第58話 秘密のバック
2通の手紙を取り出したキルスは、なんで2通もあるんだと思って見てみると、それぞれ、レティアとファルコからで、レティアからの手紙はキルスにファルコからの手紙はデイケスに宛てた物であった。
そこで、キルスは、自分宛てであるレティアの手紙を開封することにした。
「えっと……、ああそういうことか」
「キルス?」
突然何もないところから手紙を出し、読んだキルスにオルクが訝しながら尋ねた。
「ああ、あとで、まとめて説明するよ」
「そうかい」
後で聞けるならと、オルクは何も言わなかった。
それから、キルス、キレル、オルクの3人はデイケス達が待っている1階の食堂に降りてきた。
「おう、何かあったのか」
キルス達が降りると、デイケスがそういって声をかけてきた。
「ああ、これから話すよ。でも、その前にこれを読んでくれる」
キルスはそういって、手に持っていたファルコからの手紙をデイケスに渡した。
「手紙か、ファルコからじゃねぇか」
そういってから、デイケスは手紙を読み始めた。
「なっ、おいおい、まじかよ」
読み終わったデイケスは目を丸くしてキルスを見た。
「どういうことだ、キルス、ここには、俺たちの今の状況をファルコがまるで知っているみたいなことが書いてあるじゃねぇか、もしかして、お前ら、こうなることをわかっていたんじゃねぇだろうな」
妙な疑いを持ったデイケスであった。
「いや、知るわけないだろ。そうじゃなくて今、俺が父さんに知らせたんだ」
「知らせた、どういうことだ。それに、これには、お前ならこの状況を何とかできるとか書いてある」
ファルコは、デイケスに詳しくはないが、キルスなら大量の食材を用意できると書いてあった。
「どういうこと、キルス」
これには、オルクも驚愕した。
「それを説明するには、言っておかなければならないことがあるんだ」
それからキルスは、これから話す内容は、自分の家族しか知らないこと、領主ですら一部しか話していないことを説明し、この話は下手をすると戦争になることなどを話した。
「……ずいぶんと、物騒だな。おい」
「……は、はい、キルス、そんなに危険なものなのかい」
「もの自体は危険じゃないよ。ただ、その存在を力のあるものが知ることが危険なんだ」
「力のある者?」
「そう、例えば、権力者であったり、欲深い商人であったりがね」
キルスは、これを知ったその者たちの行動を思い身震いした。
「それで、それは、どういうものなの、なんか、怖いけど」
オルクは、怖かったが、弟の話であり、家族は知っていると聞いて、兄として、聞かないわけにはいかず恐る恐る尋ねた。
「ああ、確かに、こぇえけどよ。この状況を打破できるなら、聞かせてくれ」
キルスは、オルクとデイケスをはじめとした、この場にいる者たちを見てから言った。
「わかった、話すよ……」
それからキルスは、マジックストレージについて話した。
「……おいおいおい、まじかよ。それ、ほんとなのか」
デイケスは信じられないといった風に動揺している。
「……す、すごい」
隣で聞いていたラナもまた、小さく言葉を漏らしただけで、絶句している。
「そんな、凄いものを、キルスが」
「すごいでしょ」
なぜか、キレルが自慢げであった。
「まぁ、そういうことだから、こいつには、俺が今まで討伐した魔物が大量に入っているんだ。といっても、ほとんどオークだけど」
「オーク?」
オルクが不思議そうに聞いてきたので、キルスは洞窟のダンジョンについて話した。
「なるほどな。それなら確かに、大量のオークってわけか、しかし、いいのか、俺たちがそれを使っちまって。ファルコの野郎が、使うんじゃないのか」
ここで、デイケスはファルコが店で使う分がなくなるんじゃないかと心配していった。
「それなら、問題ないよ。といっても、そこは父さんと相談してもらうしかないけど」
「相談? どうやってだ」
そう尋ねるデイケスに今度はマジックバックについて話した。
「まじか。ということは何か、それを使えば、ファルコの野郎と瞬時にやり取りが出来るってわけか」
「そういうことだよ。デイケス小父さん、というわけで、マジックバックの1つを小父さんに登録するから、ここに血を入れて、魔力を注いでくれる」
そういって、キルスはデイケスにマジックバックを渡した。
「お、おう」
デイケスは、いわれるがままマジックバックに血を入れ、魔力を注いでいった。
こうして、マジックバックを手に入れたデイケスは、食材の分配について、ファルコと手紙のやり取りを始めたのであった。




