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第196話 とにかく金策

 メリッサにより、執務室に散乱していた書類の確認が行われた。

 それにより、オルスタンは現在多額の借金が存在していることが分かった。

 借金自体は逃げた帝国の領主のものであり、キルスには関係のないものではあるが、問題はその担保として街が入れられていたということだろう。

 このままでは、せっかく領主となったキルスではあるが早々に債権者たちに街を奪われてしまうという。

 これにはキルスも開いた口がふさがらなくなったのは言うまでもないだろう。

 そこで、何とかして借金を返し街を取り戻す必要があった。


 そんな話をしているとそこにエミルがやって来て、孤児たちを屋根の下で眠らせてあげたいという願いがあった。

 キルスはもちろんのことメリッサも子供は好きなので、これを聞いて何とかしてやりたいと考えた。

 そこで、キルスは一時的にこの無駄に広い領主屋敷を使ってはどうだろうかと提案した。

 本来であれば、領主の屋敷に孤児を受け入れるなんてことは許容できることではないが、ほかにない以上仕方ないと、受け入れることを決断した。


「とりあえず、これで孤児はいいとして、やっぱり金だよなぁ」

「そうね。キルスはどのぐらい持っているの」

「そうだなぁ。確か白金貨が2枚と大金貨が6枚、あとは金貨が30枚ぐらいだったと思う」

「……」

「……ずいぶんとあるのね」


 キルスの全財産を聞きメリッサは絶句、エミルは何とか起動したものの衝撃を受けていた。


「ほら、エンシェントドラゴンの素材を陛下に売ったから、それでだよ。あとは報酬とかかな」


 実はキルスがマジックストレージを持っていることや、エンシェントドラゴンの全身を持っていることを聞いた国王の懇願により、そのすべてを売ったのだった。


「え、エンシェントドラゴン、ですか?」

「ああ、前にダンジョンに迷い込んだ時に遭遇して……」


 キルスはメリッサにエンシェントドラゴンと遭遇した件を話したのだった。


「……そのようなことがあったのですね。すごいです」


 メリッサはキルスがドラゴンと遭遇したということでも驚いたが、それを討伐したと聞きさらに驚愕したのだった。


「あの時は、気が気じゃなかったわね。ほんとに」

「はははっ」


 キルスはもはや笑うしかなかった。


「でも、それだけあれば借金はなくなるんじゃないですか?」


 ここでエミルがメリッサに借金を返済できるのでは尋ねた。


「はい、まだ総額はわかりませんがおそらくそれだけあれば問題ないかと」


 その後、メリッサにより借金の洗い出しが行われて、支払われることとなったがその額は思っていたよりも多く、キルスの全財産を支払ってもなお若干足が出て、屋敷内に残されていた美術品を売ることでようやく返済が終わったのであった。



「……思ったよりも多かったんだな」

「はい、ですが、この金額は帝国への賠償金として上乗せすることができます」


 今回返済した借金はもともと帝国の領主が負ったものであるから、帝国へ請求できるという。


「となると、これは早めに陛下に知らせておいたほうがいいか」

「はい」

「わかった、あとで手紙出しておくよ」

「お願いいたします」

「終わった?」


 話が一段落したところで、一旦執務室を出ていたエミルが再びやって来てキルスに尋ねた。


「まぁ、何とか一段落ってとこ」

「そう、だったらまずはメリッサさんにお部屋を案内しなきゃ」


 メリッサが借金について調べている間に、キルスはエミルに頼み屋敷内にメリッサの部屋の用意を頼んでいた。


「ありがとう存じます」

「いえ、弟がお世話になるんですから当然です。さぁ、どうぞ」

「はい、それでは旦那様、失礼いたします」

「んっ、あ、ああ」


 旦那様というのはキルスのことだで、メリッサにとってキルスは使える主ということでこう呼ぶこととなった。

 もちろん、キルスは抵抗した。

 しかし、受け入れてもらえなかったのだった。


 2人を見送ったキルスは国王に先ほどの借金に対する話を手紙にしたためて、マジックストレージに納めたのだった。

 それからしばらくして、国王からの返事を受けるころには、日も傾き夕方となってきた。


「兄さん、急にすみませんでした」

「師匠、ありがとうございました」

「おう、お前らもがんばれよ。それとラナ、オルクを支えてやれよ」

「う、うん、お父さんも体に気を付けてよね」

「おうよ」


 キルスは現在手伝いに来ていたトルレイジ亭の面々の見送りをしていた。

 トルレイジ亭は本日臨時休業していたが、明日は普通に開店することにしている。

 そこで、明日の仕込みなどもあるために、トルレイジ亭の面々はバイエルンに帰ることとなった。

 ちなみに、トルレイジ亭の面々をバイエルンに送るのは玲奈である。


 そうして、夜はメリッサの歓迎会が行われて、メリッサも恐縮しながらも歓迎会を楽しんだのだった。


 そして、翌日。


 キルスは朝からメリッサとともにオルスタンの街を歩いていた。


「これはまた、ずいぶんと荒れてんな」

「はい、あちらも修繕が必要となりましょう」

「だよなぁ」


 キルスが街に出ている理由は、メリッサに街を案内ではなく、修繕依頼があった箇所の視察である。

 こうして、大体の場所を見て回ったキルスとメリッサは、執務室にて頭を抱えていた。


「思っていたよりも、ひどいな。特に防壁はボロボロだし」

「はい、修繕費を考えますと予想よりもかかるかと」

「そうなんだよな。となると、何か金策を考える必要があるな」

「はい」


 借金の返済に関しては、昨日のうちに国王からの返事にて、一旦キルスが支払ったのち王国が補填してくれることとなった。

 そのため、キルスが持つ全財産は街の発展などに使うことはできるが、1人の持つ財産だけではさすがに足りない。

 そこで、何かほかにも金策を考える必要があったのだった。

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