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第160話 旅行計画

 王都から帰ってきた翌日、キルスはリビングで武器などの装備の点検と整備を行っていた。


「さてと、次はエスプリートか、こいつは念入りに点検した方がいだろうな」


 エスプリートはオリハルコンとヒヒイロカネで出来ているため、本来なら整備の必要はない。

 しかし、約2週間キルスの手元から離れていたことや何よりブレンダー男爵に盗まれていたということがある。

 だからこそ、しっかりと念入りに、丁寧に整備をする必要があった。


「……うーん、とりあえず変なところはないな。それでもしっかり磨いておくか」


 というわけで、キルスは手入れ用の布で何度も何度も磨いたのであった。


「あっ、いたいた、キルスー」


 磨いているところで、不意に声をかけられその方を振り返るとそこには玲奈と幸がいた。


「ん? 玲奈と幸、どうしたんだ?」


 一体何の用かと、キルスはそう尋ねた。


「うん、ちょっとね、キルスにお願いがあるんだけど……」

「は、はい」


 そういって玲奈は両手を合わせるようにしつつ、キルスの様子を伺っていた。

 そんな玲奈の隣でも、幸が頭を下げていた。


「お願い、まぁ、いいけど、なんだ?」


 特にキルスに断るという理由もないため、出来ないことでなければ引き受けるつもりで内容を尋ねた。


「う、うん、あのさ、あたしたちも転移スキル覚えたいんだけど、いいかな?」


 転移スキル、それはキルスがカルナートに向かった際にスキルの石碑で習得したものだ。

 自身が言った場所であればどこでも、瞬時に行くことができる便利スキル、尤も、その消費魔力は膨大で、普通の人ならそれほどの距離を飛ぶことは出来ない。

 つまり、使えそうで使えないスキルである。

 まぁ、キルスの魔力量は膨大であり、まったく問題ないわけだが……。


「転移スキル?」

「うん、ほら、どこか行くってなると、大体キルスに頼まなきゃ行けないじゃない」

「ああ、まぁ、そうだな」


 キルスや玲奈がいた地球、厳密には違う世界だが、その両方の地球の日本では当たり前のように別の街に行くことができる。

 しかし、この世界では魔物が闊歩している為に自由に街を出ることすらできない。

 それが玲奈にとっては少々もどかしいところがあった。


「それで、あたしたちも覚えて使えるようになったら、わざわざキルスに頼まなくても大丈夫じゃない」

「はい、キルスさんも忙しいと思いますし」


 最後に幸がそう付け加えたことで、キルスは2人が自分に気を使っているのだと分かった。


「そうそう、ほら、この間だって、キルス毎日バイドルと王都を往復してたし」

「私たちも使えるようになれば、キルスさんの負担も減ると思います」


 2人がいうように、騎士団がエスプリートの捜査をしていた時、家族は王都観光をしていたわけだが、その際、キルスは毎日順番に家族を王都に転移で連れてきていた。

 ちなみに、キルスの魔力ならいっぺんに全員を運ぶことは可能なのだが、それをすると王国側に転移スキルの有用性を報せることとなってしまうために、毎日3人ずつを往復1回ということにした。


「確かに、2人も使えれば、運ぶ人数も増やせたよなぁ」

「でしょ」

「わかった、っていうか、俺としても助かるしな、じゃぁ、あとで石碑のところに連れて行くよ」

「ありがと」

「ありがとうございます」


 そういうことで、今度2人を転移スキルのあったカルナートに連れて行くことを約束したのであった。


 それから、さらに翌日。

 キルスは朝から仕事をして、午後には家に帰ってきていた。


「ただいまぁ」

「ああ、おかえり、キルス」


 いつものようにキルスが帰ると、これまたいつもの用にエミルが向かえた。

 そうして、リビングへと戻ると、そこではキルスの弟妹達がそれぞれ王都で買ってきた物を広げて遊んでいた。


「キルにーちゃ、おかーりー」

「おう、ただいま、お前ら楽しそうだなぁ」

「うん、あのね。これね、おうとでね。かってもらったの」

「ああ、そうだな」


 これはキルスもその場にいたために当然知っていたが、楽しそうに話す妹をむげにするわけにもいかず同意した。



「ああ、そっか」


 その日の夕方、キルスはあることを思いついた。


「どうしたの、キルス」


 それを聞いた玲奈がキルスに尋ねた。


「ああ、ほら、昨日玲奈と幸をカルナートに連れて行くって話をしただろ」

「うん」

「石碑があるのって、海の近くなんだよ。それで、ここは内陸、みんな海なんて見たことないからなぁ」

「えっ、それって」

「そうそう、それに、カルナートって多分赤道に近いのか、結構あったかいんだよ」

「じゃぁ、もしかして、海水浴できるってこと」

「そういうことだ、どうだ」

「いいっ!! いいよ、キルス、ナイス!」


 玲奈は1人嬉しそうにキルスの背中を幾度となく叩いた。


「お、おおう、だろ?」

「うん、あっ、で、でもさ、この世界って水着、ないよね」

「ああ、そういえばないな、カルナートでも見かけなかった、と思う」

「だったら、準備しないと」

「お、おう、でも、その前に姉さんたちに聞かないと」

「あっ、そっか、それじゃ、聞いてくる」


 そういって玲奈は勢いよくエミルのもとに走っていった。


「……あ、あの、キルスさん、海水浴というのは何でしょうか?」


 幸が恐る恐るキルスに尋ねた。


「んっ? ああ、そうか、幸のいた世界、青の時代には海水浴って考えは無かったよなぁ」


 ということで、キルスは幸に海水浴とは何かを話すのであった。

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