第179話 いざ戦場へ
依頼から帰ったところで突如ギルドマスターに呼ばれたと思ったら、指名依頼があるという、その依頼人はなんとキリエルン王国国王その人であった。
その依頼内容は、帝国との戦争参加だった。
キルスとしてはさすがに戦争参加となると、家族に相談したいと一旦家に帰り家族にこれを話した。
それを聞いた家族はというと、最初こそ驚いていたものの、キルスとシルヴァーなら問題ないと送り出すこととした。
「それじゃ、ギルマスには私のほうから伝えておくわね」
「ああ、頼むよ」
家族での話が終わったところで、ニーナはギルドに戻り、キルスが依頼を受けたことをギルドマスターに伝えるとともに受理の手続きを行うこととなった。
そうして、翌日
キルスとシルヴァーは門の前で家族から見送られていた。
「それじゃ、キルス、気を付けてね。ちゃんと、無事に帰ってくるのよ。もちろん、シルヴァーもね」
「あ、わかってる。なぁ、シルヴァー」
「バウ、バウン」
キルスに続いてシルヴァーが大丈夫と返事をした。
「それじゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
こうして、キルスはバイドルを旅立ったのだった。
そして、キルスは街道から外れたところで、転移を発動。
転移先は王都近郊の森の中。
そこから、キルスとシルヴァーは通常通り順番に並んで王都の中に入っていった。
「とりあえず、王城に行って陛下に謁見するかな」
依頼書に受ける場合は王城に来るようにと指示があったのでキルスは指示通り、謁見のために王城に向かったのだった。
王城に入ったキルスとシルヴァーは、依頼書に同封されていた入城許可書を提示して特に問題なく王城に入ることができた。
「おおっ、キルスよ。待っておったぞ」
王城につくなりすぐに国王との謁見となり、緊張する間もなく謁見と相成った。
「ご無沙汰しております陛下」
「うむ、わざわざご苦労であった。して、依頼の内容を今一度説明しておこう」
「お願いします」
それから、宰相を通して改めて現在の戦況などを説明された。
それによると、どうやらあれからさらにもう1つ街が陥落し、ボライゲルド辺境伯、領都ボライゲルドからほど近いボラッド平原に迫っているという。
「わが軍は現在ボラッド平原にて敵軍を待ち受けている所のことです」
「……まじか」
キルスはあまりの進軍の速さに絶句しつつ、そう呟いていた。
「うむ、我もここまで早く進軍されるとは思ってもみなかった。しかも魔獣軍団、キルスよ。聞くが、従魔スキルというものはどうやって習得するのだ」
「はい、従魔スキルは、主に従魔とする魔獣から懐かれることが条件となっております。あとは、ごくまれに生まれながらに持っている者がいるということは聞いたことがあります」
「であるか、我もそれは聞いたことがあるがそれ以外にはないか」
「おそらく」
「ふむ、となるとやはり、一体どういうことか」
国王もキルスも宰相も首をひねるしかなかった。
「なんにせよ、現在わが領地が蹂躙されていることは事実です。キルス殿と従魔であるフェンリル、シルヴァーでしたな。あなた方ならばこれを逆に蹂躙することができると確信しておりますがいかがですか」
宰相はそう言った。
「そうですね。シルヴァーはフェンリルですから、そこらの魔獣には遅れをとることはありませんね」
「であろうな。しかし、キルスよそなたも相当な強さを持っているということはゾロテスから聞き及んでいる」
「まぁ、一応前世は勇者でしたから、それなりにできるかと思いますが、わかりました。いくら前世の記憶があろうと、キリエルン王国は俺の故郷全力で戦います」
「頼んだ」
こうして、キルスは改めて国王からの依頼を受けて戦場に立つこととなった。
王城を出たキルスとシルヴァーは、まっすぐに王都を出た。というのも、やはり戦況が危うく急いだほうがいいと判断したからであった。
「よし、シルヴァー、北に急いでくれ」
「バウン」
こうして、キルスはシルヴァーにまたがりとびだった。
王都を飛びだって数時間、ちょっと急いだこともありいつもの速度なら2日はかかった距離を数時間でたどり着いていた。
「あれか、思っていたよりまずそうだな」
現在眼下では帝国軍とキリエルン王国軍がお互いに距離を取ってにらみ合っていた。
「帝国は、11万ぐらいか、あまり減ってないな。それに対して、こっちは8万ってかなりやばいな」
最初はお互いに12万だったことを考えるとこの差は、いかにも敵の戦力が高いことを意味していた。
「しかも、宰相の話では、こっちは結構増援を送ったって言ってたんだけどな」
そうなると、本来ならこっちのほうが数が多いはずである。
にもかかわらず、8万まで減ったということはそれ以上に味方がやられているということに他ならない。
「急いだほうがよさそうだな」
というわけで、キルスはシルヴァーに王国軍陣営近くに降りたのだった。




