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第31話 スキルの石碑

 キルスはユビリスのパーティーとともに洞窟調査の依頼を受けた。


 キルス達が調査した洞窟はなぜかオークが湧くという不思議な洞窟だった。


 あらかたオークを片付けたキルス達はちょっとした広場で休憩をすることにした。


 しかし、そのさなか突如地面が崩落、キルスは何とか隣にいたシレイを助けることはできたが、自身は落下することになった。


「まじかよ」


 落下しながらキルスは独り言ちた。


(やばいだろ、これ、ていうか、もうすでにだいぶ落ちているはずだよな。俺)


 落ちながらもキルスはそう考えていた。というかそう考えられるほどの時間があった。

 それほどの落下であった。


「どうする」


 キルスは今だ落下点が見えてこないことをいいことにどうするかを考えた。


「まずは、落下速度を落とす必要があるよな」


『風よ。汝は自由、そして奔放なり、吹き荒れろ 暴風』


 キルスは落下速度を落とすには空気抵抗をあげればいいと考えた。

 本来ならパラシュートがあればいいが、そんなものはない、そこで風を利用することにしたのだ。

 魔力を目一杯込めた風を自身より下方に向けて盛大に吹かせた。

 密封された空間で発生した風は下降気流となり地面に向かい、跳ね返り上昇気流となる。


「よし来た」


 跳ね返ってきた上昇気流に乗り、キルスの落下速度は幾分か和らいだ。


 そうして、落下してしばらく、ついに地面が見えてきた。


「やっと見えた、ていうか長すぎだ」


 落下の長さに一体自分はどれだけ落ちたんだと思いながら、キルスは次の魔法を準備した。


『水よ。集まりて集まれ、汝は大いなるもの 水弾(すいだん)


 キルスは地面に向かって水弾を放った。

 これは本来、勢いよく放ち敵を穿ったり、吹き飛ばすといったものだ。しかし今回キルスが放った水弾は地面にたどり着くと、そこにとどまり巨大なウォーターマットのようになった。

 そして、そこにキルスが勢いよく落下。


ゴボォッ


 キルスは地面すれすれで停止。


「ふぅ、あっぶねぇ。死ぬかと思った」


 これが、キルスが水弾のクッションから出てきた直後のセリフだった。


 水弾の中に落ちたためにずぶ濡れではあったがそれでも助かったことにキルスは喜んだ。


「さて、これからどうするかな。とりあえずユビリスたちに無事だということを伝える必要があるな」


『風よ。我の声を遠くの友に伝えよ 遠声(えんせい)


 それからキルスはユビリスの声を届けて一安心したところで周囲を見渡した。


 まず見たのは上空、一体どのくらい落ちてきたのか見当もつかないほど高い、あまりに高すぎて上の方が真っ暗で見えない。

 次に見たのは左右、ごつごつとした岩や、キルスと一緒に落ちてきたのだろう石の破片が散らばっている。

 また、空間は野球のグラウンドほどの大きさがあり、キルスはその中心部分に落ちていた。


「結構広いな。というか、あの岩とか、あそこに落ちなくてよかったよな」


 明らかに大きく咎った岩を横目に見ながらそうつぶやいた。


「まぁ、とにかくユビリスたちには伝えたし、上に上がる方法を考えないとな」


 そう思い改めて周囲を見渡してみた。


「とりあえず、魔物の類はいないみたいか」


 落下の際の風魔法と水魔法で大半の魔力を使ってしまっており、ここで魔物との戦闘は出来れば避けたい。


「少し歩いてみるか」


 キルスはそういってからいつまでも同じところにいても仕方ないし、この空間から出る方法を考えねばならないためにまずは動くとにした。


 そうして、動くこと少し最初に見た通りの岩場が続いている中、ひときわ目立つものが目に留まった。


「なんだ、あれ」


 そう思い多少の警戒をしながら近づいていった。



 近づいてみると、それはなにやら巨大な横に長い一枚岩の石碑のようなもの。

 そこには文字がびっしりと書かれていたが、キルスには全く読めなかった(・・・・・・)


 そう、読めないのだ。

 これはありえない、それというのもキルスは”翻訳スキル”というスキルを持っている。

 このスキルは文字通りあらゆる言語を自身のわかる言語に自動的に翻訳してくれ理解することができ、話す際も自然とその言語を話すことができるというかなり便利なスキルだ。


 ちなみにこの翻訳スキルは、転生の際にエリエルから与えられたものではなく、キルスが自力で獲得したスキルだ。


 そんな翻訳スキルで読み解くことができない文字。普通ならありえない事実であった。


「どうなっているんだ。なんで読めないんだ」


 キルスが不思議そうにしながらも、今度は意識して翻訳スキルを使ってみた。


「うぉ」


 その瞬間石碑の文字が光り輝いたかと思ったら、突如その光に襲われる。

 しかし、キルスはその光を危険なものとは思えなかった。

 そうして、光が収まったところでキルスは気が付いた。


「あれ、これって、まさか!」


 転生前、エリエルから聞いたこの世界のこと、その中にスキルの石碑というものがあった。

 それによると、この世界には読むだけでスキルを獲得できるという、スキルの石碑というものが各地に点在しているという、エリエルはキルスにそれを探してみてはどうかと勧められていた。


「これが、スキルの石碑か、となると……やっぱり」


 キルスは頭の中を確認すると、明らかにスキルが増えていた。

 元々、キルスは翻訳スキルを持っていた。しかしそれだけだった、だが今は翻訳スキルの他に鑑定スキルというものが増えていた。


「すげぇな。それと、なるほど、確かエリエル様は最近はこの石碑を読むことができる者が少なくなったと言っていた、確かに、少なくともこの大陸には俺以外いないだろうな」


 キルスは妙に納得しながらも今後の冒険の際にはこのスキルの石碑を探してみるのもいいだろう。そう考えたのだった。

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