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第92話 帰宅と衝撃

 ギルドで登録を済ませた玲奈と幸を連れて帰宅したのは、それから小一時間ほど経ってからだった。


 ファルコ食堂の前にてキルスは立ち止まり2人に忠告をした。


「何度も言うけど、覚悟しておけよ。といっても、無駄だと思うけどな」


 キルスはこれまでも幾度となく2人に忠告してきた。それは、当然レティアをはじめとしたそっくりでありながら若さを持つエミル、また同じくよく似たオルクの3人と、超強面のファルコであった。

 この4人については、いつも初めて出会う人たちは先の3人には見惚れ、ファルコは悲鳴を上げる。

 だからこその覚悟が必要で、それをキルスは2人に諭したのであった。


「ねぇ、そんなになの、ニーナさんも言っていたけれどさぁ」


 玲奈もそこまでいうほどの人間がこの世にいるのであろうかと思っているのであった。


「ああ、玲奈ならわかると思うけど、アイドルとか女優とか、そういったものとも次元が違うと思っていた方がいいぞ」

「そ、それほど……」


 玲奈がいた世界はキルスがいた日本とかなり酷似している。そのため、当然テレビがあるしそこには美しい容姿を持つ女性が女優やアイドルをしていた。

 その女性たちも十分に美しいがキルスはそれとは次元が違うと告げたのであった。


 玲奈もそれを聞き一層気合を入れて身構えることにした。


「それじゃ、はいるぞ」

「う、うん」

「は、はい」


 玲奈の緊張からよほどだと感じた幸もまた緊張して身構えた。

 そうして、食堂の戸を開けた。


「いらっしゃい、あら、おかえりキルス、その子たちが例の子たちね。こんにちは、私はキルスの姉で、エミルと言います。あら?」


 中に入るといつものようにエミルが給仕をしており、キルス達を迎えた。

 だが、そんなエミルを見た玲奈と幸はそれどころではなかった。


「何度も言ったんだけどなぁ。やっぱり、無意味だったか」


 キルスが何度も覚悟をしておけといったにもかかわらず2人は見事にエミルを見て惚けてしまった。


「まぁ、そのうちもどるだろ、それで、爺ちゃんと婆ちゃんは?」


 いつものことと、気にせずに放り祖父母が今どうしているのかを尋ねた。


「今は、お父さんをお説教中よ」


 若いころ家を飛び出して放蕩し、いつの間にか結婚して子供までいたことをこれまで黙っていたことに両親としても説教せずにはいられない。


「まぁ、それは仕方ないとして、キャシアとミレアは?」

「あの子たちはみんなを呼びに行ったわよ。せっかくおじいちゃんとおばあちゃんが来てくれたのだもの。みんなを紹介しないとね」


 そういってエミルは微笑んだ。


「……はっ、ちょ、ちょっと、ちょっと、キルス」


 とここで、玲奈が復活してキルスに日本語で詰め寄った。


「お、おお、落ち着けって、玲奈」

「落ち着けって、なに、お姉さん、キレイ過ぎるんですけど、なに、なんなの」


 玲奈は軽くパニックになっていた。


「なんだと言われても、母さんの子供だからとしか、いいようがないんだよな」


 エミルの美貌がなんだと言われると、キルスとしてもレティアの娘としか言いようがない。


「お母さん、ってちょっと待って、もしかしてお母さんも同じぐらいってこと」

「ああ、姉さんは、かあさんによく似てるからな」

「嘘でしょ。ありえないんですけど」


 玲奈はエミルだけでも、自分では全く敵わないほどの美人であるにも関わらずそれと同等の人物がまだいることに戦慄した。

 玲奈はその容姿とスタイルの良さから、一般的に見ればかなりの美少女として地元でも知られていた。

 その証拠に中学のころからグラビアはもちろん、女優、アイドルなどの事務所から幾度となくスカウトされていた。

 しかし、玲奈は目立つことを嫌っているためにそのすべてを断ってきた。

 だが、そんなことを何度も受けていたために自身の容姿に対して多少なりとも自信を持っていた。

 その自信もエミルを見たことで完全に敗北を喫したことで失ってしまった。


 一方、幸もまた玲奈と同様で、スタイルは玲奈に比べると多少スレンダーなところはあるが、整った顔立ちから街を歩けばよく声をかけられ、奉公先でも何人もが狙っていた。

 幸いというか、幸はまだ見た目が幼いために、手を出そうと考えるものはいなかったようだ。

 また、これは本人も思いもしないことだろうが、ある大名家が幸を側室としようと奉公先の店へひそかに交渉に来ていたという話があるほどだ。


「キルス、どうしたの」


 キルスと玲奈が知らない言葉を話し始めたことで取り残されたエミルが何を話しているのだろうとキルスに尋ねた。


「ああ、姉さんがありえないって話」


 キルスはかいつまんで今玲奈と話していた内容を話した。


「ふふっ、あなたたちも十分可愛いと思わよ」


 事実ではあるが、エミルに言われてもあまり嬉しくない玲奈と幸であった。


「あ、あの、キルスさんのお兄様も……」


 幸は戦慄した。キルスは姉だけではなく兄もまた同じような容姿を持っていると聞いていた。

 それはつまり、キルスの兄オルクもまたありえない美貌を持っているということだろうか、同性でこれならば、異性となると果たしてどうなるんだろうかと。


「はっ、そうだ。そういえば、キルス、もしかして、お兄さんも」

「ああ、まぁ、そういうこと、兄さんも姉さんと一緒で母さんによく似てるからなぁ。ああ、でも、婚約者がいるからな」

「う、うん」


 それを聞いて玲奈と幸はさらに緊張した。

 それから、数分後出来た料理を持ってきたオルクを見て玲奈と幸の2人が見事に石化したのは言うまでもないだろう。

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