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第28話 誘い

 Dランクに昇格したキルス。

 その日の夜は家族でお祝いの宴会を行い、大いに飲み食いをした。


 そして、次の日キルスはDランクの仕事をするためにさっそくギルドにやってきていた。


「どんな、依頼があるかな」


 これまでキルスがやって来たEランクの依頼のほとんどが、片手間に倒せるような弱い魔物の討伐や薬草などの採取系のものばかり。

 それに対して、Dランクとなると討伐の難易度は当然上がり、それに加えて運が良ければ臨時収入が見込める盗賊討伐や、実入りがいい護衛依頼などが増えてくる。

 ということでキルスはギルドに入るなりDランク用の掲示板を眺めていた。


「あまりないな」


 キルスは掲示板を長間ながらそうつぶやいた。

 それというのも、バイドルの冒険者はほとんどがDランクやその上のCランクとなるために、Dランク依頼は張り出されてもすぐに誰かが受けてしまうという事態となってしまう。


「残っているのは……」

「キルス」


 キルスが掲示板を眺めながら残りの依頼を確認していると、不意に後ろから声が聞こえた。


「んっ、ユビリス、ひさしぶりだな」


 キルスに声をかけてきたのは、キルスと同じくガイドルフから剣の教えを受け、10年前ドーラフが壁を抜けたとキルスに教えたことで、若干5歳にしてゴブリン討伐を果たしたきっかけを作った人物である。

 そんなユビリスだが、10年前は目立ったところはなかったが、この10年で大きく様変わりした。

 まず、剣の腕についてはあっという間にキルスが1番となっており、ドーラフが2番と落ちてから2年ほどでユビリスが突如才能に目覚めたかのように抜き去っていた。

 また、容姿も特に目立ったところがなかったが、これもまた今ではキルスが腹立たしくなるほどにイケメンとなっていた。


「久しぶり、聞いたよ、Dランクになったんだってね」


 ユビリスとキルスはやはり同じ師を持つだけあってその仲は良好であったので、お互いに気安く話せる相手である。


「情報が早いな。昨日の話だぞ」

「まぁ、僕にもいろいろと情報源があるしね。というかニーナさんからキルスが受験することは聞いていたからね」


 ユビリスとしてもキルスがDランクに昇格することは必然だった。


「なるほどな。それで、どうしたんだ急に?」


 キルスはなぜユビリスが突然声をかけてきたのかを尋ねた。


「ちょっとキルスにお願いがあってね」

「お願い? なんだ」


 それから、キルス達はいつまでも掲示板の前にいても邪魔だからという理由から、場所を酒場に移動してから話すことにした。


「それで、お願いっていうのは、一体何なんだ」

「ねぇ、ユビリス、その子にお願いするの」


 酒場に移動するとそこには3人の美少女であるユビリスのパーティー仲間が待っていた。

 そう、3人の美少女、ユビリスは現在その剣の腕とイケメンという容姿によりかなりモテていた。

 そのせいか、3人の美少女をメンバーに入れており多くの男性冒険者から、嫉妬の炎に燃やされてもおかしくないハーレムパーティーを形成していた。


「誰なの、その子」

「ユビリスの友達?」


 ユビリスは話の前に紹介が必要だろうと考え、まずはキルスを紹介した。


「うん、彼はキルスといって、僕と同じくガイドルフ先生の元で剣を学んだ1人だよ」

「へぇ、強いの?」

「もちろん、僕よりもずっと強いよ」

「えっ、ユビリスよりも、だって、ユビリスはBランクに匹敵する強さなんだよ。そのユビリスよりって、ありえないわよ」

「うん、うん」


 ユビリスの仲間の3人はユビリスの強さに絶大な信頼を寄せている。

 そのユビリスよりも強いと本人が認めたことが3人にとって信じられないことであった。


「確かに僕もだいぶ強くなったけど、キルスは別格だよ。何せ、わずか5歳の時、単独でゴブリンを討伐しているんだからね」

「えっ、ええっ」

「ゴブリンを!」

「ありえないよ」


 3人は一様に信じられなかった。それはそうだろう、5歳という年齢は幼い、その年ではどんな強者であってもまだ守られる存在だからだ。


「本当だよ。僕もその現場に居合わせたわけではないけれどね」

「そこに導いたのはユビリスだけどな」

「あははっ、僕もさすがにキルスがゴブリンを討伐してしまうなんて思わなかったけどね」


 それはそうだろう誰だって、あの時キルスがゴブリンを討伐してしまうなんて思ってもいなかった。

 それは、キルス当人も同じだった。


「でも、5歳の子供がどうやって」


 これには3人としても気になったようだ。


「さすがに、あの時は俺も剣を学び始めたばかりだからな。魔法を使ったんだ」

「魔法?」

「いやいや、それだって無理でしょ」


 魔法と聞いて3人はさらにそう思った。


「まぁ、そう思うのは無理もないけどね。キルスはなんていうかいろいろ、天才なんだ。おっと、それより、キルスこの3人を紹介するよ」


 いつまでもキルスの話をしていては本題に入れないと、ユビリスは適当なところで3人の紹介に移った。


「えっと、まずは彼女から」


 そういって、ユビリスは3人の紹介を始めた。

 まずは、最初にユビリスの左隣に座っていた魔法使いの少女、シレイ、次が右隣に座っているシーフの少女コルン、最後がキルスの隣に座る神官の少女リンナであった。


「それで、俺にお願いっていうのは何なんだ」


 3人の紹介と挨拶を終えたところでキルスは本題を尋ねた。


「それなんだけどね、実は僕たちこの依頼を受けようと思っているんだ」


 そういって、ユビリスが懐から取り出したのは、洞窟調査という依頼書だった。

 洞窟調査、それは以前盗賊や魔物が巣くっていた洞窟などを、定期的に調査しもし再び魔物や盗賊が巣くっていないかを調べる仕事だ。

 また、もし巣くっていても数が少なく討伐できるなら即座に討伐するというものだ。

 これは、結構重要な仕事で、もしこれを怠るといつのまにか増えていて周囲に被害が出てしまう、そしてこの手の依頼はDランク以上の冒険者パーティーに出されるものだ。


「洞窟調査か、まぁ、俺としては別に構わないぞ。さっき掲示板見たけどあまり残っていなかったしな」


 せっかくDランクに上がったのに依頼がないではどうしようもない。


「でも、なんでだ」


 すでに4人というパーティーを結成しているユビリスがなぜキルスという異分子を仲間に入れようとしているのか、キルスにはわからなかった。


「それなんだけど、実はこの依頼制限人数が5人なんだよね」


 依頼の中にはその難易度から人数が決められている。


「なるほど、確かに1人足りないな」

「そういうこと、そこでちょうどDランクに上がったキルスを見かけたからね。誘ってみたんだ。もちろん今回限りの臨時になると思うけどね」


 臨時のメンバーというのは、普通ならあまり歓迎できないことだろう。しかし、キルス自身、自分の力が特出していることは自覚しており、もしユビリス達とパーティーを組んだとしても弊害が出ることは間違いない。

 ユビリスもキルスとは長い付き合いのためにそのことをわかっているためにそういったのだった。


「わかっているさ」


 こうして、キルスのDランク昇格最初の依頼はユビリスのパーティーとともに洞窟調査に決まった。

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