第36話 魔剣と宝物
「はぁはぁ、まじで死ぬかと思った」
何とかエンシェントドラゴンを討伐したキルスは、その場で疲れ果て大の字になって寝ていた。
「ふぅ、しかし、これのおかげで助かったよなぁ」
キルスはそうつぶやきながら手に持っていた剣を見つめた。
「それにしても、これは何なんだろうな。鑑定してみるか」
キルスは起き上がって手に持っていた剣を鑑定した。
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名称:魔剣エスプリート
作成者:スタイラエル・フォン・ベンダ・ラダエルカ・ド・ラ・モリスハルト
素材:オリハルコン・ヒヒイロカネ(ミスリル・魔鋼)
能力:魔法剣・魔力剣
説明:かつて存在した稀代の魔道具職人スタイラエルにより作成され、このダンジョン95階層宝箱に安置され、挑戦者ボルケノスが獲得したが、ドラゴンとの戦闘中死亡、その後放置された。
当時は魔鋼を芯としてミスリルの刃で構成されていたが、長いことエンシェントドラゴンの魔力にさらされたことにより、オリハルコンとヒヒイロカネにそれぞれ変化した。
また、能力も魔法をまとう魔法剣のみであったが、オリハルコンに変化したことで魔力剣の能力を得た。
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鑑定して、キルスは絶句した。
「……オリハルコンって、それにヒヒイロカネって、素材だけでも伝説級かよ、しかも、魔法剣って、すげぇとしかいえねょよ」
魔法剣とは読んで字のごとく剣に魔法をまとわせることができるということ、これがあれば例えば、キルスが炎の魔法をまとわせば炎の剣となるということだ。
そして、もう一つの能力である魔力剣というのはキルスがエンシェントドラゴンを倒した時のように剣に魔力を通すことで切れ味などをあげることである。
「これって、どう考えても聖剣よりもすげぇ剣だな」
聖剣といってもここまでの能力はなかった、少なくとも魔法剣ではなかったし、何より使われているオリハルコンの量が全く違う、聖剣はせいぜいオリハルコンの粉末をまとわせている程度のものであった。
それでも、その世界において最強の剣として勇者である護人が使っていたのだ。この剣はそんな聖剣と比べるとオリハルコンどころかヒヒイロカネという本当に伝説級の素材となっていた。
「そりゃぁ、俺の全力に耐えられるよな」
キルスは、そう強く思った。
「……まぁ、とにかく、これは俺がもらってもいいらしいし、ありがたく使わせてもらうよ」
それからキルスはようやく立ち上がり、魔剣エスプリートを腰に差し、先ほど折れてしまった自分の剣のところまで歩き、それを手に取った。
「いままで、ありがとうな」
キルスは折れた剣に礼を言ってから、腰に差したままの鞘に納めた。
「さてと、これからだけど、まずはこのエンシェントドラゴンを何とかしたいところだけど、ドラゴンって何処が証明部位だ。というか、1つ1つがでかいから持って行けねぇし、どうするよ」
キルスは、途方に暮れていた。
「まぁ、考えても仕方ないし、とりあえず今はあの奥の扉を開けてみるか」
キルスはわからないことを今考えるより、今はドラゴンが守っていた扉が気になっていた。
「ドラゴンが守っていたぐらいだからなきっと、ラスボスだろうし、そうなるとこの先は宝物か」
キルスはそんな期待を胸に扉に手を掛け開けた。
キルスが扉を開けると、思っていた通りそこには何かが安置されていた。
「なんだ、腕輪、それになんだこのバック」
キルスが見たものは部屋の中央の台座に銀色で中央に青い石がはまったの腕輪が1つ、それを囲むように10の台座とそこにはそれぞれ全く同じ茶色の革でできたどこにでもありそうなバックが置いてあった。
「なんだこれ」
キルスはそう思いつつ腕輪の背後にあった文字らしきものが書いてある石碑を読んでみた。
「えっと、ああ、これは普通に読めるな。古代文明時代の文字か」
翻訳スキルで普通に読めたことに安心した。どうやらスキルの石碑のようなことはないようだ。
文字を読んだキルスは驚愕と納得、それと歓喜した。
「まじかよ、すげぇ、まさか、こんなのあるのかよ。まぁ、確かに、こんなものがあったら戦争になるよな」
キルスが読んだ、のは腕輪とバックの説明と、なぜここにこれらが安置されたのかという理由だった。
それによると、腕輪はマジックストレージと言い、バックはマジックバックという魔道具だ。
マジックストレージというものは魔法の倉庫という意味であるように、キルスが前世で読んだ小説の魔法の袋とかアイテムボックスとかというようなものと同じで、どんな大きさのものでも、どれだけの量でも収納出来る。
また、中に入れると時間経過もなく食材などを入れても常に新鮮なまま、料理を入れてもいつでも作りたての状態で保管できるというものだ。ただし、これも類似品と同じく生き物は入れられない。
これだけでも、十分凄い機能だが、このマジックストレージにはさらに凄い機能がある。
それが、マジックバックとなる。これの凄いところは、マジックストレージと繋がっているという点だろう。
どういうことかというと、例えばマジックストレージに入れたものは通常、同じマジックストレージからしか取り出すことはできない。
しかし、マジックバックがあればたとえ遠く離れた場所にいてもマジックストレージの中身を取り出すことができるという。
つまり、パソコンでたとえるなら、マジックストレージをサーバー、マジックバックがそれに対応した端末ということにある。
しかも、そのマジックバックが10個、すべてマジックストレージの端末にすることができる。
また、セキュリティーも完璧で、マジックストレージはこの場所でしか使用者登録ができず、登録者しか使えない。
マジックバックは何処でも出来るし複数人の登録が出来るが、マジックストレージの登録者の認証が必要になるし、例えばマジックバックを盗まれてもマジックストレージと繋がっているために、マジックストレージから取り出すことができるというとんでも機能が付いている。
そんなとんでも魔道具であるためにかつてこの所有権をめぐって世界大戦が勃発しかけた。
それを憂いたスタイラエルはダンジョンを作りその最奥にこれを安置、当時から大人数でなければ倒せないドラゴンをラスボスとして配置することで誰の手にも渡らないようにした。
とはいえ、もしこれを討伐できたものがいるのなら、その人物にこそふさわしい魔道具であると考えた。
ちなみに、石碑にはかかれていないが、このダンジョンが作られてから世界中の人間が躍起になってこのダンジョンに挑戦した。
その人数は数えきれないほどだったという、しかしその難易度がありえないほどであり、ほとんどの者達が途中で棄権し、最後までたどり着いたものでもドラゴンにやられてマジックストレージにたどり着くことはできなかった。
また、そんな挑戦者たちは年月を経て冒険者となり、彼らを幇助する為に冒険者ギルドが出来たという、その後このダンジョンは忘れられて冒険者ギルドだけが残り現在に至る。
「とんでもないな。これ、でも、せっかくだし、登録するか、それにそうすればあのドラゴンも収納できるし、今後の冒険にも便利だし、家でも使えるしな」
というわけでキルスはさっそくマジックストレージの使用者登録をすることにした。
「えっと、ここに血を入れると……」
石碑には登録の方法が書かれていたためにそれを読みながら実施している。
それによるとまずは登録者の血を腕輪の前にある直径1センチほどのくぼみに満たして、その右隣にある丸い突起に手をおいて魔力を流す。
キルスはその通りにやってみた。
すると、突起とくぼみの間で光が走り、その光が腕輪にたどり着いた瞬間腕輪が光り輝いた。
「うぉ、まぶしっ」
一瞬まぶしかったが、すぐに収まった。
「えっと、これで登録出来たってことだよな」
そういいつつキルスは腕輪を手に取りさっそく左腕にはめてみた。
「えっと、まずはこのバックを入れてみるか」
そう考えたキルスはまずマジックバックを”収納”と思いながら手に取った。
すると、目の前にあったマジックバックがその場から消えた。
「おっ、消えた、後は……」
今度はマジックストレージの中身一覧を思いうかべた。
「おっ、出てきた」
頭の中にマジックストレージの中身一覧が表示されて、その中にマジックバックの文字があった。
「成功だな、あとは他のマジックバックも収納するか」
ということですべてのマジックバックを収納した。




