達も皆同じ道を通って来ているため、むしろ今日くらいハメを外し切れ!というノリの者がほとんどだったりする。
人生で初めて酒を飲んで潰れる者。
愛の告白をして玉砕する者。
よくわからない自作ポエムを披露する者。
言ってしまえばカオスの一言に尽きるのだが…
実は大人達としては、黒歴史の生まれる瞬間を見たくて、ウズウズしているからこそ、暴走を許している点も多かったりする。
そして翌朝。
死屍累々といった体の者が殆どの中、さほどハメを外しきらなかったアタルは、二日酔いになることもなく、会場に集まっていた。
会場の中には、中二病まっしぐらな男が、
「俺は絶対に勇者になれるようなスキル決定だぜ!」
と、決めポーズを取っていたりする。
あぁ…うん。後で黒歴史にならないようにね…と、心の中で思いつつ、冷めた目で順番を待っていた。
「アッタル〜!ここにいたんだ!おいてくなんて酷いなぁ!一緒に行こうって言ったのにぃ!」
そう言いながらアタルに背後から抱きついて来たのは、幼馴染のクルルだ。
女子にしては高身長で、濃紺のセミロングヘアー。
顔は鼻筋が通った美系である。
性格も男女分け隔てなく優しく、活発なタイプだ。
言ってしまえばスタイルもよく、モテまくりのクラス一の美人だ。
そんなクルルに対し、アタルはいつもの調子で引き剥がしていた。
「いい加減離れろよ…たく…寝坊したお前が悪いんだろ?」
「待っててくれたっていいじゃんかー!」
「朝から夫婦喧嘩オツ!」
そう言いながら会話に入って来たのは、これまた幼馴染のハルトだった。
ハルトは高身長に細マッチョタイプ。
髪は短めで切り揃えている。
爽やかタイプのイケメンである。
アタルからすると、ハルトの引き立て役の感が否めないのだが、小さい頃からの幼馴染だし、何より馬が合うのだ。
つるんでいて楽だし、素の自分でいられる、貴重な友達だ。
だが、中等部の卒業までに、何度となくハルト宛の恋文を、代わりに渡してくれと言われたことか…
殺意が湧いたこともあるが、流石に30回を越えた辺りから、こればっかりは仕方ないことだと、割り切ったのは、確か12歳の頃か…
「夫婦喧嘩じゃねぇーっての。ただの腐れ縁だよ。」
「ひっどーい!こんな可愛い幼馴染に、何てこと言い草よ!」
「自分で可愛いとか言うなや…」
「何よー!?」
「はいはい。仲が良いのはわかったから、朝からお腹一杯御馳走様。胸焼け起こすぞまったく…」
「「何だ(よ)その言い草は!」」
「ほら!夫婦ですげぇ息ぴったりじゃねぇかよ」
ゲラゲラ笑うハルト。
そんないつものノリで話していたら、ハルトの番がやってきたようだ。
「おっ!俺の番か〜。ほんじゃあお先にな。」
足取り軽く、奥の部屋へと向かうハルト。
「おぉ〜いてら〜。変なスキルでも落ち込むなよ〜」
「ハルトまた後でね〜」
だらけた感じに見送る二人。
「ねぇアタル?どんなスキルが良いとかある?」
急に真面目な声で呟いかれた。
「ん〜?知ってんだろ?別に何でもいいよ。どうせ普通のスキルになんだろ。」
「アハハ…うん。前からずっとそう言ってたもんね…」
「どうした?急に元気なくなってさ?」
「うーん…ほら…うちの一番上の兄貴、ハズレスキル引いて、荒れたことあったじゃない?だから不安でさ…」
アタルはそれを聞いて思い出していた。
クルルは6人兄弟で、一番下の末っ子である。
歳の離れた兄は才能豊かで、将来を有望視されていたのだが、スキルがあまりにもなスキルだったため、落ち込んでえらく暴れた時期があったのだ。
幼い頃にその姿を見てしまっているのだ。
不安に思うのも仕方がない。
「…なるほどなぁ…ま、スキル何てもんは、好きに選べないんだ。気にしたって仕方ねぇよ?それに…今はあの兄貴だって、普通に頑張ってんだろ?」
何とか立ち直った兄はそこから努力し、今では大規模農園と牧場を経営している。
「まぁ…そうなんだけどね…うん。そうだね!」
いつもの笑顔に戻ったようで、ホッとしたアタルだった。
そのあとすぐに、アタルの順番がやってきた。
「ほんじゃまたあとでな。」
「良いの当たるといいね!」
「バーカ。普通でいいんだよ普通で。じゃあな。」
そう言って、奥の部屋にやってきたアタル。
神託の間。
その入口の前に、一人神官のおっさんが立っていた。
「アタル君だね?中に水晶があるから、それに触れて。それで終わるから。」
「わかりましたー」
神官も毎年のことなのと、人数がそこそこにいることもあり、割と適当な感じである。
むしろ面倒臭い話がなくて、ラッキーとすらアタルは思っていた。
中に入ると、部屋は蝋燭で灯されただけで、割と薄暗いと…というより、かなり暗い。
辛気臭い場所だな…さっさと済ませよっと。
そんなことを思いながら水晶に触れる。
次の瞬間、まったく別の明るい景色の世界へやってきていた。
「うおわぁっ!と、こ…ここどこ?何?」
そこは雲の上だった。
やけに明るく、空は明るいスカイブルーの世界。
周りを慌てて確認する。
「いらっしゃいませ〜」
突然背後から声をかけられ、慌てて後ろを振り向く。
「び…びっくりしたぁ…あんた誰?」
「私はスキルガチャを回す役を任された天使です。」
「は?」
「私はスキルガチャを回す役を任された天使です。」
「いや、2回わざわざ同じこと言わなくても…」
「そうですか?まぁ他にも人数多いので、さっさと済ませますね。」
何とも大雑把過ぎる自称天使。
まぁさっさと終わって、こんなところはおさらばしよう。
そう思って天使のやることを見ていた。
謎の箱に付いたハンドルを回すと、ガチャガチャ音がして、何やら玉が出てきた。
それを半分にカポッと割ると、中に紙が一枚。
それを読み上げる天使。
「発表しま〜す!え〜と…アタル…さん…ですね?あ!な!た!の…スキルはなんとぉ…ドゥルルルルルルルル…ドゥン!」
「いや、ドラムロール口で言うのかよ…」
アタルのツッコミは完全スルーの自称天使。
「ラッキースケベですね!」
「…はい?ラッキー…何て?」
「スケベです!ラッキースケ…きゃ!」
天使は転けて、アタルを押し倒す形になる。
天使の巨乳に顔を挟まれてしまった。
「「す…すすすすすみません!」」
お互い同時に謝りながら飛のく。
「えーと…今のがアタルさんの…スキルですね…」
顔を赤らめて言う天使。
開いた口が塞がらないアタルだった。
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