表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
163/237

第163話 泳ぎ指導

 初めての海水浴、まず何をするかということとなったわけだが、考えてみれば、キリエルン王国は内陸、バイドルにも川はあるが、泳げる川ではない。

 そのため、前世から泳げるキルスと現代日本人である玲奈、元軍人であるフェブロとその息子にして幼いころから鍛えられていたファルコ、現在泳げる者はそれだけであった。


 そんなこともあり、まずはキルスと玲奈により泳ぎを教えることとなった。


「ワシ達の泳ぎはあまりこういう時向けではないからのぉ」


 フェブロがそういって、ファルコもうなずいている。


「なるほど、確かに、爺ちゃんたちって軍用だものなぁ。分かった、それじゃ、俺と玲奈で教えるよ」

「それがいいかもね。でも、2人だけだと、全員は無理じゃない」


 玲奈が時間的にも、能力的にも全員は無理だろうという。


「確かに、だったら、まずは俺と玲奈で母さんとか姉さんに教えれば、教えられる人間が増えるんじゃないか」

「ああ、確かに、レティアさんたちって、異様に運動神経いいもんね」


 そう、元冒険者であるレティアはいうに及ばず、エミル、をはじめとしたキルス一家は全員運動神経がめちゃくちゃいいのだった。


「というわけで、お前らは後で教えてやるから、そこらで砂遊びでもしてろ」

「すなあそびー」

「どうするのー」


 キルスが小さい弟妹に砂浜で遊ぶようにというと、これまで砂浜で遊んだことがない弟妹達はどうやって遊ぶのかをまず聞いてきた。


「ああ、そっか、街って砂場もないしな」


(というか、公園もないし、仕方ないまずはそっちだな)


 そんなわけで、キルスは弟妹達にまず砂遊びを教えた。


「そうだなぁ、まずは城でも作るか」

「おしろ? このまえみたっ」

「おう、そうだ。あんな城を砂で山を作ったりして作るんだ、ちょっと兄ちゃんが見本見せてやるから見てろよ」

「うん」

「わかったー」


 というわけで、キルスはこのために家から持ってきたコップなどに砂を詰めて、それをひっくり返す。


「ほら、これで塔が出来たろ」

「わぁ、すごい」

「すごいすごい」

「ぼくもやるー」


 それから、弟妹達は次々にコップなどに詰めて行きそれを返しては嬉しそうにしている。

 それを眺めつつ、簡単なアドバイスとともに、後は任せてその場を離れた。


「そんじゃ、泳ぎを教えるか」

「そうだね。でも、誰を教えるの」

「そうだなぁ。とりあえず、母さんと姉さん、後は……ニーナ姉さんとシュレリーにするか」


 このメンバーにした理由は、下の兄弟達の面倒を見ることができる上に運動神経がよくすぐに泳げるであろう者である。


「じゃぁ、私はキー君に教わろうかな」


 ニーナはすぐにキルスに教わりたいと願い出た。


「私は、レイナちゃんかな。従弟とはいえ、ちょっと男の子に教わるのはね」


 シュレリーは男であるキルスより、同性の玲奈に教わりたいという。


「それじゃ、私もレイナちゃんにお願いしようかな」


 エミルもまた、弟に教わるのはちょっと恥ずかしいために、玲奈を選んだ。


「じゃあ、私はキルスね」


 レティアはどっちでもよかったために、余ったキルスを選んだ。


 そんなわけで、それぞれ別れて泳ぎを教えることとなった。



「それじゃ、お願いね、キー君」

「ああ」

「ふふっ、それで、キルス、何をすればいいの」

「ああ、そうだな。まずは基本の、水の中で目を開けるってことだな」

「目を? 水の中で?」


 水の中で目を開けると聞き、ニーナは若干不安そうな顔をした。


「そうそう、大丈夫だよ。最初こそ怖いかもしれないけど、慣れればなんてことないから」


 これはキルスの経験談である。


「ほんとに? うーん、ちょっと、怖いわね」

「まぁ、やってみましょう、ニーナちゃん」

「は、はい」


 レティアは全く怖がることもなく、さっそく潜り実行してみた。


「ぷはぁ、なるほど、確かに、なんてことないわね」

「……さすが、母さん」


 レティアの相変わらずの豪胆ぶりにキルスは一瞬あっけに取られてしまっていた。


 その後、ニーナも勇気を出し、えいっと潜り、目を開けることに成功した。


「できたぁ、確かに、意外と大丈夫だったわ」

「だろ。っで、次は浮くってことなんだけど、これもコツさえつかめばすぐに出来るよ」

「コツ?」

「ああ、人間て水に浮くように出来てるから、身体の力を抜けば浮くんだよ」


 キルスはそういって、見本とばかりに浮かんで見せた。


「ほら、こんな風に、簡単だろ」


 それから、1分後、まずはレティアが浮くことに成功し、そのあと10分ほどで、ニーナもまた浮くことに成功した。


「2人ともさすがだな。そこまで出来れば後は、手と足を動かすだけだよ」


 というわけで、キルスはその後レティアとニーナにクロールや平泳ぎを教えて言ったわけだが、レティアに関しては、キルスが見本を見せただけで、すぐにマスターしてしまった。

 一方で、ニーナは少し手間取ったようだが、こちらもすぐに覚えてしまったようだ。


 そうして、2人がすいすいと泳ぐようなったところで、玲奈達の方を見たキルスであったが、そちらも問題なく泳げるようになっていた。


「……みんな、覚えるの早すぎだよ……」

「……ほんとにな。俺なんて前世で、かなり苦労したんだけど」

「あたしもだよ」


 運動神経が良すぎる4人に対してキルスと玲奈はただ、あきれるだけであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ