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第29話 洞窟調査

「ここがその洞窟か」


 キルス達は現在調査対象の洞窟にたどり着いていた。


 この洞窟の場所はバイドルから1日と数時間といった場所にあり、先日キルス達が盗賊討伐を行った洞窟より少し先にあった。


 その道程は馬車での移動となり、途中で行う野営は3人娘が1つのテントを使い、キルスとユビリスが1つのテントとなった。

 3人娘としてはユビリスと同じテントでいいのだが、ユビリスはこういったところはちゃんと男女で分けるべきだと考え普段からこのように男女で分けて野営している。

 キルスとしてはこの考えのおかげで精神のHPを無駄に減らさずに済んだというわけだ。

 なにせ、これまでもユビリスのようにハーレムを築いた者が多くいた。

 しかし、それらはほとんどが長くは続かなかった。

 それは、もちろん1人の男をめぐって他の女性陣が争ったり、その中の1人と出来てしまい他が捨てられたり、いつまでもはっきりとしない男に業を煮やしたりといった具合だ。

 また、うまくやっている者たちでも冒険中に調子に乗って様々なことを怠り、全滅といったことも起きている。

 つまり、ハーレムパーティーというものは通常長くは続かないのだ。

 そう考えると、結成して約2年も経っているユビリスたちは驚異的とも言えるだろう。

 また、野営の際の見張りも男女分け隔てなく順番に行った。

 それから御者も当然全員で持ち回りで行ったことは言うまでもないだろう。


 さて、そんなユビリスたちとともに依頼を受けることになったキルスだったが、道中において3人娘ともある程度打ち解けることができていた。


「それで、ユビリス、俺は洞窟調査は初めてだからな、どうするのか教えてくれ」


 キルスはDランクに昇格したばかり、そのため洞窟調査の依頼を受けたのは初めてとなる。だから、経験者であるユビリスたちに尋ねた。


「そうだね。キルスも知っている通り、洞窟調査は以前に魔物や盗賊が巣くっていた場所になる。それで、この洞窟は以前オークが住み着いていたんだ。それはバイドルで討伐隊を組んで討伐したんだけど、そのあとまたオークが住み着いてしまったんだ」

「その時私たちも、参加したのよ」

「あの時は思ったよりも早く沸いていたから、今回もすでにオークがいるかもしれない」

「だから、5人パーティーの制限がかかっていたの」


 ユビリスに続いてシレイ、コルン、リンナが続いて今回の洞窟についてキルスに説明をした。


「同じ洞窟に同じ魔物が湧くという話は俺も聞いているよ。それで、具体的にはどんな風に調査をするんだ」


 キルスも母レティアからこういった話をすでに聞いていた。


「今回は調査だからね。シーフであるコルンを中心に洞窟内にオークや別の魔物、盗賊なんかが住み着いていないかを調べて、もし住み着いていて、討伐出来そうなら討伐っていうところかな」

「といっても、コルン1人に任せるのではなくて、私たち全員で隊列を組んで行くことになるわ」

「なるほどな。そうすれば見つけ次第討伐ができるな」

「そういうこと」

「それじゃ、いこうか」


 ということで、キルス達はさっそく洞窟内に入っていった。


 隊列は、先頭にコルン、その後ろに護衛としてユビリスが付き、その後ろは神官であるリンナ、そして魔法使いであるシレイがついて、最後尾がキルスとなった。



 余談だが、リンナの神官というものは、シーフのように別に盗賊ではないが、それに近い能力を持つ技能としての冒険者特有の職業ではなく。文字通り神官、つまり神に仕えるという本当の神官となる。

 その証拠に同じ技能である回復魔法の使い手は回復魔法使いと呼ばれているからだ。

 そして、この神官というものはたいてい聖教という宗教の神官である。

 聖教というのはこの世界の創造主であるエリエルを神としてあがめており、実在する神として世界のほとんどの人が信仰している宗教となる。

 まぁ、もちろん中には別の宗教を信仰するものもいるわけだが、その神は想像により生み出されるか、過去の聖人などがその座についている。



 洞窟内に入ったキルス達は言葉を発するわけではなく静かに周囲に気を配りながらゆっくりと歩いている。

 そんな中突如コルンが止まり、背後にいるユビリスたちを止めた。

 何事かと思っていると、目の前にオークが闊歩しているではないか。


(オーク、どうやら、すでに湧いているみたいだな)


 キルスは洞窟に入る前にユビリスから可能性を聞いていたために特に驚くことはなかった。


(しかし、あれがオークか、昔漫画とかで読んだ姿と同じだな)


 キルスは初めてみるオークの姿に、やはりここは異世界なんだなと、ひそかに感動をしていた。

 一方、女性陣3人はオークを憎むように、汚物を見るような目で見ている。

 それというのも、この世界のオークは、キルスの前世からの知識にもあるように、メスのいないオークは繁殖をするために他種族のメスや人間の女性を襲い、犯し繁殖する。

 そのため、世の女性たちにとってはオークは敵以外の何物でもないのだ。


 そこで本来ならすぐさまオークを討伐、と行きたいところだが今回はあくまで調査。少し様子を見る必要があった。


(さてと、どうなるか)


 キルス達は気付かれないように見つけたオークの後ろをついて行った。


 そうして、しばらくオークの後をついて行くと、少し開けた場所に出た。



 そこには、3体のオークがおり、その様子から他にはこの場所にいそうになかった。

 それを感じ取ったコルンの指示により、ユビリスとキルスはすぐさま飛び出した。


「ぐもぉ」


 オークが気が付いた時、すでにその体はユビリスとキルスの2人によって真っ二つとなっていた。


「ふぅ、とりあえず片付いたけど、やっぱりすでにオークがいたね」


 件についてオークの血を払いながらユビリスがそういった。


「みたいだな。それにしてもユビリス、だいぶ腕をあげたな」


 オークを瞬殺する腕、それはキルスが知っているユビリスの腕を大きく上回っていた。


「まぁ、僕もちゃんと訓練を続けていたからね。キルスは相変わらずみたいだけど」


 ユビリスがいう相変わらずは、キルスが成長していないというわけではなく、ユビリスは自分との差が想像出来ないほどに開いているということだ。


「いや、2人とも凄すぎよ」

「うんうん」

「普通なら、あんな風に出来ないと思う」


 キルス達の闘いとも呼べないような戦いを見た3人はそう感想を述べた。


「あははっ、僕はともかくキルスは別格だからね。それで、コルン、他にはオークはいるかな」

「えっと、まって……うん、まだ、向こうに気配がある」


 コルンがこのようにオークの気配を感じることができるのは、シーフ特有のスキルである探知スキルによるものだ。

 この世界にはスキルというものがある。これはエリエルが護人の世界において漫画などで使われるスキルに感銘を受けて、この世界で作ったものだ。

 このスキルは先天的に身に付けているものと、技術を磨くことで身に付けるもの、あとは特殊な方法により習得することができる。

 キルスも1つなんの役に立つのかわからないスキルを持っているが、今まで使ったことはない。


 とまぁ、そんな探知スキルだが、これは簡潔に言えば周囲に探知用の魔力を放つことで魔力を持つ存在、人間はもちろん魔物や動物の位置まで特定できる便利なスキルとなる。

 このスキルはシーフに取っては必須のスキルで、かつてキルスが出会ったシーフ志望の少女であるシャイナはもちろん、Dランク試験で出会ったボイデルも当然習得しているスキルであった。


 それから、キルス達はコルンが見つけたオークを素早く討伐した後、くまなく洞窟内を調査していったのであった。

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