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第71話 帰路

 シルヴァ―との再会から1週間が経った。


 その間、キルスはいつものようにタニヤから受けた仕事をこなしていった。

 その際は、もちろん相棒たるシルヴァ―も同行していた為に、移動距離はもちろん討伐などは、逆に相手が可哀想になりそうな状態となっていた。

 また、キレルがシルヴァ―を気に入り毎日のようにシルヴァ―と遊びたいとキルスに懇願しいていた。

 と、そんな1週間が過ぎ、ついにオルクの料理修行が終わりを告げたのであった。


「それじゃ、また」

「ええ、ニーナによろしくね」

「オルク、料理の方は、ファルコの野郎もいるし、お前はすでに一人前だ。俺が言うことはねぇ。だが、ラナを泣かすような真似しやがったら、ただじゃおかねぇからな」

「はい、師匠、わかっています」

「ラナ、お手紙、待っているからね」

「うん、お母さん、必ず出すからね。といっても、キルス君のおかげで、すぐだけど」

「フフフッ、そうね」


 本来なら手紙を出すためにはバイドルからバイエルンに向かう数少ない商人か冒険者に頼むしかないために滅多に出せない。しかし、キルスのマジックバックの能力を使えば一瞬にして手紙のやり取りができてしまうのである。

 ちなみに、ラナが別れを惜しんでいるのはラナもまたバイドルに行くためだ。

 というのも、ラナとオルクはまだ結婚はしていないが婚約している。もし同じ街に住んでいるなら結婚するまではそれぞれの実家で過ごすこともあるが、2人はバイエルンとバイドルという別の街に住んでいる。

 そうなると、会うことすらままならなくなってしまう、そこでオルクの修行終了を期にラナも一緒にバイドルに行くことになったのだった。


「それじゃ、行こうか」

「そうだね。行こうラナさん」

「うん」


 こうして、キルス達はバイドルを目指しバイエルンを旅立った。



 キルス達は街を出て、まず近くの草原へと向かった。


「えっと、ここにいるの」


 ラナは今日初めてシルヴァ―と会う為に緊張していた。


「そうだよ」


 なぜかキレルが応えた。


「まぁ、魔狼といっても、犬みたいな物だよ。俺たちにも懐いているし」

「そうだね。確かに、犬みたいで可愛いよね」

「うん」


 不安を露わにしているラナにキルス、オルク、キレルが大丈夫だと告げた。


「はははっ、まぁ、会ってみればわかるさ。シルヴァ―」

「アオーン」


 キルスが呼ぶと遠くの方からシルヴァ―の鳴き声が響き、あっという間にキルス達の前にやって来た。


「クゥーン、クゥーン」


 やってきて早々、キルスに頭をこすりつけた。


「シルヴァ―、元気だった」

「バウン」

「よかった」

「……」

「ラナさん」


 シルヴァ―との再会を喜ぶキレルとは裏腹にラナはシルヴァ―の大きさに絶句してしまっていた為に、オルクが心配して尋ねた。


「……オルクさん、本当に大丈夫なの、こ、こんな、大きな」


 ラナが驚いているのは仕方ないことだろう、なにせ現在シルヴァ―の大きさは縮小化スキルを使っているとはいえ3mはくだらない大きさを持つからだ。


「大丈夫だよ。そうでしょキルス」

「ああ、さっきも言ったけど大きいだけで、犬と対して変わらないからな」


 それから、キレルとオルクに導かれつつラナは恐る恐る何とかシルヴァ―に手を伸ばしてなでてみた。


「クーン」


 その撫で方がよかったのかシルヴァ―が気持ちよさそうに鳴いた。


「あっ、可愛いかも」


 そんなシルヴァ―の反応を見たラナもシルヴァ―の可愛さに気が付いたようで、顔がほころび始めた。


「ははっ、シルヴァ―、これから、バイドルに帰るから俺たちを乗せてくれ」

「バウン」


 キルスの頼みを快く受け入れたシルヴァ―は全員が乗りやすいように伏せの状態となった。

 それをみたキルスはまず最初に乗り、続いてキレルを自身の前に来るように乗せた。

 その後、オルクが軽やかに乗った。実はオルク、料理人ではあるがレティアの息子ということだけあってかなり運動神経がいいのだ。

 そうして、自身の後ろにラナの手を引きながら乗せた。


「みんな、乗ったな。それじゃ、シルヴァ―頼む」

「バウーン」


 それからシルヴァ―は立ち上がりまずはゆっくりと歩き始めた。


「シルヴァ―、いいぞ」

「ガウゥ」


 キルスが許可を出すとシルヴァ―は一気に空に駆け出した。


「えっ、えっ、そ、空、えっ」

「すごーい、空飛んでるー」

「わっ、わっ」


 突然空を飛ぶシルヴァ―の行動にキルス以外が驚愕した。

 これは、魔狼王たるシルヴァ―だからこそ持つ空駆けというスキルで、空中に足場を作り走っている。


 そんな、移動方法をとったこともあり、歩くと3日かかった行程もわずか数時間で着くことができた。


「はやーい、すごいよ、シルヴァ―、あっという間にバイドルに着けたよ」


 あまりの速さにキレルははしゃいでいた。


 こうして、シルヴァ―のおかげであっというまにキルス達はバイドルに戻ってきたのだった。

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