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第25話 Dランク昇級試験~開始~

 試験当日、キルス達受験者は昨日の説明で言われた通り門の外に集まっていた。


 少し待っていると、昨日説明をしていたギルド職員が、ギルドの制服ではなくいざという時のために鎧を身にまとって現れた。


「よし、全員いるな、さっさと馬車に乗れ」


 ギルドがこの日の為に要した馬車に職員とともにキルス達も乗り込んでいった。


 そうして、馬車に揺られることしばし、キルス達はそれぞれの戦い方について話をしていた。


「へぇ、ということは、キルスは剣だけじゃなく、魔法も使えるってことか」

「ああ、そうなる」

「すごいね。剣と魔法の両方出来るって普通片方だよね」


 少女の1人である女剣士、名前をマイナが感心したようにそういった。

 マイナがいうように、数多くいる冒険者の中でも剣と魔法の両方を得意としているものは少ない。

 実際、マイナもそれから同じく剣士で、最初にキルスに声をかけた少年であるダンは剣のみであり、マイナの相方であるハンナは魔法のみであった。


「まぁ、俺の場合は親がそうだったからな、その戦闘訓練をうけたからこれが普通なんだよ」


 実際には勇者時代の名残だが、ちょうどレティアが同じスタイルだったことでそういうことにした。


「なるほどねぇ」

「それで、ハンナは魔法使いみたいだけど、どのくらい出来るんだ」


 キルスは、これ以上自分の話をしていても仕方ないと思いまずハンナに実力を聞いた。


「私は、あまり強い魔法は使えないかな。得意なのは風とか水ぐらいだし」


 キルス自身と母であるレティアが全属性の魔法を使えることからキルスは考えたことはないが、そもそも魔法使いにはそれぞれ得意属性が存在しており、その得意属性以外の魔法はほとんど使えないというのが当たり前となる。

 そして、その得意属性の数は一般的に2つということが多い。

 そう考えれば得意属性が2つであるハンナは一般的な魔法使いということである。

 ちなみに、キルスは前世での召喚の影響で膨大な魔力を持っているのでほとんど無尽蔵に魔法が使えるが、ハンナのような一般的な魔法使いでは風刃などの魔法であれば1日に5回から6回使用すれば魔力が尽きてしまう。


「魔力量もキルスほどはないから、数回しかできないわ」

「なるほどね。となると、あまり多用はしないほうがいいってことだよな」


 ここで、この5人のパーティの臨時リーダーを務めることとなったボイデルが言った。


「そうだな、そうしてくれると助かる」


 それから、マイナやダンの剣の実力の確認や、リーダーを務めることになったボイデルのシーフとしての実力などが話された。



 そんな話をしながら馬車に揺られること、本日の野営場所にたどり着いた。


「おし、今日はここまでとする、ボイデル」

「ああ、わかっている。それじゃ、俺とダン、それからキルスでテントを立てるから、ハンナとマイナは食事の準備を頼む」


 ボイデルは力仕事となるテント張りを男性陣、食事作りを女性陣に任せた。

 これは、別におかしなことではないので、キルス達も不満を訴えなかった。


 というわけで、それぞれが働きあっという間にテント2つと全員分の食事の用意ができた。


 それから、食事をして今度は見張りの順番を決めることになった。


「さてと、それじゃ、見張りの順番だが、まずは、ハンナ、それからマイナときて、俺、ダンがやって最後にキルスでどうだ」


 ボイデルの提案によると、まずは女性陣の特に魔法使いであるハンナにゆっくり休んでもらい、中途半端となってしまう時間に自分とダン、そしてこれまたゆっくりと休むことができる最後にキルスというものだった。

 これは、特に問題ない、魔法というものはそういった気づかない疲れなどから威力や精度が変化するものだからだ。


「いいんじゃないか、俺は構わないぞ」


 まずは、ダンが了承の声をあげた。


「あたしも、いいよ、ゆっくり休めるのはいいし」

「私も」

「俺もそれでいいぞ」


 ということでみんなが了承したことで見張りの順番が決まった。



 そうして、次の日キルス達は再び馬車に乗り込んでいた。


 それから、2時間ほど進んだ場所で馬車が止まった。


「ここだ。あそこに見えるだろう、あの洞窟に巣くっている。さて、後はお前らの考えで仕事に取りかかれ、俺は最悪の場合を除いて手も口も出さないからな」


 最悪の場合、それは誰かが命の危機にさらされた場合のみということだ。


「おう、わかった、それじゃ、作戦だが……」


 リーダーであるボイデルが作戦を伝える。


「見張りがいるな。キルス、ハンナ、お前たちの魔法で無力化してくれ、出来るか?」

「俺は問題ない」

「わ、私も」


 キルスはいつも通り、ハンナは緊張していた。


「そうしたら、俺が内部の確認に行ってくる。あとは、それからだな」

「了解」


 こうして、キルス達のDランク昇級試験は始まった。


 まず、キルスとハンナにより見張りを無力化、つまりは殺すところからだ。


「風よ、汝は鋭き槍なり、その槍にて我が敵を貫け 風槍」


 キルスとハンナは話し合った結果、風の槍、風槍をもって敵を貫くことになった。

 というのも、ハンナが一番得意な攻撃方法がこれだったからだ。

 その風の槍は、それぞれの敵にまっすぐに向かい、ついにはその敵を貫いた。


「よし」

「ふぅ」


 キルスはちゃんと殺せたことを確認し、ハンナは初めて人を殺したことで少し青ざめつつ息を吐いた。


「大丈夫?」


 そんな相棒の様子に心配になったマイナが尋ねた。


「う、うん、大丈夫」

「それじゃ、次は俺だな、ちょっと待っていてくれ」


 それから、今度はボイデルが内部へ向けて走り出した。

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