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第98話 偽造?

ちょっと筆が乗ったので本日2話更新します

 母であるレティアの故郷にやって来たキルスであったが、街に近づいていくと、突如シルヴァ―が攻撃を受けた。

 それに対して、防御をしたのち文句をいうと、なぜか逮捕されてしまった。


「身分証は?」


 キルスは現在取調室のような机と椅子が2客しかない簡素な小部屋に入れられて、キルスを捕らえた部隊長が自らキルスを取り調べていた。

 そこで、身分証の提示を求められたキルスは腹は立ちながらも、仕方なく懐からと装ってマジックストレージから冒険者カードを取り出して見せた。


「ほらよ」

「ほぉ、冒険者か……へぇ、Cランクとはすげぇじゃねぇか」


 キルスのランクがCランクであることを見た部隊長は感心したようにそういった。


「……って、んな訳あるかぁ」


 しかしすぐに、叫びながら机に手をバンとたたきつけた。


「うぉう」


 いきなりノリツッコミをしてきた部隊長に少しだけ驚いたキルスであったが、部隊長は自分が机を叩いたことで驚いたと勘違いをしていた。


「貴様、このような偽造カードで俺の目をごまかせると思っているのか、舐められたものだな、おい、ほら、本物を出せ」

「何を言っているのか知らねぇけど、俺はそれしか持ってねぇぞ」


 他にも市民証も持っているが、ここでわざわざ出す必要もなかった。


「なるほど、身分証は持っていないということか」

「いや、だから、それだって」


 部隊長はあくまでギルドカードが偽物だと思い込んでいた。


「ふざけるな。貴様、Cランクは、高ランクとまでは行かなくとも、その手前、貴様のようなガキが成れるわけがないだろう」


 この部隊長には、冒険者の友人がおり、その友人は必死の思いで、つい先日ようやくCランクになったと喜んでいたとのことで、より一層キルスのような冒険者になったばかりのような年齢の少年がなれるランクではないと決めつけていた。


「そういわれてもなぁ、実際にCランクだしなぁ」


 キルスにはそういうしかなかった。


「ふざけるなぁ」


 キルスの態度がまるでふざけているように見えた部隊長は、とんでもない行動に出た。


「こんなもの、こうしてやる」

「あっ」


 キルスが止める間もなく、部隊長は、あろうことか冒険者カードを破ってしまった。

 冒険者カードは、高度な魔道具ではあるが、その素材は紙で出来ているためにちょっと力を入れれば破れてしまう。

 しかし、だからといってこのカードを故意に破ったとなれば、これはその冒険者並びに、ギルドそのものを侮辱した行為となる。


「知らねぇぞ」


 コンコンコンッ


 その時、突如部屋の扉がノックされた。そのノックは優しげだったことから女性だろうか。

 そんなことを思いつつ、キルスが扉を見ていると、部隊長はニヤッといやらしい笑みを浮かべると、扉の方に向かい開けた。


「早かったな。シュレリー」

「失礼します」


 部屋に入ってきたのは、確かに女性で、とてつもない美女であった。


(世の中広いな、まさか、母さんや姉さんに匹敵する美女がいるんだなぁ)


 キルスはその女性を見てそう感じた。確かに、その女性シュレリーはまさにそれほどの美女であった。


「えっと、冒険者の偽物が出たと聞きましたが、まさか、その子ですか?」


 シュレリーはその服装からも冒険者ギルドの受付嬢をしている。

 そんなシュレリーの元に、警備兵がやってきて冒険者の偽物が出たと通報があった為に、その確認にシュレリーが派遣されてきた。


「ああ、そうだ、ほら、これを持っていた。見ろよこのガキCランクとかいうんだぜ」


 部隊長はあざ笑うようにシュレリーに先ほど真っ二つにしたキルスのカードを渡した。


「拝見します。って、どうして、破れているんですか?」


 シュレリーは持ち主であるキルスに尋ねた。


「ああ、そいつが、今しがた破りやがったんだ」


 キルスは現在かなり腹を立てているために少々荒っぽい口調となっていた。


「そうですかえっと……」

「どうだ。これは、問題だろ?」

「え、ええ、そうですね。確かに、これは大問題ですね。ちょっと、失礼しますね」


 そういってシュレリーは背後の扉を開けて、外にいた警備兵に用事を言いつけた。


「ちょっと、待っていてもらえますか」


 この時、シュレリーは明らかにキルスを見てそういった。


 それから、数分再び扉がノックされて、1人の男が入ってきた。

 年のころは30代半ばぐらいだろうか、そんながっしりとしたいかつい男であった。


「隊長!」


 隊長というのは警備隊長のことで、部隊長の上司であり、警備兵すべての総責任者のことだ。


「なんだ、シュレリー、俺は忙しいんだが」


 どうやら、シュレリーと警備隊長は親しい間柄の用だ。


「ちょっと、問題がおきましたので、来ていただきました」


 シュレリーは、あくまでギルド職員として対応した。


「わかった、わかった、それで、どうした」

「はい、こちらの部隊長さんのことです」


 ここで、シュレリーは事のあらましをおおよそ警備隊長に話した。


「なるほど、それで、そいつは?」

「ええ、もちろん本物ですよ。こちらは、Cランク冒険者のキルスさんで間違いありません」

「なっ」

「へぇ」

「バカな、おい、シュレリー、そいつをかばうつもりか」

「はぁ、部隊長さん、ギルドカードが本物か偽物か、それを瞬時に判断できる方法があります。それは私たちギルドの受付嬢なら当たり前に知っている技術です。今回それを使用して、このカードがまぎれもない本物であると判断できました」

「そんな、ばかな」

「おいおい、トーマス、お前、まさか、俺の従妹が嘘を言っているってのか、それは聞き捨てならねぇぞ」


 どうやら、この警備隊長とシュレリーは従兄妹の関係のようだった。


「くっ」


 その後、シュレリーと警備隊長の従兄妹コンビにより、キルスは解放され、シルヴァ―もまた解放されしばしの別れから、再会を果たしたのであった。

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