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第181話 魔獣軍団vs魔狼王

「へぇ、フェンリルって、思っていたよりかわいいのね」


 そんなことを言いながら、女性冒険者がシルヴァーを撫でていた。


「お、おい、大丈夫なのか?」


 一方で、男性冒険者はそんな女性冒険者の暴挙ともとれる行動に戦慄していた。


「ああ、大丈夫だ。シルヴァーは普段俺の家族とも遊んでいるしな。ああ、その家族だがまだ一桁だぞ」

「まじかよ」

「さすが、って感じだな」


 キルスの幼い弟妹達がシルヴァーと遊んでいると聞き、さすがは殲滅といわれたレティアの子供たちだとますます戦慄したようだ。

 そんな中、キルスをにらみつける者たちもいた。


「っち、なんだよ、あのガキ」

「まったくだぜ、大体なんであんなガキがBランクなんだよ。俺だって、まだCランクなんだぞ」

「どうせ、あのフェンリルのおかげだろ。やつ自身はたいしたことないはずだ」

「おっ、ならやるか?」

「そいつは無理だろ。今は戦時中だぜ。陣営内での争いはご法度だろ。しかもあの野郎聞けば陛下からの指名依頼らしいからな最悪こっちの首が飛ぶ」

「まじかよ。くそっ」

「ならよ。こんなのはどうよ」


 そんな会話をひそかにしている愚か者たちもいた。

 尤も、この会話はキルスはまったく聞こえていなかったわけだが……。



 そうして、翌日


「キルスはいるか?」


 冒険者たちが集まっている陣営にそんな声を出す騎士が1人現れた。


「んっ、ゾロテス? 久しぶりだな」

「ああ、先日以来だな。昨日はすまんな。こっちも立て込んでいてな」


 昨日の時点でゾロテスには会えなかったのだ。


「気にするな。ああ、じいちゃんからの伝言。身命をとして、国を守れだとさ」

「いわれるまでもない。しかし、おかげで身が引き締まった」


 ゾロテスにとってキルスの祖父フェブロはどんなに出世しようと、厳しく鍛えられた恩師であり恐怖の対象であった。


「それはよかった。それで、俺はどうすればいいんだ」


 昨日キルスはここの冒険者たちを仕切っている男に尋ねたところ、キルスへの指示は騎士団がするといわれてしまったのだった。

 それは、キルスが国王直々に指名依頼を出したことが理由で、実はその推薦をしたのがだれあろうゾロテスであった。


「ああ、お前にはちょっと派手にやってもらうことになった」

「派手に? どういうことだ」


 そのあとキルスはゾロテスから具体的に聞いたが、それはある意味で予想通りであった。



 時は過ぎ、キルスは現在シルヴァーにまたがり戦場に1人前に出ていた。


「まさか、まずは1人でって、おかしくないか」


 そう、ゾロテスから聞かされたものは、キルス1人でまず敵を攻撃するという普通に考えたらありえないものであった。

 というのも、敵の主力である魔獣軍団もまた先陣を切って攻撃をしてきており、敵兵はそれを背後から見て、適度にこちらが疲弊したところで一気に攻めてくるという手法を取ってくるからだ。

 つまり、これを防ぎつつそのやり方をパクったというわけである。


「まぁ、なんにせよ。とにかく敵の魔獣軍団は殲滅しろってことだしな。シルヴァー、とっとと敵の魔獣を片付けよう」

「バウ、アォォオォォォォオン」


 シルヴァーは普段まさに犬のようにおとなしい、しかし、今まさに狼のごとく遠吠えした。

 フェンリルの遠吠えである。これには敵の魔獣もおじけづいたが、逃げることができないようで、果敢にもシルヴァーに挑んできた。


「逃げねぇか。仕方ない。やるぞ」

「バウン」


 こうして、キルスとシルヴァー対魔獣軍団の戦いの火ぶたが切って落とされた。


 まず、シルヴァーがさらに戦場の真ん中までやってくると、同じく敵魔獣もやってきて、シルヴァーを囲む。


「数が多いな。よっと、シルヴァー好きに暴れろ」

「アウン」


 そういってキルスが降りると、シルヴァーは返事をしつつ元の大きさに戻った。


「ギャウン、グォォゥ」


 それを見た魔獣たちは最初こそ怯えたが、すぐにシルヴァーを囲み始めた。

 もし、この魔獣が通常の魔獣であればこれはありえない。

 魔獣は本能ので生きるため、シルヴァーのように圧倒的な強者が相手の場合、怯えて逃げ出す。

 これは、従魔でも同じだが、場合によっては主を守るためにと奮闘することもある。

 しかし、この魔獣たちは何者かの強制を受けているのかひるんだのは一瞬、すぐに持ち直したのだった。


「バウ?」


 シルヴァーもこれは初めての経験だったために、困惑している。しかし、シルヴァーはキルスより好きに暴れるようにと指示を受けた上に、シルヴァーもまたキルスや家族が住むここキリエルン王国を守るために戦いを決意した。


 そうして、始まったのは戦いというよりも蹂躙であった。

 まず動いたのは魔獣たち、シルヴァーのもとに集まっているのは30匹それが一気にシルヴァーめがけて牙や爪で襲い掛かった。

 それを受けたシルヴァーであったが、まるで蚊にでも刺されたの如く全く動じない。


「ガオォン」


 だからと言って、周囲からやられればうっとうしい、シルヴァーは振り払うように体を揺らす。

 それだけで、魔獣たちは吹き飛んだ。

 そして、シルヴァーはその隙をつくかのように前方の数匹の前に一歩出て、その身を踏みつけた。

 それにより、その数匹は踏みつぶされて絶命した。


「グォォォオン」


 そんなシルヴァーの強さを見たまだ生きている魔獣が、雄たけびをあげて再びシルヴァーに挑む。

 しかし、そんな魔獣たちに対して、シルヴァーは風をつかさどる魔狼エウロウルフのスキルであるトルネードを発動。

 これは単純に竜巻を生み出すスキルで、シルヴァーを中心に巨大な竜巻が巻き起こる。

 それにより、周囲にいた魔獣たちはあっという間に吹き飛ばされたのだった。

 こうして、あっという間にシルヴァーをかこっていた魔獣軍団30匹は全滅した。

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