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第05話 久方ぶりのギルド

 生後1ヵ月であるキルスが魔法を使った次の日。


「それじゃ、私ちょっとギルドに行ってくるわね」


 レティアはそういって朝早くから出かけて行った。


「いってらっしゃい」



 レティアがギルドにつくと、そこには多くの冒険者がごった返していた。


「ここも相変わらずね」

「依頼に来たのか、だったら俺が引き受けてやってもいいぜ」


 レティアがギルドに入った瞬間そんな声をかけてきた者がいた。


「いやいや、こんな奴じゃなくて、俺が引き受けるぜ」


 レティアが断ろうとすると、別の方から声をかけてきた者が現れた。


 3人の子持ちとはいえ、レティアは今でも十分に若く美しさを保っている。現役のころからそうだが、レティアはこんな風によく声をかけられていた。


「間に合ってるわ。それに、私は人妻よ」


 現役のころと違い今はそういうことで回避している。


「なんだよ」

「ちっ」


 こんな風にあしらいながら依頼者専用の受け付けに向かった。


「いらっしゃいませ、本日はどのようなご依頼でしょうか」


 ギルドの受付嬢がレティアにそう尋ねた。


「レイチェルに会いたいんだけど、いるかしら」

「レイチェル、ですか、失礼ですか、あなたは?」


 レイチェルというのは、かつてギルドの受付嬢をしており、一時レティアの担当をしていた人物だ。現在は出世して受付嬢たちを束ねる立場となっている。


「私はファルコ食堂のレティアよ。そういえばわかるわ」

「ファルコ食堂の、あー、はい、その食堂ならわかります。少々お待ちください」


 ファルコ食堂は安くて美味いをモットーにしているだけあり、冒険者たちがよく利用しているために受付嬢もその名は知っていた。

 そのあと、すぐに受付嬢がカウンターの奥に引っ込み自身の上司でもあるレイチェルを呼びに行った。


 少し待っていると、先ほどの受付嬢を伴って1人の20代後半と思われる女性がやって来た。


「レティアさん、お久しぶりですね。お仕事を再開されるのですか?」

「違うわよ。私は、もう引退したんだから。それに今は子供たちで手一杯よ」

「そうですか。残念ですね。あなたのようなBランク冒険者にいてくれた方が私たちもありがたいのですが」

「!!」


 レイチェルがそういった瞬間受付嬢をはじめその言葉を聞いていたものが皆驚愕した。

 それもそのはず、冒険者ランクはH~S(この表現はわかりやすくしたもので実際の表記は現地のアルファベットによる)で、Sランクは冒険者ギルド約10000年の歴史上を見ても8人しかいないし現代では幻のランクといわれている。

 そうなると現在において最高ランクがAとなるわけだが、これもまたこの世界には数人しかいないと言われ、レティアのランクであるBランクはそこそこいるが、少なくとも、ここバイドルには存在しないランクであった。

 故に、レティアのランクを聞いたギルド内が騒然としたのだった。


「そうはいってもねぇ。お店も忙しいしね。それより、今日は相談があって来たんだけど、今、いいかしら」

「相談ですか。構いませんが……でしたら、2階の会議室にどうぞ」



 2階の会議室は、冒険者たちや職員などが申請することで使うことができ、大人数を収容できる大会議室が2つと、少人数で使うことができる小会議室が6つある。

 今回レイチェルが連れてきた場所は、小会議室の方だった。


「どうぞ、おかけください」

「ええ」


 レティアはレイチェルに勧められるままに適当な場所に座った。


「それで、相談というのは?」


 レイチェルがさっそく相談内容を尋ねてきた。


「息子のことで、ちょっとね」


 レティアは少し、言いよどみながら話し始めた。


「息子さんですか、となるとオルクちゃんの事でしょうか」


 レイチェルは当然レティアの子供のことは知っている。その中で息子で相談となれば生まれたばかりのキルスではなく2歳となったオルクのことだろうと考えた。


「いえ、下のキルスよ」

「キルスちゃんですか、そういえば、1か月前にお生まれになったのですよね。おめでとうございます」


 レイチェルは当然キルスのことも知っていたが、忙しく未だ直接お祝いの言葉を述べていなかった。


「ありがとう」

「それで、キルスちゃんに何があったのですか」

「ええ、実はね……」


 その後レティアは、レイチェルにキルスが魔法を使ったと説明した。


「えっ、魔法、ですか! まさか!!」


 レティアのことは信頼しているレイチェルであったが、さすがに生後1ヵ月の赤子が魔法を使うとはどうしても信じられなかった。


「信じられないのも無理はないけどね。事実よ。私も昨日は本当に驚いたんだから」


 レティアは昨日の出来事を思い出していた。


「というわけで、あれを使おうと思うんだけど、どこかにないかしら」

「あれというと、魔封じの腕輪、ですか。そうですね、あれは、本来罪人に使用するものですが、今回のキルスちゃんの場合には有用でしょうね。わかりました、この街にはないですが、王都にはあると思いますので、ギルドを通して手配しておきます」

「ありがとう、助かるわ。その報酬は、そうね、何かあれば、依頼を受けるからそこから引いてもらえる」


 今回のことは、王都からバイドルに魔封じの腕輪を運搬するという依頼を冒険者に出すことになる。そうなると当然依頼料が発生するわけだ。

 その報酬はそれなりの値段となり、冒険者時代ならまだしも、現在のレティアにはそれだけの余裕はない(現役のころに稼いだお金はすでに店などに使っている)ので、新たに依頼を受けることでそこから出してもらうことにした。


「わかりました、では、それで、お願いします」


 それから、レティアはレイチェルが持ってきた依頼を受けてからギルドを後にした。

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― 新着の感想 ―
[一言] どういう理由で魔法を封じようとするのか、早く教えて欲しいね。
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