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第24話 Dランク昇級試験~説明~

 ニーナから昇級試験の話を受けてから翌日。


 キルスは昨日ニーナに言われた通り、朝10時にギルドへとやって来た。


「ああ、キー君、おはよう、説明は2階の会議室でやるから上がって」

「おはよう、ニーナ姉さん、わかったよ、2階だね」


 それからキルスは2階の会議室へと向かった。


 キルスが中に入ると、そこには、2人の少年が椅子に座っていた。


「ん、お前も昇級試験か?」

「まぁな、キルスだ」


 キルスが入ってきたことで、少年の1人が訝しむようにキルスを見てきた。

 というのも、Dランク昇級試験は冒険者となって2ヵ月以上という規定があるが、本当に2ヵ月で受けるものは少ない。

 まして、この少年はすでに2年の歳月がたっており、明らかに自分よりも幼いキルスが自分と同じ試験を受けることに不満があった。


「へぇ、ずいぶんと早いんだな。期間は?」


 もう一人の少年もまたキルスが冒険者となってどのくらいの期間かが気になったようだ。


「2ヵ月ぐらいかな」


 キルスとしても特に隠すことでもないので正直に話した。

 しかし、その答えは2人を更なる驚愕にいざなっていた。


「2ヵ月って、まじかよ」

「ありえないだろ……んっ、ちょっとまて、お前、確かキルスって」

「そうだけど」

「何か知っているのか」

「ほら、登録試験で元Bランクのゲイルクを瞬殺したっていう新人の話、覚えていないか」


 やはり元とはいえBランクの冒険者を倒したという話は有名となっていたようだ。


「ああ、あったな、でもあれって、ほんとか、かなり眉唾って話だったじゃねぇか」

「ほんとだって、見てたやつから聞いたんだからな。というか、そのキルスが目の前にいるじゃねぇか」

「確かにそうだがなぁ」

「というわけで、キルス、ほんとのところどうなんだ」


 少年2人で言い合っていたが、件のキルス本人がいるのだから聞けば早いと、それまで静観していたキルスに尋ねた。


「本当だよ。といっても瞬殺じゃなくて、ある程度は闘ったけどな」


 あっさりと応えたキルスにこれは真実に違いないと2人は思い、改めてその力に感嘆した。


「すげぇ、まじかよ」

「確かに脅威だよな」


 そんな話をしていると、まだ来ていなかった残りの受験者が入ってきた。


「あれ、、もしかして、私たちが最後」


 入ってきたのは2人の少女だった。


「そうみたいだね。確か全部で5人って言ってたし」


 人数についてはキルスもニーナから聞いていた。

 そうして、受験者全員が集まったところで再び扉が開けられた。

 入ってきたのは、1人のギルド職員だった。


「全員いるな。それでは昇級試験の説明を始める」


 それから、ギルド職員による説明が始まったようだが、その内容はキルスが事前にレティアから聞かされていたものと同じで、盗賊退治。

 それというのも、Dランク以上となると護衛や遠出する依頼が増えてくる、その際盗賊と出会い闘うということも当然ある。

 その時に人間相手だから闘えない、もしくは殺せないでは話にならない。

 そこでその適性があるかというのを見るのがこのDランク昇級試験となる。

 ちなみに、この人を殺すという行為は当然そうできるものではなく、ここまで頑張ってきた冒険者の中でもこれができず、Dランク以上に上がれなかったものはそれなりにいるということだ。

 この問題に対して、キルスは大丈夫かというと、これは問題ない。

 というのも、キルスは前世で人を殺したことがあるからだった。それも数人というレベルではないほどだった。

 無論、それを行ったのは日本にいる時では当然ない。日本にいたときはごくごく普通の青年だったからだ。

 つまり、人を殺したのは勇者時代となる。

 勇者時代、魔王が人型であるということから、ハエリンカン王国はキルスに盗賊などの討伐を命じた。

 もちろんキルスいや、護人は最初吐きそうになった。

 それでも護人は日本にいたときから、戦場カメラマンなどのような人が戦争に巻き込まれて命を落としたというニュースを聞いても、その中に直接ではないにしても知っている人がいたとしても特に思うことはなかった。

 それはやはり戦場という人が当たり前に命を落としてしまう場所に、そういう場所であるとわかったうえに行くわけだから、当然その覚悟を持っているはずだからだ。

 それと同様に格闘技の試合などで打ち所が悪く命を落とすということについても、同じように考えていた。

 それというのも、格闘技というものは元々闘う術から派生したものであり、端的に言えば人を殺す為のものだという考えがあるからだった。

 もちろんこれらは護人が少し変わり者という、謂れがあったことによる考えであることは言うまでもないだろう。

 そういった考えを持っていたからこそ、日本人としての記憶を持ち人を殺してはだめだという教育をしっかりと受けていても、護人は勇者時代に盗賊を討伐できたのだった。


「……以上となる。何か質問はあるか」


 大体の説明を終わり、ギルド職員は受験者たちに聞いた。


「今回の盗賊は皆殺しってことですか」


 少女の1人が少し青ざめながらそう聞いた。


「そうなる。本来盗賊の場合、殺すか捕らえるかということになり、捕らえた場合奴隷として売ることになるわけだが、そもそも今回は人と闘い、殺せるかを見るわけだからな、生かす必要はない」


 ギルド職員はそう告げたのだった。


「それはわかったけどよ、問題は盗賊の宝はどうするんだ」


 少年の1人が尋ねた。


「それについてはお前らがそれぞれ決めて構わない、ギルドは感知しない」


 つまりは、キルス達受験者での山分けとなる。


「なるほどな」


 少年2人は嬉しそうにしてにやけている。


「あんたたち……」


 少女2人はそんな2人に少しあきれた。


「他に質問はあるか……なければこれで説明を終える」


 その後特に質問はなかったので昇級試験の説明は終了し明日の本番に向けての準備のために解散したのだった。

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