第79話 祖父母(ファルコ方)に会おう
翌日、キルスは上にのしかかる重みで目を覚ました。
「あさ、あさだよー」
「キルにーちゃ、おきてー」
「んー、お、おう」
キルスも朝が苦手というわけではない、そもそも今は夜営の真っ最中、すぐに目を覚ました。
それから、身支度をしてテントを片付けてから朝食の準備をした。
その間キャシアとミレアはシルヴァ―と遊んでいる。
「2人とも、朝飯だぞ」
「「はーい」」
「バウン」
それから、キルスはファルコ特製の朝食を取り出し2人とシルヴァ―に出し、自身も食べた。
そうして、出発の準備を整えてからキルス達は再びシルヴァ―にまたがり南に向かい空を駆ける。
数時間後、昼前にはファルコの故郷である王国南側に位置するコレニレット伯爵領領都、コロッセロンにたどり着いた。
「シルヴァ―、あのあたりに降りてくれ」
「アウン」
キルスの指示の元、シルヴァ―はコロッセロンから少し離れた荒野に降り立った。
「さぁ、2人とも、降りるぞ」
「「うん」」
キルス達がシルヴァ―から降りると、シルヴァ―はさらに縮小化スキルを発動していつものサイズになった。
それを確認したキルスは再びキャシアとミレアをシルヴァ―の背に乗せて歩き出す。
「あっ、みえてきた」
「みえてきたー」
「だな」
少し歩いていると、キルス達の目の前にコロッセロンの防壁と門が見えてきた。
「結構並んでるな」
「そうだねー」
「いっぱい」
「うぉっ」
キルス達が並ぶと、前にいた行商人の男がそんな声を出して驚いた。
「ああ、悪いな、こいつは俺の従魔だ」
「従魔? ああ、従魔か、ああ、びっくりしたぜ」
「大丈夫なのか?」
「ああ、問題ない、だから、妹たちも乗ってるだろ」
「確かに、言われてみれば、あんな小さな女の子が乗ってるならなぁ」
「お、おう、そうだな」
シルヴァ―だけなら、こうも上手く行かないだろう、その背に小さいキャシアとミレアが安心して乗っているからこそ、行商人たちも多少安心できた。
「次、身分証を、それと、従魔証はあるか」
キルス達の番がやってきて、キルスは冒険者ギルドカードとキャシアとミレアの市民証、シルヴァ―の従魔証を提示した。
「ああ、これだろ」
「確かに、確認はしたが、街中で従魔を暴れさせるなよ」
「ああ、わかってるって」
「シル、いいこだよ」
「シル、わるいことしないよ」
「お、おう、わかった」
警備兵が疑いのまなざしでシルヴァ―を見ていたことで、キャシアとミレアが少し怒り気味でそういったことで、警備兵も引き下がった。
それを見ていた、周囲の者たちも思わず笑みをこぼすのであった。
それから、警備兵の許可がでて、キルス達は街の中に入っていったのである。
街中を歩くキルス達、しかし、それは注目の的だった。
それはそうだろう、キルスはともかく、体長3mはある魔狼とその背に乗ったキャシアとミレアの双子、これが目立つなという方が無理であろう。
それでも、キルス達は気にすることもなく歩き続ける。
「おじいちゃんとおばあちゃん、どこにいるの」
ここで、キャシアがキルスに尋ねた。
「そうだな。父さんによるとカンラ地区だったはずだから、とりあえず聞いてみるか」
というわけで、キルスは大通りにある屋台の1つに足を向けた。
「らっしゃ、うぉう」
客を歓迎しようとした店主がシルヴァ―を見て目を丸くした。
「果実水を3つと、あとはこれに入れてくれ」
そういってキルスは鞄から出すふりをして、シルヴァ―の水用皿を出した。
「お、おう、3つとそれにだな。どのくらい入れるんだ」
商売となるとシルヴァ―に驚いてばかりはいられないようだ。
「そうだな、半分ぐらいでいいか」
「バウン」
キルスがそういうとシルヴァ―もそれでいいと返事をした。
「半分だな。ほらよ。全部で銅貨5枚だ」
果実水1杯銅貨1枚、良心的な値段だ。それが3杯分とシルヴァ―に2杯分というわけで銅貨5枚となる。
というわけで、キルスはマジックストレージから銅貨を5枚出して店主に渡した。
「あと、道を聞きたいんだが、カンラ地区ってどっちだ」
「毎度、カンラ地区か、それならあっちだぜ」
それからキルス達は果実水を楽しんだ後、店主に言われた通り道を進みカンラ地区に向かった。
カンラ地区はコロッセロンの東側に位置する地区で、主に兵士や騎士といった職業についているものが住む地区となる。
「あとは、ドラップ通りだけど、えっと、ああ、あそこか」
あたりを見渡すと、ドラップ通りと書かれた看板を発見した。
そんなわけで、そこに向かうキルス達であったが、当然ここでも住人たちがシルヴァ―の姿にびくっとしていた。
しかし、ここは兵士や騎士たちが住む地域というだけあって、そこまで恐れることはなかった。
「もうすぐ」
「つくのー」
「ああ、あと少しだ」
そういって、歩き出すキルス達はついに祖父母の家を見つけることができた。
「ここだな」
キルスは1回い深呼吸をしてから、扉をノックした。
「はーい、どちら様」
そういって出てきたのは、1人60代中盤の婦人であった。




