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第17話 戦闘試験

 ついに冒険者登録試験にやって来たキルスは、ニーナに連れられて、ギルドの中庭にやって来た。

 そこで、すでにやってきていた、同じく受験者であるビルとシャイナの凸凹コンビ、そんな2人と話をしていると、ギルドの方から何やら1人の偉そうな少年がメイドやら執事やらを引き連れてやって来た。


「さぁ、さっそく、試験とやらを始めてもらおうか」


 試験ということは、この少年も登録試験を受験しにやって来たのだろう。


(それにしたって、なんか偉そうだよな、一体何者だろうか)


「ありゃぁ、貴族だな」


 キルスが何だろうと思っていると、背後から1人の男がやってきてキルス達にそう告げた。


「貴族、あれが?」


 ビルがそれに答えた。


「ああ、貴族の中には、道楽で冒険者になるやつとか、家を継げないようなやつがたまになりに来るんだよ」

「へぇ」


 今度はシャイナが応えた。


「貴族冒険者ってやつだな。本当にいるんだな」


 キルスは当然レティアから聞いて知っていた。

 その際に関わるなとも聞いていた。

 それに、前世の記憶でも貴族が冒険者になるという話は幾度となく読んできたし、自身でも書いてきた。


「よく知っているな」


 男は、感心したように言った。


「母親が元冒険者だからな。それより、あんたは?」


 ここで、キルスはまだ男の正体を聞いていないことを思い出した。


「おう、悪い、俺はDランク冒険者のチリアルってんだ」


 Dランク冒険者、この街ではありふれたランクだ。

 このチリアルがここにいる理由は、キルス達新人の実力を見るため、もし有望な者がいれば自分のパーティーの誘うつもりだった。

 ちなみに、チリアルと同じ考えの者は結構いるようだ。

 そんなことを話しながら貴族と男性ギルド職員がもめているのを見つめていた。


 少しして、ニーナとは別の受付嬢が1人の男を連れてきたところで、試験開始の時刻となった。


「試験を開始する。全員いるな」


 時間となった時ギルドから1人の中年男性が出てきた。


「俺は、今回の試験官を務める。元Bランクのゲイルクだ」


 Bランクという言葉に周囲はざわついた。

 それほどここバイドルではBランクというのは高ランクだった。


「まずは、戦闘試験だ。方法は簡単。1人ずつ俺と闘ってもらう」


 ゲイルクは淡々とそういった。


「では、僕から、始めてもらおうか」


 ここで、先ほどの貴族が前に出てそういった。


「順番は、登録順となる。まずはガイネル」

「俺か?」


 最初に呼ばれたのは、時間ギリギリにやって来た男だった。


「なっ、貴族である僕をここまで待たせて、なぜ、一番最後に来た者が最初なんだ」


 貴族は、そう叫んだ。

 それは、ここにいた者全員が思ったが、すぐに理由にたどり着いた。


「言っただろう。登録順だと、ガイネルは先週登録をしている」


 登録試験は週に1回、キルスのように街に住んでいたり、ギルドにニーナのような身内がいるから知っているが、街の外などの村出身の場合、その限りではない。

 そのため、タイミングによっては、受付が終了した瞬間に登録に来てしまうものもいる。

 ガイネルはまさにそのタイミングで登録したのだった。


「そんな事、僕の知ったことではない。貴族の僕をこれ以上待たせるというのか」


 貴族が何やら吠え始めたが、ゲイルクはそれに付き合っていられるかと、無視を決めたようで、一瞥した後ガイネルを見た。


「おい、君……」


 そんなゲイルクの態度に腹を立てている様子だったが、それでも時間が惜しいと、ゲイルクは無視をした。


「ガイネル、準備はいいか」

「おう、いつでも、いいぜ」


 それから、ガイネルと試験官ゲイルクの戦いが始まった。


 その勝負は、もちろんゲイルクの圧勝であったが、キルスをはじめ多くの者たちが感心したものとなった。


「まだ、粗削りだが、強くなるな」


 誰かがそういったが、キルスも同感だった。


(これから経験と、ちゃんとした訓練を受けたら、高ランクになれるかもな)


「次、ビル」

「よっしゃぁ」

「頑張りなさいよ」

「おう、任せろ」


 ビルの順番となり、ゲイルクの前に立った。


 そして、その戦いは、これまた逸材であった。


「今回の新人はやるな」


 チリアルがそうつぶやいたのをキルスは聞き逃さなかった。

 どうやら、チリアルはビルをパーティーに誘う気のようだ。


「次は、シャイナ」

「はい」


 そうして、シャイナとゲイルクの闘い、といってもシャイナはシーフ希望、戦いは専門ではない。それでも小柄な体躯を利用して小さく、素早くゲイルクを翻弄しながらの戦いは素晴らしいものであった。

 そういう風にキルスは見ていた。


「シャイナもやるな」

「あいつは、昔から、俺と訓練していたからな」


 そういったのはビルだった。


「なるほどな」


 それだけで、キルスは納得した。ビルの相手をするのならあのくらい出来なくてはならないだろうからだ。


「ふぅ、よし、次はキルス」


 ゲイルクもさすがに3人連続で闘ったために、少し疲れたようで一息入れた後キルスを呼んだ。


「そんじゃ、やるか」

「がんばって」

「ああ」


 シャイナに見送られて、キルスはゲイルクの前に立つ。


「お前が、キルスか、ニーナの嬢ちゃんからは聞いているぜ。相当強いとな。確かに、これは俺も本気を出す必要がありそうだ」


 キルスを見るなり、ゲイルクはそういった。


「そうかい、それじゃ、俺もそれなりに本気でいくぜ」


 キルスはゲイルクの実力はある程度、先の戦いなどで理解できていたので本気を出してくれた方が闘いやすいと判断していた。


 というわけで始まったキルスとゲイルクの戦いは一言でいえば、キルスの圧勝だった。それも、先ほどまで見せていた3人とは逆の光景だった。


「……まじかよ」

「おい、あのゲイルクって元とはいえBランクだよな」

「そのはずだ」

「というか、なにか、あの新人、Bランク以上ってことかよ」

「し、信じられない」

「……」


 キルスの実力に見ていた冒険者たちは信じられないものを見たという表情をしながらも、何とか言葉をひねり出すことは出来ていた。

 しかし、キルスと同時に受験しているガイネル、ビル、シャイナの3人は言葉を出すこともできない。

 それはそうだろう、自分たちが全く歯が立たなかったゲイルクを、キルスは逆のことをしたのだから、それだけで自分たちとキルスの力の差がはっきりとしてしまったのだ。


 そんな空気の中、何とか立ち直ったゲイルクは、最後に先ほどから文句ばかりを言っている貴族に向き直り呼んだ。


「最後は、お前だサディアス」


 こうして、最後の戦闘試験が行われたが、その戦いもさすがは貴族というふうで、ゲイルクは再び地に着くことになった。

 それもそのはず、貴族というものは幼いころより英才教育の一環として戦闘訓練を受けている。

 そして、サディアスは性格はともかく才能はあった。


 こうして、冒険者登録試験の戦闘試験は終了した。

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