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第78話 会いに行こう

「それじゃ、行ってくるよ」

「いってらっしゃい、父さんと母さんによろしく」

「ああ、わかった」

「いい、2人ともお兄ちゃんのいうことをちゃんと聞くのよ」

「うん」

「だいじょぶ」

「心配だなぁ」

「まぁ、シルヴァ―もいるし大丈夫だとは思うけどね」


 キルスがファルコから見送られている一方で、エミルがキャシアとミレアに釘をさし、2人が返事をする。それを横目にオルクが心配し、レティアがシルヴァ―も一緒だから大丈夫と太鼓判を押した。


「キルス、2人を頼むよ」

「ああ、わかってる。といっても、道中は基本シルヴァ―の背中だからなぁ。問題ないでしょ」


 キルスが言ったように、実はキャシアとミレアの2人はキルスと一緒に出かけることになっている。

 普通ならこれはありえないことだ。なにせキャシアとミレアは双子で同じ6歳、その年で親元を離れ街の外に出る。自殺行為以外の何物でもないだろう。

 だが、今回の旅にはキルスというエンシェントドラゴンを討伐出来る冒険者である兄と、その従魔でフェンリルという魔狼王が一緒にいるためにファルコとレティアも許可したのである。


「じゃぁ、行ってくる。ほら、キャシア、ミレア、行くぞ」

「うん、みんな、ばいばい」

「いってきまーす」

「いってらっしゃい、気を付けてね」


 こうして、シルヴァ―の背に乗ったキャシアとミレア、それを伴ったキルスはバイドルの街を出ていった。



 街を出たシルヴァ―とキルスは少しの間街道を南に進み、街道から外れた。


「ねぇ、キルにいちゃ、シル、どこにいくの」


 街道から外れたことで少し不安になったキャシアが振り向きつつキルスに尋ねた。


「この先に開けた場所があるからな、そこで大きくなってから、空を飛ぶんだ」

「おおきく?」

「ああ、そうしないと俺が乗れないからな」

「そっかー」


 それから、しばらくすると森を抜け草原に出た。


「ここらならいいだろう、キャシア、ミレア、一旦シルヴァ―から降りてくれ」

「うん」

「わかったー」


 キルスのいうことをしっかりと聞いて2人はシルヴァ―から降りた。

 そうはいっても、現在のシルヴァ―でも2人は1人では降りられないのでキルスの補助が必要になる。


「よしっと、シルヴァ―頼む」

「バウン」


 シルヴァ―は1吠えした後、縮小化のスキルを解いた。


「わわっ」

「おっきー」


 シルヴァ―の本来の大きさにキャシアとミレアは驚愕しているが、恐れてはいないようだ。

 キルスは2人の反応を見てほっと胸を撫でおろした。


(さすが俺の妹たちだな。この姿のシルヴァ―を見てもちっとも恐れないなんてな。普通ならビビるだろ)


 そんな若干なシスコン発言をしつつ、キルスはシルヴァ―の次の行動を見守る。

 といっても、再び縮小化スキルを使い、本来の半分ぐらいのサイズへと変更した。

 半分にした理由は、まず本来のサイズだと大きすぎるが、小さいと移動に時間がかかるためだ。


「まぁ、そのぐらいでいいんじゃないか、ほら、キャシア、ミレア、兄ちゃんに捕まれ」

「「うん」」


 2人は双子らしく同時に返事をしてキルスに捕まった。

 そんな2人を微笑みながら抱え込み、キルスはジャンプ。

 身体強化を使ったこともあり、キルスはあっという間にシルヴァ―の背に着地した。


「わぁ、たかーいっ」

「たかいね、キルにーちゃ」

「そうだな。落ちないようにな」


 シルヴァ―の上ではしゃぐキャシアとミレアの体を抑えながら、キルスはそういった。


 こうして、キルス達の旅は安全な空の旅となり、あっという間に夜が近くなった。


「シルヴァ―、あそこらへんに降りてくれ、今日はここまでにしよう」

「アウン」


 キルスはシルヴァ―に降りるように指示した。


 それから、シルヴァ―を降りたキルスはキャシアとミレアの相手をシルヴァ―に頼み、テントを立てマジックストレージからファルコ特製の夕食を取り出して、2人を呼んだ。


「キャシア、ミレア、そろそろ飯にするぞ」

「うん」

「あっ、まってー」


 そういって走ってきた2人にキルスは取り出したハンバーグを渡した。

 キルスが提案して以来2人の好物である。


「わぁ、はんばーぐ」

「おいしそー」

「慌てないでよく噛んで食うんだぞ」

「「はーい」」


 それから、キルスはシルヴァ―にお疲れ様と言いつつ食事を渡して自身も食事を開始して、今日は早々にテントに入ることにした。


 本来なら、ここで見張りが必要になるが、ここにはフェンリルたるシルヴァ―が居り、魔狼や狼は当然だが、魔物も近づかない為に安全であった。


「ほら、早く寝ないと、明日起きられないぞ」

「もっと、あそぶー」

「やだー」


 小さな子供だけあって、2人興奮して眠れないようだ。


「たくっ、早く寝れば、それだけ早く爺ちゃんたちに会えるぞ」

「ほんと」

「ああ、だから早く寝ろ」

「うん、ねる」

「キルにーちゃ、おはなしして」

「話し、そうだな。……昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。……」


 キルスは日本に伝わる昔話を始めた。

 最初は桃太郎とかぐや姫どちらをと思ったが、キャシアとミレアは女の子であることからかぐや姫を選び話し始めた。


 初めて聞く話しに2人はワクワクして聞いていたが、いずれ眠くなったのか話しの途中で眠ってしまった。

 それを確認したキルスは、改めて周囲を警戒しつつ自身もその隣で眠りについたのだった。

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