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第203話 スタンピード

いまさらながら、よく誤字脱字が多いと乾燥で書かれていますが、一応徐々に見直そうと思いつつも結局ついつい忘れてまったくできていません。

申し訳ありません。

 スタンピード、それは魔物がその地域に一定数集まると起きる一種の災害だ。

 これが起こると、必ずといっていいほど近くの街や村などの人が集まる場所にやって来ては、そこの住人を蹂躙していく。

 これを防ぐには、適度に地域の魔物を間引くこと。

 これを担っているのが冒険者である。

 だからこそ、冒険者ギルドというものはどの街には必ず存在している。

 その結果、スタンピードは起こらない災害とされてきた。

 しかし、今回のようにギルドが間引きをさぼった場合、えてして起きうることとなる。


「こうして見てみると、ある意味で壮観だな」


 キルスはスタンピードの規模を確認するためにシルヴァーにまたがり上空から眼下に広がる魔物の集団を眺めていた。

 なぜ、領主自ら偵察をしているのかというと、シルヴァーにまたがれば上空から客観的に眺めることができるからだ。


「さて、大体わかったし、そろそろ戻るか」

「アウン」


 それからキルスとシルヴァーは地上に待機している冒険者と警備隊、騎士団の元へと戻ったのだった。


「どうだ、キルス?」


 降りてきたキルスに対して、冒険者の指揮をするコルスと警備隊と騎士団を指揮することとなったフェブロが尋ねた。


「結構な規模だな。数としてはざっとだけど、3400ぐらいだな。種類としては、様々としか言いようがないな」


 スタンピードで集まる魔物は一種類ということはまずなく様々な魔物が一堂に会して暴走すると言われている。


「そうか、聞いたな」

「はい」


 キルスの報告を聞いたフェブロは隣にいたゾンタスに国軍大佐の顔で言った。

 ゾンタスも兄からフェブロのことは聞いていたこともあり、素直に敬礼をして答える。


「ほんとに厄介なことだ。数も多い、いくらシルヴァーがいるかといってもかなりきつい戦いとなるだろうな」

「そうね。気を引き締める必要があるわね」


 コルスとレーラもまた、気合を入れる。


「魔物は、主に鶴翼の陣形になってる」


 暴走する魔物に陣形などないが、我先にと押し寄せてきていることからこの陣形に近いものとなっていた。


「俺とシルヴァーで中央をやるから、左翼は冒険者、右翼は警備隊と騎士団で頼む」

「それぞれ数は?」

「中央が2000、左翼と右翼がそれぞれ700あまりだな」

「2000か、キルスとシルヴァーで大丈夫か?」

「まぁ、大丈夫だろ。それに俺とシルヴァーが暴れるとなると、周囲に誰もいないほうがいいしな」


 シルヴァーの本来の姿は山と同等、そしてキルスは極大魔法を放つことができる。

 そんな1人と1体が暴れれば当然周囲にいる仲間まで巻き込んでしまう恐れがあるのだった。


「まぁ、それはそうだろうな。だが、無茶はするんじゃないぞ」

「わかってる。そっちこそ年を考えてくれよ」


 キルスの祖父たちはそれぞれかなりの強さを持ち、若いときはキリエルン王国でも有数の実力者であった。

 だが、この2人は孫を持つ祖父、その年齢はすでに60を超えている。

 若いときと同じように戦えば無理が生じていしまうのだった。


「わかっている。まぁ、俺は指揮に徹するし、レーラもその補佐を任せるつもりだ」

「わしもそのつもりだ」

「そうか、なら安心だな」

「ああ、大佐殿はわたしに任せてくれ」

「そうね。こっちも私が何とかするから大丈夫よ」


 コルスとフェブロがそういうと、ゾンタスとレティアがそういったのだった。


「さて、それじゃ、そろそろ位置に着いたほうがよさそうだな」

「そうだな」


 そうして、キルスとシルヴァーを残してそれぞれ左右に別れていったのだった。



 それから、数分後キルスたちオルスタン勢の前に大量の魔物がその姿を表した。

 あるものは緊張し、あるものは戦慄した。


「来たな。それじゃ、まずは一発お見舞いするとするか」


 今回の作戦において、まずキルスが極大魔法を敵に向かって放つこととなっていた。

 そこで、キルスは愛剣エスプリートを抜き放ち、敵に向かって意識を手中させる。


『アイス・メテオレイン!!』


 詠唱破棄スキルを持つキルスは長々とした詠唱を言わずに、魔法名を叫んだ。

 すると、キルスの上空に大きな氷の塊が複数出現した。

 その数およそ100、それが一気に敵に降り注いだ。


 これを見た者たちは驚愕した。

 というのも、まずキルスが使った魔法アイス・メテオレインというのは、炎系最強呪文である複数の隕石を落とすメテオレイン。

 そもそも、このメテオレインすら、扱えるものがほとんどいないといわれている高度な魔法となる。

 それだけならまだしも、キルスはこれに氷魔法という水と風の複合魔法を組み合わせた。

 これは、人が扱える魔法としては超々高難度の魔法であり、扱える者は人類史上を見てもほとんどいないとされている幻の魔法といわれている。

 それを、キルスはなんてことないように行使したのだから、これを驚くなというほうがおかしい。

 尤も、これをキルスが行使できるようになったのは、超大な魔力を持ち、詠唱破棄スキルを獲得したことで実現できたのだった。

 また、ここでキルスがこの魔法を選んだ理由は、魔物を多く倒したいという思いとは別に、自身の力を領民たちに知らせるためであった。


「よし、これでだいぶ減ったな」

「バウ」


 キルスの言った通り、アイス・メテオレインを受けた魔物だが、まともに直撃を受けたものは氷に貫かれて絶命し氷漬けになり、周囲にいたものも巻き込まれて一緒に氷漬けとなった。

 それが、あちこちで発生したことで敵の数はすでに1/4が減じたのだった。

 とはいえ、まだ数は2500はいる。

 あとはこれらを殲滅するだけであった。


「かかれー!!!!!」



 その時、左右からそれぞれコルスとフェブロにより号令が発せられた。

 そうして、始まったスタンピードを起こした魔物の群れと、キルスたちオルスタン勢の戦い、いや、戦争である。


 左右が動く中、中央のキルスとシルヴァーもまた素早く動き出していた。

 そして、接敵するとすぐに一閃、また一閃、そのたびに魔物が斬り伏せられていく。

 そんな中央の様子を遠目で見た冒険者と警備兵はというと、まさに一瞬何が起きたかわからないほどだった。


「す、すげぇ」

「な、なんだよ。あの強さ」

「し、信じられねぇ」


 口々に戦慄の言葉を述べるのだった。


 もちろん彼らもただ黙ってキルスの戦いや、冒険者とともに剣を振り回すレティアと、警備隊とともに剣を振るファルコを見ているわけではなく。

 彼らもまた、己の故郷を守るために奮闘するのだった。


 その結果、未曽有の危機とされたスタンピードは文字通り殲滅されたのだった。

 そして、このことをきっかけにキルスのことは認められたのだった。

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