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第188話 オルスタンの現状

 急遽集められたキルスの一族。

 そこで話されたのはキルスが突如男爵位を授かったということ。

 これには一族全員が驚愕した。

 また、何より驚いたのがキルスの祖父、コルスとフェブロの両名の父親が貴族家の出身であったことだろう。

 それも、侯爵と辺境伯であり、キリエルン王国においても発言力のある大物貴族だったことだ。


「……なんにせよ。キルスが男爵を賜ったのは事実、なら今後の話をしなければならん」


 衝撃の事実からなんとか起動したフェブロがそういった。


「そ、そうだな。それでキルス、オルスタンの状況はわかっているのか?」


 コルスがキルスにオルスタンの現状を聞いた。


「ああ、といっても俺はオルスタン攻めには参加していないし、直後に王都に転移してるから、話だけだけどね」

「話してくれ」

「わかった」


 それから、キルスは家族にオルスタンの現状を説明していった。


「そうだなぁ。えっと、まずは俺たちが攻め込んだ際のことだけど、その時にはすでに領主を含む街の上層部の人間はみんなさっさと街を逃げ出していたらしいんだ」

「どういうことだ?」


 フェブロがちょっと腹立たし気に言った。

 領主などが街を捨てて逃げる、普通ならありえないことだからだ。


「さぁ、俺にも良くは分からないけど、でも実際指揮官がいなかったから、街もあっさりと落とせたんだよな」


 指揮するものがおらず、まとまりがほとんどなかったことでキルスとシルヴァーなくしてすぐに陥落させることができたのであった。


「帝国軍はどうしたのだ」

「軍は軍で素通りしてあっさりと見捨てたそうだよ」


 帝国軍は王国軍から敗走しオルスタンに入った。だからこそ王国軍はオルスタンを攻めたわけだ。

 だが、実際に攻め込んだところ、肝心な帝国軍は逃げ出していた。


「帝国にとっては重要な街じゃなかったの?」


 先ほどの話の中でオルスタンが帝国にとって、重要な拠点であるという話を覚えていたキレルがキルスに尋ねた。


「そのはずなんだけどな。でもまぁ、こっちにはシルヴァーもいたし、奴らは魔獣軍団で街を落としているからな。だから、街にこもっても無駄だってわかっていたんじゃないか」


 キルスの考えは真実であり、実際街に逃げ込んだ帝国軍はシルヴァーを恐れオルスタンを放棄したのだった。

 そして、しんがりを任されたオルスタンの領主もまた、軍からの報告で知ったシルヴァーの存在に恐れをなして逃げ出したのだった。


「なんということだ。軍が民を見捨てて逃げ出すなど」


 フェブロは怒り心頭だった。

 フェブロは元王国軍兵士、軍人だったがゆえに帝国軍が民を見捨てて逃げ出したことに怒っているのだった。


「ああ、まったくだ。それで、キルス街の様子はどうなんだ」


 コルスがフェブロに同意しつつキルスに街の様子を尋ねた。


「あまり、というか最悪だな。まず、帝国軍が逃げる際に街から食糧とかをかなり持って行ったらしい、それだけでも最悪だっていうのに、領主が逃げ出す時も残りの食糧はおろか貴金属や金も持っていかれたらしい、おかげで、住人は飢えかけているって話だよ」

「なに!!」

「何ですって!!」


 これには家族全員が腹を立てた。

 食糧を奪われる。それは生きるなと言われているようなものだからだ。


「一応、今は王国軍が持ち込んだ食糧、保存食ばかりだけど、それを提供しているらしいんだけどな」

「当然じゃな」

「そうだね」


 フェブロに続いてファルコがうなずきながらそう言った。


「でも、帝国って、帝国人以外は蛮族って教育しているみたいで、蛮族からの施しは受けないって言って、食べようとしないらしいんだよ」

「そ、それはまた、難儀だね」

「ええ、それじゃ、みんなおなかすかせているんじゃない」

「みたい、だから、俺も急ぐ必要があるんだよ」


 キルスが急遽家族を全員集めた理由がこれだった。


「ほかにもいろいろあって、みんなに協力してほしいんだ」

「もちろんそれは構わんが、何をするんじゃ」

「そうだなぁ。まずはさっきも言った通り、街の人たちは飢えかけているのにこっちが出したものを食べようともしないらしいから、父さんと兄さんに料理を作ってもらうってとこか」


 王国軍が提供しているのは保存食、それほどうまいとは思わないものだ。

 だからこそ、彼らも拒否できるが、ファルコとオルクの2人がその場で料理して提供すれば、その匂いにつられて食べるかも知れないとキルスは思ったのだった。


「なるほど、臭いで釣るわけか、わかったよ。僕たちに任せて」


 オルクが力いっぱいの返事をして、ファルコもそれにうなずいていたことで了承したのだった。


「それと、実は逃げ出した街の上層部の中には、警備隊の隊長や冒険者ギルドのギルマスなんかもいるらしくて、ともにまとめる人間がいないんだよ」

「なんじゃと!」

「ギルマスまで!!」


 これにはやはりというべきか、フェブロとコルスが激怒した。

 なにせ、警備隊の隊長と冒険者のギルドのギルマスといえば、街の治安を守る責任者と荒くれ物の冒険者たちをまとめあげる存在なのだから当然だろう。


「だから、じいちゃんたちにはそれぞれ警備隊とギルドをまとめてほしいんだ。一応今は俺の代わりに在留している王国軍がやっているらしいけれど、やっぱりいろいろ難しいらしい」


 帝国人であるオルスタンの住人にとっては王国軍兵士も騎士も蛮族に過ぎない、そんな連中の指示など聞くはずがないのだった。

 それに対して、フェブロは元国軍の兵士とはいえ、鬼といわれた男、そしてコルスは元は名のある冒険者にして、元トーライドのギルマスで2人に任せればまとめあげるのは用意だろうと考えた。


「うむ、任せなさい」

「ああ、任せろ、キルス」

「私も協力するわ」


 コルスの妻であるレーラも協力を約束した。


「あとは、現地でいろいろやることがあると思う」


 それから、いろいろ話し合った結果、翌日キルスたちはオルスタンに向かうことになった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 褒賞が罰ゲーって、 王様、キチク! って叫びたいよね。 [気になる点] 国からの支援はなんじゃろか? [一言] これ、王女を降嫁させるための布石なのでは?
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