嘘つき人間
俺は嘘を覚えた。
人と話すために。
俺は嘘でしか他人と関われなかった。
共通のものが何もなかった。
俺には何もなかった。
でも嘘をつけば誰とでも関われる。
だから俺は嘘をついた。
何もない自分を隠してきた。
嘘がバレそうになればさらに嘘を考えた。
いつも言い訳を考えて生きてきた。
いつしかこの口は嘘しかつけなくなっていた。
ある日、俺の嘘で1人の人間が死んだ。
俺の目の前で飛び降りた。
彼女は泣いていた。
そんな時も俺は嘘をつくことしかできなかった。
そんな自分にずっと引け目を感じていた。
どんなに嘘をつこうがこの罪悪感が晴れることはない。
俺を形作るのは厚い嘘の皮と空虚な黒い液。
俺は呪われるべきで、俺が呪っていいのは俺だけだ。
俺は人を救いたかったんだ。