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第38話 報告からの悩み

 迷い込んだダンジョンからようやく脱出したキルスだったが、その目の前にキルスの母であるレティアがいた。


「キルス?」

「母さん?」

「あなた、無事だったの」

「まぁ、なんとか」

「そう、まったく、心配かけて」


 レティアは仕方ないと言わんばかりにキルスの頭をなでた。


「母さん」


 キルスもさすがにこの年で母親に頭をなでられるのは照れ臭いし、勘弁してもらいたかったが嬉しくないわけでもなかった。


「キルス!」

「キルス君!」


 その時壁が崩れる音を聞いたユビリスや他の捜索者たちがやって来た。


「ユビリス、お前らにも心配かけたな」

「いいさ、キルスが無事でよかったよ」

「ごめんね、キルス君、私は助けてもらったけど、あなたは……」


 シレイは申し訳なさそうにそういった。


「いや、それは気にしなくていいよ。というかあの状況では俺は無理でもシレイは助けられたからな」


 あの状況ではキルスには助かる方法がなかったが、シレイを助けること方法はあったのは事実であった。


「それでも、ありがとう」


 それでもシレイが助かったのは事実であり、シレイはキルスにお礼を言った。


「お、おう」


 キルスは照れていた。


「それで、キルス、それは何なんだい」


 ここでユビリスがキルスの後ろにあるダンジョンを指してそういった。


「ああ、ダンジョンだよ。どうやらここの地下はダンジョンが広がっているらしい。俺が落ちた場所の隣にあってな。それで出てこれたんだよ。それと、オークが沸く理由もわかったぞ」

「本当!!」

「どうやらダンジョンの1階層がオークの巣窟になっているみたいでな。今は俺が壊したけど、小さな穴が開いていたんだ。そこからオークの幼体が出てきていたんだろうな」


 オークは異種族との交配が可能のため、幼体となるとどんな母体にも宿れるように限りなく小さく、小さな穴なら通り抜けることはできるだろう。


「なるほどね。その穴から出てきたんだね」

「何処から来ているのかと思ったら、そんなところから出てきていたのね」


 シレイたち3人娘たちは嫌そうな顔をしていた。


「まぁな、というわけで、母さんこれふさぐから、手伝ってくれる」

「ええ、任せなさい」


 それから、キルスとレティアの親子で穴が完膚なきまでにふさがれ、これならオークの幼体でも出てくることはできないだろう。



 そうして、キルスを救出したことでこの洞窟に用はないということになり、少し休憩したのちキルス達は洞窟を後にしたのだった。


 そして、その日の夜、野営となったが、キルスは落ちたわけだしユビリス達はそれに奔走した、レティアはすでに引退した身、というわけで見張りが免除されていた。


 それならとキルスとレティアは親子だし同じテントで寝ることになったために、落ちてから何があったのかを話すことになった。

 レティアとしては息子のことだし、キルスとしては相談したいことがあったためにちょうどよかった。


「それで、キルス一体何があったの」

「ああ、うん、順番に話すよ」


 それから、キルスはまず落下したときどうやって生還したかと鑑定スキルを手に入れた話をした。


「空気抵抗と水の抵抗、確かに私も覚えがあるけどまさかそれを利用するなんてね。よく考えたわね」


 話を聞いたレティアは感心した。


「前世の世界でパラシュートとかウォーターバックっていうのがあったからね。それを利用したんだ」


 キルスは何気なく前世といったが、キルスはすでに8年前家族にのみ自身が前世の記憶を持つ転生者であるということを話していた。


「それでも、危なかったけどね。それで、その後……」


 キルスは鑑定スキルのことを話した。


「スキルの石碑、そういえばキルスが転生する前にエリエル様から聞いていたのよね。本当にあったのね」

「うん、俺もこんなところにあるとは思わなかったよ」

「それで、その鑑定スキルっていうのはどういうものなのかしら」


 レティアはキルスが獲得したスキルについて興味が出た。


「対象の情報を見るスキルだよ。例えば母さんの剣を見ると、名前がレティアの剣って出るし、素材もミスリルと魔鋼って出るよ。それに人を鑑定しても名前とか出るんだ」

「それは、考えようによっては便利ね」

「ああ、だから名前を偽っている人とかもすぐに本名がわかるんだよ」


 それを聞いたレティアは素直に凄いと感心した。それほどのスキルであったからだ。


「なるほどね。諜報部隊とかが欲しがりそうね。それ」

「だね。されで、そのあと、魔力も使い切っていたし、その日は休んで……」


 ダンジョンを発見しドラゴンとの出会いを話した。


「……ドラゴン、それもエンシェントドラゴンって、よく無事だったわね」


 さすがのレティアもキルスがエンシェントドラゴンと闘ったと聞いてよく無事だったと心配した。


「ほんとにね。運がよかったとしか言えないよ」

「? どういうこと」


 レティアとしてはエンシェントドラゴンの遭遇は運が悪いのではと思ったし、実際ほとんどの冒険者が同じ感想だろう。


「エンシェントドラゴンが一般的なやつだったら俺だって無理だよ。たぶんここにはいなかっただろうね」


 これにはレティアも同感だった。エンシェントドラゴンというのはそういう物だからだ。


「でも、あのエンシェントドラゴンはあそこに卵の状態からいたから、圧倒的に経験値が足りなかったんだ」

「つまり、ただのドラゴンと同じということかしら」


 レティアはそういうが、ただのドラゴンでも普通の人間なら絶望する。レティアとキルスだからこそただのドラゴンと安堵できるのであった。


「そういうこと、といってもその力はエンシェントドラゴンなわけだから、こっちは攻撃を受けなくても、向こうも俺の攻撃が全く聞かなくてさ。最悪じり貧になっていたよ」

「そ、それは、まずかったわね。それで、その剣ってこと」


 レティアはキルスの腰に刺さっている自身が去年与えたものとは違う剣を見た。


「ああ、母さんからもらったあの剣はエンシェントドラゴンとの戦いの最中、賭けとして全魔力を込めたから、折れたんだ」

「そうでしょうね。私もまさか、そんなに早く強敵と闘う羽目になるとは思わなかったからね」


 レティアは去年剣を送るときに悩んだ。自身が持つような剣にするか、鋼の剣とするかだが、さすがに自分ような剣は早過ぎると感じた為に鋼の剣にしたのだった。


「俺もだよ。でも、それで折れて、どうしようかと思っていたら、エンシェントドラゴンの傍にこれが落ちてて」


 キルスはそういって腰の剣を抜いてレティアに見せた。


「凄い剣ね。もしかして魔剣かしら」


 レティアはすぐにこれが魔剣であることを見抜いた。


「ああ、魔剣エスプリートっていうんだ。素材は元々ミスリルと魔鋼だったらしいけど、長いことエンシェントドラゴンの傍にあったから進化して、オリハルコンとヒヒイロカネになっていたけど」

「!!! オリハルコン、それにヒヒイロカネって、それほんとなの」


 レティアは最大に驚愕した。それはそうだろう、オリハルコンもヒヒイロカネも伝説級の素材、ドワーフですらその加工は出来ないとされる金属だ。


「ほんとだよ。だから俺の全魔力に耐えられたんだ」

「た、確かに、それならそうかもしれないわね。でもねぇ」


 レティアはキルスの剣を持ちじっくりと眺めた。


「まぁ、その剣にも驚いたけど、問題はこの後なんだよね」

「まだあるの」


 レティアはそういったが、キルスはマジックストレージのことを話した。


「……えっと、なにそれ?」


 もはやレティアの理解の外にある話だった。


「まぁ、言いたいことはわかるよ」


 それからキルスはマジックストレージについて話すと同時にこれをどうするかという相談をして、その日は話を終えたのだった。

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