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第171話 秘密の会談

 エミルが逮捕されてそれを救うため、相手の商会のバックにいる侯爵よりも上の立場である王族であるカテリアーナに色々聞いてみようというわけで王城へとやって来た。

 しかし、キルスはBランクの冒険者とはいえ平民、その祖父フェブロも元国軍兵士大佐とはいえ、同じく平民、そんな2人がおいそれと王族たるカテリアーナに会えるわけがない。

 そこで、フェブロの元部下であり、現在騎士団長を務めるゾロテスにカテリアーナとの面会を頼んだのであった。


 話を受けたゾロテスは、自分では判断は出来ないとキルス達を詰所においてどこか確認へと走っていった。

 そうして、しばらく待っているとゾロテスが急いで戻ってきた。


「お、お待たせいたしました。お会い下さるそうです。ですが、こちらではなく、別の場所となりますので、ご案内いたします」


 ゾロテスは敬礼しながら、フェブロにそう伝えた。

 それを見たフェブロは苦笑いしていたが、その理由は言わずに鷹揚にうなずいた。


「うむ、そうだろうな。では、キルス行くか」

「ああ」


 ということで、キルスとフェブロはゾロテスの案内で詰所を出ることとなった。

 そうして、キルス達が連れてこられたのは、以前キルスが王城に招待された際に滞在した離れだった。


「申し訳ありませんが、もうしばらくお待ちください」


 離れについてソファに座ったキルス達にゾロテスがそういった。


「構わん、そもそも急に来たのはワシらだ。緊急とはいえ、そこまで急ぐ物ではない」

「それはそうだな」

「ありがとうございます。では、それまでは私がお相手をさせていただきます」


 ゾロテスがそういってキルス達の対面に座った。


「それは、構わんがお前も忙しいのではないか」


 そんなゾロテスにフェブロが仕事があるのではないかと尋ねた。

 それはそうだろう、騎士団長とて暇なわけではないだろう。


「問題ありません。団には副団長も居りますし、なにより大佐やキルスの相手となると他に任せるわけには行きませんから」


 ゾロテスにとってフェブロは尊敬する元上司、そしてキルスには前回部下がキルスの剣を盗むという失態をしたという負い目もあり、両方自分以外に相手をさせるわけにはいかんかった。


 こうして、しばらくキルス達はゾロテスを相手に様々な話をしていった。

 それから、1時間ぐらいしたところだろうか、不意に部屋の扉がノックされた。


「お越しになられました」


 入ってきたメイドがそう告げたところで、キルス達は立ち上がりゾロテスは素早く扉の方へと向かった。

 そうして、少ししたところで部屋にカテリアーナが現れたが、その時キルスとフェブロは固まってしまった。


「なっ!」

「へ、陛下!」


 2人が固まった理由それは突如、カテリアーナの背後からキリエルン王国国王エリュシン・ド・ドランゲル・キリエルンその人が現れれば仕方ないことだ。


「ふふっ、申し訳ありません、お父様もぜひお話を伺いたいとついてきてしまいましたわ」


 カテリアーナはそういって笑っているが、キルス達には当然笑えないことであるが、こればかりはどうすることもできなかった。


「先日、我が妻や娘たちが世話になった者の危機、それもその妻や娘たちが原因となれば、我が聞かぬわけにはいかぬからな」

「ええ、エミルさんが逮捕されたのは、わたくし達のせいですわ」


 カテリアーナと国王は事情を聞き、自分たちがエミルの石鹸を普段使いとして使っていたために、このような事態に発展したと自身を責め始めた。


「いいえ、陛下と殿下が気に病むことはありません。そもそも、あの石鹸をお贈りしたのは俺ですから、それよりも気に入っていただけているようでよかったです」

「はい、エミルさんの石鹸はとてもいい香りがしますから、お母さまも、お姉さまもとてもお気に入りです」

「それはよかったです」

「うむ、して、その石鹸、ずいぶんと厄介な事になったものよな」

「はい、まさか突然逮捕されるとは、夢にも思いませんでした」

「であろうな」

「お父様、なぜ、エミルさんが逮捕されたのでしょうか? わたくしが聞いた話ではエミルさんはあくまで趣味で石鹸を作成し、売るのではなくお配りしているとお聞きしているのですが」


 カテリアーナは自らの疑問を父である国王に尋ねた。

 これは、キルスもフェブロも推測しか出来ず改めて聞いてみたかった。


「ふむ、石鹸を販売しておるヘルフェリア商会はコリアット侯爵の肝いりでな」


 ここまではキルスもコルスによってつかんでいる情報であった。


「俺も祖父、えっとトーライドの元冒険者ギルドでマスターをしていた母方の祖父から聞いています。なんでも、ヘルフェリア商会の創設者がコリアット侯爵家の出だとか」

「そうなのですか?」

「ふむ、しかし、実はそれだけではない。そもそもヘルフェリア商会はコリアット侯爵が作らせた商会でな。今でもヘルフェリアは会長こそヘルフェリアの者がしておるが、支配しておるのはコリアットなのだ」


 ここで新たな情報が入った。なんとコリアット侯爵はヘルフェリア商会とどっぷりと繋がっているらしい。


「そ、それは、つまり、エミルの石鹸の存在は、侯爵閣下にとっても問題となったということでしょうか?」


 これまで、国王相手では言葉を発することもできずに黙っていたフェブロが、思わずとばかりに言葉を発した。


「その通りだ。エミル嬢の石鹸、我も妻や娘たちに勧められ使用したが、ヘルフェリアと比べて圧倒的に泡立ち、汚れの落ち具合何よりあの香り、圧倒的に優れている」

「あ、ありがとうございます」


 国王はフェブロが言葉を発したことに全く気にもせずに応え、さらにエミルの石鹸をほめたたえたことで、フェブロは深々と頭を下げた。


「よい、さて、今回の件だが先ほど少し調べさせた。カテリアーナ」

「はい、お父様、キルスさん、フェブロさん、エミルさんですが、少々厄介なこととなっております」

「厄介ですか?」

「ええ、エミルさんはコリアット侯爵より告訴されているのです」

「えっ!?」

「ヘルフェリア商会じゃないんですか?」

「はい、ですからエミルさんは王都で高等裁判にかけられることになります」

「なっ! まさか、そんな!」

「え、えっと、どういうこと」


 驚くフェブロだが、キルスには高等裁判と言われてもよくわからなかった。

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