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第75話 昇格と……

 家族全員でシルヴァ―を綺麗に洗ったことで、多少くすんでいた毛並みは真っ白でありながらもキラキラと光り、とても美しくごわつきもなくなった。


「はぁ、これこれ、思っていたよりもモフモフねぇ」


 すっかりきれいになったシルヴァ―の毛に埋もれながら嬉しそうにモフるエミルがいる。


「ほんと、すっごいモフモフ~」


 その隣ではキレルが同じように埋もれていた。


「モフモフ~」

「やわらかーい」

「きれー」


 そんな姉たちを見た幼い弟妹達も同じように埋もれていた。


「はははっ、確かに、モフモフになったなぁ、シルヴァ―」


 姉弟だちの様子を見たキルスはさすがに埋もれることはしなかったが、シルヴァ―を撫でながら感慨深げにそういった。


「あら、楽しそうね」


 子供たちの様子を見に来たレティアとファルコがシルヴァ―の毛に埋もれ幸せそうにしている様子を見て微笑んでいた。


「あっ、お母さん、お母さんもどう、モフモフしているわよ」

「そう、それじゃ、混ぜてもらおうかな。ファルコも一緒にどう」

「そうだね。混ぜてもらおうかな」


 それからしばらくみんなでシルヴァ―をモフり続けることになった。



 そんな休日の翌日、キルスは何か仕事をしようとギルドにやってきていた。


「あっ、キー君、こっちよ」


 キルスを見つけたニーナは手招きしてキルスを呼んだ。


「なに、ニーナ姉さん」


 掲示板に向かおうとしていたところで呼ばれ、何か用でもあるのかとニーナのところに向かって行った。


「おめでとう、キー君、今日からキー君はCランクよ」


 キルスが到着するなりニーナは笑顔でキルスにそう告げた。


「えっ、Cランク?」

「そうよ、この間、バイエルンのギルマスからキー君のCランク昇格の推薦状が届いたから、昇格の準備をしていたのよ」


 そもそもキルスがバイエルンに向かった理由の1つがCランク昇格の為に必要な推薦をもらうためであった。


「なるほどね」

「というわけで、ギルドカードを出してくれる」

「わかった」


 キルスはギルドカードを出してニーナ渡した。


「それじゃ、手続きをしておくから、ちょっとその間に2階の会議室に行ってくれる。昇格とは別口で、キー君に聞きたいことがあるの」

「聞きたいこと。俺に」

「うん、まぁ、キー君だけじゃなくて、他にもいるけどね。それは、会議室で話があると思うから」

「よくわからないけど、わかったよ」


 そういうわけで、キルスはギルドカードをニーナに預けたまま2階の会議室へと向かって行った。



 2階に上がってきたキルスは一応扉をノックしてから中に入った。


「あれ? ひさしぶり」

「おう、キルス、お前も呼ばれたのか」

「久しぶりー」

「よぉ、キルス」


 キルスが会議す津に入ると、そこにはキルスと冒険者登録試験を一緒に受けたビルとシャイナ、ガイネルの3人がいた。


「他って、お前らか。それで、なんで俺たちここに呼ばれたんだ」

「さぁ、俺たちもさっき来たところだからな、まだ何も聞いてねぇよ」

「でも、私たちが呼ばれるってことは登録試験に関係していることだよね」

「だろうな」


 久しぶりにあった同期との会話を楽しんでいると、ノックの音が響いた。


「おう、集まっているようだな」


 そういって、中に入ってきたのは、キルス達の試験を担当したゲイルクと初仕事を担当したレティエルーナ、その後ろにはギルマスであるブレンであった。


「お前たちに集まってもらったのは、サディアスについてだ」

「サディアス?」

「誰だっけ?」

「えっと、聞き覚えがあるな」


 ビル、キルス、ガイネルの3人はサディアスと聞きとんと覚えがなかった。


「あんたらね。ほら、私たちと一緒にもう1人いたでしょ。貴族の」

「貴族? ああ、あいつか」

「思い出した。あの貴族ね」

「忘れてたぜ」


 シャイナに言われてようやく思い出した3人であった。


「それで、そのサディアスがどうしたんだ。そういえばここにいないみたいだけど」

「ああ、そのことでな。まずは、そうだな、奴について話そう」


 それから、ブレンが語ったことにキルス達はあまりのことに絶句するしかなかった。

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