第77話 祖父母の所在
Cランクにようやく上がれたと思っていたら、突如聞かされたサディアスの顛末。
キルス達は全員あまりのことにあきれ、絶句していた。
「……殿下が、言っていたのはこのことか」
キルスは話を聞き、バイエルンで第二王女たるカテリアーナから聞かされた占いの話を思い出していた。
「まぁ、そういうわけで、お前らを呼んだのは、サディアスがどういう人物だったのかを聞きたいからだ」
ブレンは最後にそういった。
「聞きたいって、俺は試験を担当しただけですからねぇ、そこまで、話せませんよ」
「私もですよ」
真っ先に復活したのはゲイルクとレティエルーナであった。
「それについては、俺たちだって同じだ」
ここで、キルスがそういい、他の面々もうなずいた。
「いや、まぁ、それはわかるんだが、この街で、サディアスと関わっていたのは、お前らだけなんだよ。わかる範囲でいいから話してくれ」
「まぁ、それでいいなら」
そういってから、それぞれがサディアスの話をしたが、せいぜいが試験での行動やソルケイ川掃除でサボっていたこと、平民であるキルス達への態度ぐらいなものであった。
「……そんなところか」
「そうだね。ていうか、それ以上知らないし」
「そもそも、俺、奴がこの街出たの知らなかったし」
「いや、ていうか、ついさっきまで存在自体忘れていただろ」
「それは、お前もだろ」
キルス達はそれぞれ意見を言った。
「そうか、まぁ、参考になった。悪いな。もういいぞ」
それから、ギルマスたちは部屋を出たためにキルス達も会議室を出た。
(それにしても、馬鹿だと思っていたけど、思った以上に酷い奴だったな)
キルスはふとそんな風に思った。
その後、ビルとシャイナはパーティー仲間を待たせているということで別れ、ガイネルも同様に仲間のところへ向かって行った。
キルスも、ニーナのところに向かい、Cランクとなったギルドカードを受け取り、仕事に向かったのであった。
そうして数日が経ったある日のことである。
キルスは、今日も仕事をこなし家路についていた。
ちなみに、バイドル付近ではキルスが受けられるようなCランクの依頼はほとんどない、そこで、別の街で出た依頼をこなすわけだが、キルスの場合シルヴァ―がいるために、その距離が全く問題なかった。
「いやぁ、さすがシルヴァ―だよな。シルヴァ―のおかげで、バイドルに居られるよ」
普通なら、拠点を移すところである。
「バウン」
シルヴァ―は任せてよ。と言わんばかりに吠えた。
「はははっ、そうだな。頼りにしているぞ」
キルスも、そういってシルヴァ―を撫でた。
そうして、キルスはいつものようにニーナに依頼達成の報告をしてから帰宅した。
「ただいま、?」
帰宅した瞬間何やら店の中の雰囲気が違う。
客はいないようだが、レティアとファルコが気まずそうにしており、エミル、オルク、ラナ、ロイタ、キレルが苦笑いをしている。
そして、三女のキャシアと四女のミレアの2人が首を傾げていた。
「何かあったのか」
キルスはよくわからず、近くにいたロイタに話を聞いた。
「うん、キャシアとミレアがね……」
ロイタの説明によると、キャシアとミレアは遊びに行っており、帰ってくるなり、ふと疑問として、レティアとファルコにあることを尋ねた。
それは、『どうして、うちにはおじいちゃんとおばあちゃんがいないの』である。
これには、ファルコとレティアも戸惑った。
どういうことかというと、この世界の人間、主に人族の平均寿命はだいたい80から90と結構長寿となる。
その理由は、魔力が存在し魔物などが闊歩している世界であるために、体の作り自体が地球よりも強化されており、たいていの病気に対しての耐性が強いためである。
そして、この国においての結婚適齢期は20ぐらいとされ、多くの人が20には結婚していた。
それから、子供が生まれるわけだから、親と子供の年も大体それぐらい離れることになる。そこから、計算すると、長女のエミルが現在19歳、レティアとファルコも21と23での結婚であったために現在40代になったばかりとなる。
そうなると、その親、つまりキルス達の祖父母は、60代であることが分かる。
「たしかに、爺ちゃんとばあちゃんって、普通なら生きてるだろうしな」
にもかかわらずここにはいないし、何よりどこかにいるということも聞いたこともない。
実はキルス達も以前同じ質問をしたことがあった。
(たしか、あの時も、父さんと母さん同じ反応だったよな)
そう思うも、成長した今なら、2人の反応についても想像出来た。
(多分だけど、2人とも飛び出して来たってところだろうな)
家を飛び出す、これはこの世界ではよくあることである。実際、キルスの幼いころからの友人も数人家を飛び出していた。
それを、子供には言い辛いといったところであろう。
その日の夜、エミルをはじめとした、キルスまでの3人とレティアとファルコは話し合っていた。
「ねぇ、お母さん、お父さん、夕方のことだけど、2人とも飛び出してきたんだよね」
エミルはストレートに尋ねた。
「うっ」
「えっ、ええ、そうね」
ファルコはうなり、レティアは何とか認めたようだ。
「やっぱり、そうか。それで、爺ちゃんたちって、まだ生きてはいるんだよね」
「わからないけど、多分ね。そんな年じゃないし」
「そうだね。きっと、生きているとは思うけど」
2人の様子を見る限り、キルス達の祖父母は健在の用であった。
「だったらさ、以前はともかく、今はキルスもそれにシルヴァ―だっているし、一度帰ってみたら」
これについてはキルスも同意であった。




