表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/237

第95話 職人

 編み物をしたいと言い出した玲奈のためにキルスはバイドルの街の近くに存在している竹林に向かい竹を数本切り倒した。

 それを持ち帰宅したキルスの目の前では、エミルとキレル、幸と玲奈で鋏を手に持ち、大量にあったバイラードシープの毛皮から、毛を刈り取る作業をしていた。

 その一方で庭ではアメリアが監視役となり、ロイタと四男のローク、五女ルニア、六男ファーレスの4人でそれぞれがたらいの中に入れた毛をエミル作成の石鹸で洗っていた。


「ただいま」

「あっ、キルス、お帰り」


 帰宅したキルスを玲奈が待ってましたと言わんばかりに自身の手を止て出迎えた。


「竹、どうだった?」

「おう、取って来たぞ、数本はあるから、結構な数は作れると思う」

「ほんとに、それじゃ、さっそく作ろうよ。あっ、でも、どうやって作ればいいんだ」


 玲奈はテンション高くさっそく編み棒を作ろうと言ったが、どうやったら作ることができるのかわからなかった。


「ああ、ドノバン小父さんに頼めば大丈夫だろ」

「そうね。ドノバンさんなら大丈夫でしょうね」


 キルスがドノバンという人物に頼むのが一番だと言えば、それにエミルが納得したようにうなずいた。


「ドノバンさん、誰?」


 しかし、玲奈はドノバンという人物が誰かは知らなかった。


「ドノバン小父さんは、鍛冶職人なんだけど、他にも色々作れるからな。家でも昔から色々作ってもらっているんだ」

「へぇ、そうなんだぁ」

「ちなみに、ドノバン小父さんは、ドワーフだ」

「えっ、ドワーフ、まじで、ていうか、この世界って、ドワーフいるの、ってことは、もしかして、エルフも?」


 ドワーフと聞いて玲奈はテンションがさらに上がった。

 一方で、なぜドワーフでそんなにテンションが上がるのかわからないのか、それ以外はきょとんとしていた。


「ああ、エルフもいるぞ。まぁ、俺もあったことはないけどな」

「お母さんは、昔あったことあるって話をしていたわね」

「ああ、そういえば言ってたなぁ」

「わぁ、すごっ、会ってみたいなぁ」


 エルフというのは、男女とも美形ぞろいだ、それはこの世界でも同様であり、また、彼らが森に住んでいるというのも同様だ。

 そのため、キルス達人族がエルフにであうことは滅多にない。

 一方、ドワーフという種族は人里で暮らしているものが多く、どんなに小さな街でも必ず1人は住んで居り、ほとんどが鍛冶屋を営んでいる。

 そんな話を簡単に玲奈に説明したキルスはさっそくそのドノバンの元に向かうために、玲奈とともに家を出ていった。



「そのドノバンってドワーフはどこにいるの、近く?」

「ああ、そこの角を曲がったところが職人街で、そこから少し行った先に店があるんだよ」


 それから、玲奈とキルスは2人して歩き、ドノバンの店に向かった。


 こうして、やって来たのはバイドル唯一の鍛冶屋である。

 店名はなく、金床とハンマーの絵が書かれた看板が書かれているだけでの店である。


「ここ?」

「そう、入るぞ」


 ということで、見せに入ったキルス達であった。


「いらっしゃい、あら、キルスじゃない」


 店に入ったキルス達を出迎えたのは、1人の小さな10歳ぐらいの少女であった。


「レニー、久しぶり、ドノバン小父さんいる?」

「奥にいるわよ、ちょっと待ってね」


 そういって、レニーは店の奥へと入っていった。


「今のは?」


 玲奈は先ほどのレニーが気になったようだ。


「今のは、レニー、ドノバン小父さんの娘だ。ちなみに、見た目はああだけど、歳は姉さんより上だからな」

「えっ、そうなの。あたし、ローク君ぐらいかと思った」

「ドワーフだからな。ドワーフの女性は、10歳ぐらいで成長が止まって、後は200年ぐらいはあのままらしいぞ。その逆に男性は、幼いころから髭もじゃだけどな」


 これがドワーフの特徴だ。ドワーフは平均250歳あたりまで生き、残りの50年までは全く変化がない、そのため見ただけではそのドワーフが一体何歳なのか、他種族では見分けが付かない。


「なにそれ、うらやまし、ああ、でも、10歳ってことは、だよね。それは、ちょっと嫌かな。でもなぁ」


 玲奈は、いつまでも若いというドワーフをうらやましいと思うと同時に、自身の胸を見下ろしながら、ここも成長しないのは、ちょっと嫌だと思っていた。


「ふふっ、確かに成長は止まるけど、それはあくまで身長とかだけよ。ここは、ちゃんと育つわ。まぁ、私は、あまり育ってないけどね」


 そういって、出てきたのは先ほどドノバンを呼びに行ったレニーである。


「ああ、ははっ、そうなんですね」

「そういうこと、あなたは大きくてうらやましいわぁ」


 レニーはそういって玲奈の胸元をうらやましそうに眺めた。


「おう、キル坊どうした。また、何か面白そうな話か?」

「面白いかどうかはわからないけど、作ってほしいものがあるんだ」

「おう、言ってみろ、お前には借りがあるからな」

「借り? そんな物があるの」


 ドノバンとキルスの会話を聞いて、借りという部分が玲奈は気になった。


「ああ、以前、小父さんに日本刀の製法をわかる範囲ではあるけど、話したんだよ。それで、剣とか包丁とか作ってるからな。家の包丁もその製法で作ってるから、よく切れるんだよ」

「おお、それよ。おかげで、いい仕事が出来るようになったぜ。それで、何を作ってほしいんだ」

「編み棒っていうものだよ」

「アミボウ、何だそれは?」


 それから、キルスと玲奈により、編み棒とはなにか、どんな物かを説明していった。

 また、他にもかぎ針など必要な道具も説明した。


「材料は、この竹を使ってくれ」


 そういって、キルスは竹林から取ってきた竹を数本取り出しドノバンに渡した。


「おう、任せろ、明日までには1セット作っておいてやるから、また明日来い」

「わかった」


 それから、キルスと玲奈はドノバンに任せ店を後にした。

 ちなみに、編み物の話を聞き、レニーも興味を持ったようであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ