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第03話 誕生と新しい家族

すみません、前回と同じものを投稿していました。

全く気が付きませんでした。

申し訳ない

改めて、第03話です

 エリエルが管理する、あまたある世界の1つであるアーベイン。

 この世界には5つの大陸があり、その中でも最大の面積を持つトラベイン大陸。

 そんな大陸の南東部内陸にキリエルン王国という小国がある。

 この国の王都から北東に馬車で10日に位置する小さな街、バイドル。

 ここは、その街の大通りから少し路地に入ったところにある食堂、ファルコ食堂に併設されている住居の一室。


「んー、ん˝ー、んあー」


 部屋中はおろか、外にまでそんなくぐもった女性の悲鳴が響いた。


「もう少しだよ、頑張んな」


 その傍らには1人の老婆、女性を励ましている。


「おぎゃあー」

「よし、生まれたっ」


 ここに1人の赤子が誕生した。


「生まれたって」

「これ、ファルコ、まだ入ってくるんじゃないよ」


 赤子の父親、ファルコが中に入ろうとしたところで、産婆の老婆にまだ入らないようにと怒られた。


「全く、ほら、元気な男の子だよ」


 老婆は仕方ないなと、赤子を産湯に付け体を拭いてから赤子の母親、レティアに生まれたばかりの赤子を渡した。


「はぁ、はぁ、ああ、この子が……」


 レティアは出産の痛みと疲れで息を切らしていたが、赤子を渡された瞬間幸せな気持ちとなった。



 それから、数分、ようやく落ち着いたところでファルコも部屋にやってきて、夫婦2人で生まれたばかりの赤子を可愛がっている。


「ファルコ、名前は決まった」


 ここで、ふとレティアがファルコに赤子の名前を尋ねた。

 ここ最近、ファルコは子供の名前を一生懸命考えていた。といっても、この世界には生まれてくる前に男女どっちかわからない。そこで、ファルコは両方の名前を考えておく必要があった。


「うん、キルスって、名前にしようと思う」

「キルスか、いい名前ね。よろしくね、キルス」

「あーあうー」


 レティアがよろしくというと、キルスと名付けられた赤子はそう返事をした。


(えっと、こういうのって、ある程度成長してから記憶を取り戻すんじゃ、まさか、最初からとは……)


 生まれたばかりのキルスと名付けられた赤子は心の中でそう考えていた。

 そう、この赤子こそ、勇者として異世界に召喚され、魔王を討伐という偉業を成し遂げたにもかかわらず、無実の罪を着せられ処刑された日本人蓮山護人だった男だ。


(それにしても、生まれたばかりって、目も見えないし、おそらく両親だろうと思うけど、何言っているか、理解できないな)


 護人、いや、キルスはまだ生まれて間もないそのため、目が開いておらず今だ周囲が見えない。また、この世界の言葉は日本語でも、ハエリンカン王国の言葉でもないために全く理解できない。

 それでも、聞こえてくる男女の声、それは、とても穏やかで優しく聞こえてきて、キルスも幸せを感じていた。



 キルスが生まれて数日が経った。

 生まれて間もないころは見えていなかった目だが、最近になってようやくおぼろげながらに見え始め、ついにしっかりと見えるようになった。

 そこで、自身を大事そうに抱いておっぱいを与えているレティアの顔を見てみた。


(うぉ、まじか、おぼろげながらにもそうじゃないかと思っていたけど、すげぇ、美人じゃねぇか)


 そう、キルスの母レティアは茶色の髪を長く伸ばし、すらっとした長身でありながら豊満なバストを携えた超絶的な美女だった。

 といっても、キルスにとっては母であるのはいうまでもないので、たとえその胸に顔をうずめている今の状況でも息子として愛されている喜びしか感じない。


「レティア、おっ、元気に飲んでるね」


 そんな中ファルコが入ってきて、キルスの様子に嬉しそうにそういった。


「ええ、そうね。このまま元気に育って欲しいわ」

「そうだね」

「お母さん、お腹空いた」

「……」


 ファルコに続いてキルスの姉エミルと兄オルクも部屋に入ってきた。


「ちょっと待ってなさい。今、キルスがおっぱい飲んでいるからね」


 それから少ししてキルスがようやくお腹いっぱいとなりレティアの胸から顔を離した。

 そして、キルスは先ほどから聞こえている家族の顔を見ようと首を動かし、見た。いや、見てしまった。


「おぎゃぁ、おぎゃぁあ」


 キルスは父であるファルコを見た瞬間思わずびくっとなった後に泣き出してしまった。


「あらあら」

「あははっ」


 そんなキルスの様子にレティアは仕方ないと、エミルは自分の過去を思い出していた。


(うぉい、びっくりした、思わず、泣いてしまったぞ。ていうか、父さんだよな?)


 キルスがそう感じ思わず確認したのも仕方ないだろう、なにせ、ファルコの顔は凶悪としか言いようのない物だったからだ。

 頭はスキンヘッドで、その顔は、山賊や盗賊の(かしら)、いや、大親分か、スラム街のドンといったもので、キルスを見て微笑む姿は、まるで何か悪だくみを考えているとしか思えなかったからだ。

 キルスとしては、これまで声の感じから、穏やかな人だろうと思っていただけに、なおのこと驚愕してしまった。

 まぁ、でも、少ししたところで、キルスは泣き止みもう一度じっくりとファルコの顔を見てみた。

 すると、ファルコは、息子に泣かれたことにショックを受け、エミルから慰められていた。

 その様子に、キルスもようやくこれが俺の父さんなんだなと、認識することができた。

 それ以来、これまでの反応が嘘のようにキルスはファルコに対しても笑いかけた。


「あら、この子、ファルコにもう慣れたみたい」

「ほんとに」


 そんなキルスの様子を見たレティアは驚いたようにそういった。そして、それを聞いたファルコもまた驚愕しつつ、期待するようにキルスを見た。


「はは、ほんとだ。よかったぁ」

「すごいね。キル」

「すおい、すおい」


 キルスの適応力にファルコは喜び、エミルとオルクは感心した。


(これが、俺の新しい家族なんだな。母さんは美人で、父さんはちょっと怖いけど、姉さんと、兄さんは母さんに似ている感じで、あれ、ちょっと待てよ、俺はどっちだ、父さんにだけは似ていないことを祈りたいんだけど……)

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