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第199話 デモンストレーション

 エミルと玲奈による美容品製造販売商会、E&R商会を立ち上げることとなった。


「では、さっそく手続きをいたしましょう、こちらはわたくしのほうで進めておきます」

「あっ、ありがとうございます」

「よろしくお願いします」


 メリッサが商会立ち上げの手続きをしてくれるというので、エミルたちはほっとしながら感謝の言葉を述べた。


「いえ、では失礼します」


 そう言ってメリッサは自分にあてがわれた執務室へと向かっていっただった。


 それから、キルスとエミル、玲奈によって具体的な話が行われたのだった。


「それで、デモやるんだよね。具体的にはどうやんの?」

「そうだなぁ」

「ねぇ、そのデモってなに?」


 玲奈とキルスがどのようにデモを行うのかを話し合おうとしたところで、デモの意味が分からないエミルが2人に尋ねた。


「デモっていうのは、向こうの言葉でデモンストレーションっていう言葉の略なんだ」

「デモンストレーション?」

「なんていうのかな、要は試しにやってみるってことなんですけど」

「簡単に言えば、実際に姉さんが作った石鹸とか、玲奈が作った美容品を街の人たちに試してもらうってことだよ」

「ああ、なるほど、いいわねそれ」

「だろ、これをやれば商会で働きたいって人が結構出てくると思うんだよな」

「うんうん、間違いないよね」

「そうね」


 そんなわけで、キルスたちは実演のデモを行うことになった。



 そうして、翌日街の女性たちを集めることにした。

 デモの会場として領主屋敷になぜか設置されていた謁見の間を使用することとなった。


「ほんと、なんで貴族がこんなもの持っていたんだ」

「帝国では、貴族でも持つことが許可されているそうです」


 そんなキルスの呆れの言葉を聞きながら集まった女性たちを見つめているメリッサであった。

 中には、キルスに対して敵対的な表情を見せている人物もいるためにメリッサのこの行動は仕方ないことだった。


「キルス、そろそろ準備できたよ」

「おう」


 玲奈に言われてキルスは一歩前に出て、集まった女性たちを一瞥した。

 そんなキルスを見た女性たちは口々に何かを話しているが、キルスには何を話しているのかわからない。


「聞いてくれ、今日集まってもらった理由を説明する」


 キルスは声を張り上げて女性たちにそういったところ、集められた理由が聞けるからか女性たちは一旦静かになった。

 尤も静かになるのに多少時間がかかったがキルスは根気よく待った。


「……それじゃ、説明するぞ。昨日俺の姉であるエミルと友人の玲奈により商会を立ち上げた。商会名はE&R、意味は単純にエミルと玲奈ってことだ」

「それがどうしたっていうのよ!」


 キルスが商会について話始めると、女性の1人がそういった。


「まぁ、聞いてくれ、その商会で扱う商品は石鹸ほか美容品と考えている」

「セッケン? ビヨウヒン? なによそれ?」


 石鹸は王国で生まれた商品であるために、帝国では知られていないものだった。

 それじゃ帝国人はどうやって体などを洗っているのかというと、それは簡単にキルスたちも幼いころに使っていたムイレスの実を使っている。


「石鹸というのは、ムイレスの実と同じようにものを洗うものだ。まぁ、実際に使ってみるのが一番わかりやすいだろうからな。姉さん」

「ええ、任せて、えっと、それじゃ、そこの方こちらに来ていただけますか?」


 エミルはキルスからバトンをもらうと、先ほど声を上げた女性に声をかけて前に出るように言った。


「わたし? 一体なんなのよ」


 文句を言いつつも女性は前に出てきた。


「それじゃ、俺がここにいるのもなんだし、あとは任せるよ」

「ええ、任せて」

「それじゃ、あとでね」


 キルスはそう言って謁見の間を出ていった。


「ちょっと、あの人どこに行くの?」


 退席したキルスを訝しむように女性がエミルに尋ねた。


「これからは女性の話のなりますから、弟に遠慮してもらったんです。さぁ、どうぞ、こちらに」

「え、ええ」


 女性も特にキルスにいてほしいわけでもないためにすぐに切り替えて、エミルのいう通りの場所に座った。


「えっと、まずお名前を聞いても?」

「え、ええ、ミリアルよ」

「それじゃ、ミリアルさんには実際に石鹸を使ってもらいます」

「セッケンを、大丈夫なの」

「はい、あたしも一緒にやりますから、大丈夫ですよ」


 そう言って、玲奈もまたミリアルの隣に座った。


「まずは、このヘアバンドを頭につけます」

「これ?」


 ミリアルはなんだろうと思いながらも言われた通りヘアバンドを頭につけた。

 ここで、疑わないのは当然玲奈が同じことをしているからである。


「えっと、それでこれが石鹸です。においを嗅いでみてください」

「におい? へぇ、いい香りね」


 ためらいながらもそのにおいを嗅いでいいにおいがしたことに感心したミリアルであった。


「これには香油というものを混ぜてあるんで、すごくいい香りがするんですよ」


 それから、石鹸の使い方などを説明しつつ、実際に玲奈が泡立てた石鹸で顔を洗い始める。

 すると、続いてミリアルもまた顔を洗い始めた。

 それを見ていたほかの女性たちは固唾を飲んで見守っている。


「どうですか?」

「えっ、うん、ちょっとすっきりしたような気がするけど、よくわからないわ」

「それじゃ、鏡を見てください」


 そう言われて、鏡を見たミリアルは絶句、余談だが集まっていた女性たちはミリアルが顔を上げた瞬間に絶句していた。


「……うそっ、でしょ」

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