第37話 脱出と再会
マジックストレージとマジックバックというとんでも魔道具を手に入れたキルスは、エンシェントドラゴンと闘った部屋に戻ってきた。
「これで、エンシェントドラゴンをすべて収納できるな」
そう思いつつもキルスはさっそくエンシェントドラゴンに触れつつ”収納”と思った。
すると、エンシェントドラゴンの死体がその場から消え、キルスの脳内のマジックストレージの一覧にエンシェントドラゴンの文字が増えた。
「よし、これでいいか」
その後、キルスは宝物庫に戻りその日は休むことにした。
翌日
「ふわぁぁ、思ったより寝てたな」
現在の時刻はわからないが、かなりの時間寝ていたという自覚があった。
それほど、前日のエンシェントドラゴンとの数時間に及ぶ闘いが過酷だったことがうかがえる。
「まぁ、おかげで、体力も魔力も回復しているし、とにかくここを出るとするか。といっても、たぶんあの扉しかないよな」
キルスが見たのは、昨日この部屋に入ってきたものとは別の扉だった。
「たぶん、あそこは開かないだろうしな」
キルスがあそこというのは、エンシェントドラゴンと戦った部屋へ入ってきたあの扉だ。
あの扉は、人が入ると鍵でも締まるのか部屋の中からは開かない仕組みとなっていた。
「となるとやっぱり、こっちが正しいんだろうな」
(たぶん、地上に出る階段とか、転移装置とかあるんだろうけど、出来れば転移装置がいいよな)
そう思いながらも一応警戒しながら扉を開けてみた。
扉を開けると、そこには何もなかった。
「えっと、なにもな……いや、これって、魔法陣か?」
何もないかと思っていたら、よく見たら床に魔法陣が書かれていた。
「とりあえず鑑定っと」
キルスは鑑定スキルでなんの魔法陣かを見た。
(まぁ、十中八九転移だろうけどな)
そう思いながらも鑑定してみると、やはりそれは転移魔法陣であった。
しかも、キルスが鑑定スキルを発動したと同時翻訳スキルも発動し、なんと魔法陣の解析に成功してしまった。
「……えっと、転移の魔法陣はわかったけど、まさか、解析まで出来るとは、これってもしかして自分で書くことも出来たりするのかな。まぁ、今のところあまり使い道もないけどな」
キルスが解析したこの転移魔法陣は短距離のみのものであり、向こう側にも同じ魔法陣がある必要がある。そのため今のキルスにとっては使い勝手が悪いものであった。
(これが、長距離とかだったら、まだ使えたかもな)
キルスはそんなことを考えながら魔法陣に魔力を通した。
すると、魔法陣が光、次の瞬間キルスの姿はその場から消えていた。
キルスが姿を現したのは、スタイラエルダンジョン1階層に設置されていた、隠し部屋だった。
「出口はあっちか……んっ」
扉を見つけたキルスはその扉を開けようとしたところで立ち止まった。
(なんか、ものすごい数の気配があるんだけど)
立ち止まった理由は扉の先に魔物の気配が大量にあったからだ。
「罠、ってことはないよな。となると、なんだ」
ダンジョンのラスボスを倒して守られた宝物を手に入れたキルスに対しての罠かとも思ったが、さすがにそれはないだろう思い至った。
しかし、ならなぜ転移先の外に大量の魔物がいるのだろうか、キルスは頭を傾げた。
「まぁ、なんにしてもここを出ないと他にはないし、外にでられないだろうから、行くしかないか、幸い外の魔物はどれもそこまでの気配ではないからな」
キルスは気合を入れなおしてから扉をあけ放った。
「グワォア」
「ガァ」
そこにいたのはオーク、オーク、どこまでもオークの群れであった。
「ここ1階層だよな。普通もっと弱い魔物が少しだけいるとかじゃないのか、なんでこんなにオークが……」
オーク1体であれば、個人ではDランク冒険者以上にパーティーではEランク以上に討伐依頼が出る魔物で、群れとなるとCランク以上にならないと出ない。
ちなみに、今回キルス達Dランクパーティーでも依頼を受けられたのはこれの調査依頼だったからだ。
そんなオークが大量に通路を埋め尽くすようにいた。
「こうなると、Bランク以上になるんだよな」
キルスの言う通り、ここまで巨大な群れとなると、Bランク以上でなければ討伐依頼は受けられない。
「まぁ、やるしかないか」
キルスが茫然とオークを見ているが、オークはそうはいかない、キルスという餌がやって来たわけだから、ここぞとばかりにキルスに襲い掛かってきた。
キルスはその攻撃をよけつつ、腰に差した魔剣エスプリートを抜き放ち、魔力を込めつつ風の魔法をまとわせる。
『風よ、我が剣に宿れ』
この短い呪文こそ魔法剣の使い方で、いつか使うようになることがあるかもしれないからと幼いころ母であるレティアから学んでいた。
それからキルスはとにかく暴れた、オークが爪を振り払えば、キルスはそれをよけ剣を横なぎにふるう、その時剣にまとった風が飛ぶ斬撃として周囲にいたオークも切り裂いていく。
また、開いている左手で、通常の魔法で後方の敵を燃やし、またある時は水と風の複合魔法である氷魔法で凍り付かせた。
そうして、闘うこと数時間キルスは闘いながらだったためか道に迷いながらも、ようやくこのダンジョンの入り口と言える場所にたどり着いた。
「ふぅ、やっとか、といっても、道ふさがっているし……」
明らかにダンジョンの入り口だと思うが、なぜかその先が土や石でふさがっていた。
「そういえば、洞窟探索でもダンジョンなんてなかったからな、入り口がふさがっていたから見つからなかったのかな」
そうつぶやいてから期するは目の前の壁を破壊した。
ドゴォン
大きな破壊音がして、砂埃が晴れた時キルスは驚愕した。
「キルス?」
「……母さん?」




