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第215話 港町オレイスへ

 帝国からの先の戦争においての賠償とスタンピードを収めた褒賞として、オレイスを送られたキルスは馬車でオレイスに向かっていた。

 なぜ、馬車かというとこれはメリッサやサリーナから領主としてそれなりに権威を示すために馬車で向かうようにと言われたからであった。


「たまには馬車ってのも悪くないな」

「キルスはいつもシルヴァーにまたがっての移動だからね」

「わたくしとしてはそれはそれで、うらやましい限りですわ」

「……」


 馬車の中にはキルスをはじめとして、オルクとラナそしてサリーナとその従者のオリエが乗っていた。


「領主様方、まもなく見えてきますぜ」


 御者が馬車の中にいるキルスたちに、もうすぐオレイスが見えてくると声をかける。


「おっ、ほんとだな」

「これは、潮のにおいかな」

「そうですわ。わたくし海は初めて見るので楽しみですわ」

「……」


 キルスたちが馬車の窓から外を見てみると、オレイスの防壁が見えてきた。


「ラナさん、どうしたの?」

「馬車酔い?」


 先ほどから、一言もしゃべらないラナを心配してオルクが声をかけ、キルスが馬車によったのかと気にかけた。


「う、ううん、そうじゃなくて、ちょっと不安で」

「ああ、うん、そうだね。確かに僕も不安だよ。僕に代官なんて務まるのかなってね」

「まぁ、それは俺も同じだって、ていうかメリッサが居なかったら俺だって無理だよ。兄さんにもメリッサみたいに家令をつけてもらうように宰相に頼んであるから」

「そ、それはそうだけど、大丈夫かしら」

「もしかして、住人の反発が心配?」

「う、うん、オルスタンでも最初のころはすごく反発されていたでしょ。あの時はキルス君たちがいたけど安心できたけど」

「はははっ、そうだね。僕はキルスほどの力はないからね」


 そう、今回オルクがキルスに同行してオレイスへ向かっているのはオルクにオレイスの代官を務めてもらうためであった。

 というのも、キリエルン王国において代官を務めるのは、領主が信用できる部下か家族と決まっている。

 そこで、キルスの兄であるオルクに白羽の矢が立ったのである。

 その理由は家族の中で代官を任せられる人物がオルクしかいなかったというのもあるが。

 それはそうだろう、ファルコとレティアはいまだバイドルで食堂を経営しているし、弟妹たちに至ってはまだ幼い、長女のエミルはE&R商会の会長、祖父母もそれぞれやることがあるために、オルクしか開いていなかったのだ。

 もちろん、オルクを選んだ理由はそれだけではなく、やはりその人当たりの良さと料理の腕、何より絶世の美女と言われるレティアの長男にしてそのそっくりな顔だろう。


「兄さんだって、それなりに強いだろ」

「そうだけど、僕は実戦経験がないからね」


 どこまでも謙虚なオルクであった。


「そうかな。まぁ、何にせよ住人と戦うことなんてそうそう起きないと思うけどね。それに、兄さんの料理があれば、きっと住人たちもすぐに受け入れてくれるって」

「そうだといいけどね」

「ええ、きっとそうなりますわ。それに、微力ながらわたくしも協力をさせていただきますわ。そのために、わたくしこうして来たのですから」


 サリーナがついてきた理由がこれであった。

 オレイスは帝国が賠償と褒賞でキルスに与えた街のため、それを帝国皇女たるサリーナが自ら民に対して証明することで反発を抑える必要があった。


「は、はい、ありがとうございます」


 思わずサリーナからも声をかけられたことで、ラナは恐縮しながらお礼を述べたのだった。



「とまれ!」


 オレイスの門までたどり着いたキルスたちの前に、お互いの槍を十字に構えた道を塞いだ。


「何者だ。身分証を出せ!」


 なんとも高圧的な態度でそう言ってきた。


「ひっ」


 御者は筒全のことに悲鳴を上げている。

 これは仕方ない、御者はオルスタンに住む一般人だからだ。


「俺はこの街の領主になったキルス・ド・オルステンだ。通してもらうぞ」


 キルスは己の名を告げて、通してもらうことをいうが、当然そんなことで通してはくれなかった。


「なんだとっ、この街の領主様はオリアント様だ。貴様のようなガキではない。怪しい奴め成敗してくれる」


 そう言って構えていた槍をキルスに向けた。


「おやめなさい!」


 とそこにサリーナが馬車から降りて兵士たちを止めた。


「なんだ娘、邪魔をするか」


 彼らは平民でありただの兵士ということで、皇女たるサリーナの顔を知らない。


「無礼者、このお方はバラエスト帝国第二皇女サリーナ・エリアント・ゲイル・トッテン・バラエスト様であるぞ。控えよ」


 サリーナへ槍を構えたのを見たオリエが、素早く懐から紋章の刻まれたネックレスを取り出し兵士たちに見せた。

 さすがに、帝国皇帝家の紋章は知っていることもあり、それを見た後震えながらもう一度サリーナを見てから震えながら跪いた。


(……時代劇かよ)


 その光景を見たキルスは思わず、日本人なら誰でも知っているあの名時代劇の名シーンを思い出していた。


「通達が行っているはずです。この地を治しオリアントはすでに亡き者、先の戦争の賠償としてここにいるキルス殿に譲り渡すと、聞いていませんでしたか?」


 サリーナは冷たくそういった。

 それを聞いた兵士たちの顔はまさに血の気が引いていた。

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