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第83話 南の状況

「最後は末っ子のサーラン、サーランはまだ生まれてから8ヵ月の赤ん坊なんだけど……」


 キルスは祖父母であるフェブロとアメリアに兄弟の紹介を続けていた。

 そうして、ついに末っ子のサーランの話をしようとしたところで、声がした。


「おばあちゃん」

「どこー」

「あらあら、起きたみたいね。はいはい、おばあちゃんはここですよー」


 昼寝から起きたキャシアとミレアが見慣れない場所で目を覚まして、少し不安になったのか、祖母であるアメリアを呼んだ。


(ここは、俺じゃないんだな)


 キルスは自身が呼ばれないことに少しショックを受けていた。

 それから、アメリアが部屋を出て2人を迎えに行くと、2人はすでに自分たちが寝ていた部屋を出て廊下に出ていた為にすぐにアメリアを発見して抱きついた。


「「おばあちゃん」」

「あらあら、うふふふっ、さぁ、リビングに行きましょう」

「「うん」」


 キャシアとミレアの2人はアメリアと手を繋ぎながら嬉しそうにリビングに戻ってきた。


「あっ、キルにーちゃ、なんのおはなししてるの」

「ミレアもおはなしするー」

「んっ、家族の話しをな。今はこれからサーランの話をするところだ」

「さーちゃん、えっとね、サーちゃんは赤ちゃんでね。すごく可愛いの」

「生まれたばかりなんだよ」


 サーランの話しと聞いてキャシアとミレアはアメリとフェブロにそういった。


「そう、それは、可愛いでしょうね」

「うん」

「なるほど、生まれたばかりか、ふむ、それで、手紙が手形というわけか」

「そうだよー」

「ペタペタするの」

「そうか、そうか」


 キャシアとミレアの説明にフェブロとアメリアは目を細めながら何度もうなずいていた。


「あっ、お手紙!」

「キルにーちゃ、だして、だして」


 手紙と聞いて2人はあることを思い出した。


「ああ、これだな」


 キルスはわかっているとばかりにマジックストレージから2通の手紙を取り出し2人に渡した。


「うん、これ」

「はい、これ、お手紙」

「あら、もしかして、2人もお手紙書いてくれたの」

「「うん」」

「おー、そうか、そうか」


 フェブロとアメリアはもはや緩む顔を隠せずに手紙を受け取り、それを読んでさらに緩めていた。

 もし、軍人時代の部下たちが今のフェブロを見て、同一人物だと認識するのは難しいだろう。


 その後、キャシアとミレアはアメリアと話をしたり遊び始めたことで、キルスとフェブロはお互いの話をすることとなった。


「……ほぉ、すでにCランクか、その速さでとは、さすがというべきか」


 フェブロは孫であるキルスがすでにCランクであることに嬉しそうにそういった。


「まぁ、小さいころからの夢だったし、母さんに鍛えられたから」

「だろうな。しかし、Cランクということは、今は様々な街に赴いておるのか」

「Cランクになったのはこの間だからね、あちこち行くのはこれからだよ。実際この街でも何か依頼を受けようと思っているし」

「そうか、ならば忠告しておくが、ここより南、特にクワンエイト辺境伯の領地にはしばらく行かぬ方がよいぞ」


 フェブロは真剣な面持ちでキルスにそういった。


「それって、ガバエント王国とのこと」

「!! 知っておるのか」


 ガバエント王国とキリエルン王国は現在戦争が勃発しそうであった。

 だが、両国はかつてより友好国であり、王家では何代かにわたって婚姻が結ばれていた。

 そんな国とのいざこざの為、国も上層部にしかこの話をしていなかった。

 その話をなぜ、一介の冒険者たるキルスがなぜ知っているのか、フェブロは不思議であった。

 しかし、それを言うならフェブロも元軍人とは言えフェブロが知っている方もおかしいのだが……。


「うん、まぁ、この間、ギルドから聞かされたんだ」

「ギルドから、なぜだ」


 ますます首を傾げるフェブロであった。


「そのいざこざのきっかけを作った奴と登録試験で一緒だったからね。その時の様子とかを聞かれたから、その際に教えられたんだ」

「きっかけを作った奴だと、それはつまりそいつは冒険者だったってことか」


 さすがのフェブロもきっかけまでも知らなかったようだ。

 というわけで、キルスはフェブロにギルドから聞かされたサディアスのことを話した。


「……ふむ、貴族冒険者か、なんと愚かな」


 フェブロもあまりのことに絶句してあきれていた。


「しかし、そうなると辺境伯を止めるのはかなり難しいな」

「今はどういう状態なんだ」


 悩むフェブロにキルスは最新の情報を聞けるかもと尋ねた。


「今現在は、両王家からの命令によりにらみ合いだな。だが、まさに一触即発、お互いに国境付近まで出兵している」


 フェブロによるとまさに今すぐにでもぶつかってもおかしくない状況だそうだ。

 キルスはこの時ぶつかるのは避けられないだろうと確信していた。

 その理由は、やはりカテリアーナの占いにより、南とも戦争状態に入ると言われていたからだ。

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