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第153話 捜査開始

「宰相、ゾロテスを呼べ」

「はっ、ただいま」


 若干怒りを露わにした国王がすぐに騎士団長であるゾロテスを呼ぶように指示。

 それに対して、まだ立ち直り切っていなかった宰相もすぐに持ち直して、慌てて外にいる騎士に指示した。


「お呼びでしょうか?」


 数分後急いできたのか息を切らせながらゾロテスがやって来た。


「うむ、宰相」

「はっ……」


 それから、宰相がことの経緯を説明した。


「なっ、そ、それは、誠ですか!?」


 ゾロテスは顔を真っ青にしながらそういった。

 それはそうだろう、キルスから預かった剣などの装備の保管は騎士団が行っていた。

 つまり、今回の事件は騎士団の保管庫で起きたというわけだ。


「残念ながらな」


 国王は心底残念そうに言った。


「っ、そうなりますと、我が部下の仕業、ということでしょう」


 ゾロテスは真っ青を通り越して真っ白になりながらそう絞り出した。


「おそらく、そうなるか」


 これには国王もまた悲痛な表情であった。

 というのも、騎士団の保管庫というものは当然だが騎士しか入ることはできないのだから、結果、エスプリートを盗み偽物と入れ替えることができるのは騎士しかいないということになる。


「申し訳ございません。如何様な処分も甘んじて受け入れます」


 ゾロテスは覚悟を決めた顔で国王に頭を下げたあと、キルスに向き合った。


「キルス、すまない、許してもらえるとは思えんが、謝罪させてほしい」


 ゾロテスはそういってキルスにまで頭を下げた。

 ゾロテスは騎士、それ以前に貴族だ。その貴族がただの冒険者で平民に頭を下げるなどありえないことである。


「いや、別にゾロテスが悪いわけじゃないし、俺としては剣が戻ればそれでいい」

「ああ、すまない、もちろん全力をあげて必ずや見つけ出そう」


 ゾロテスはそう決意した。


「なら、まずはコルダスというものを探せ」

「コルダス? ですか、それはいったい」


 何処から出た名前かゾロテスは尋ねた。


「この剣の制作者の名前です。我が国の秘宝である鑑定水晶により判明しております」


 ここにきて宰相がゾロテスに経緯を説明した。


「鑑定水晶? ですか、そのようなものがあるとは、知りませんでした」


 鑑定水晶の存在は、国王をはじめとした王族や宰相など国の重要人物のみとなる。

 その理由は当然秘宝だからというものもあるが、かなり長い年月使っていなかったという物もあった。


「そういうわけだ、まずはゾロテスよ。件の者を探すのだ」

「はっ、お任せください」


 そういって、ゾロテスはすぐに出ていった。


「キルスよ。すまぬが、捜査が終わるまで城にとどまってもらいたい」

「えっ、城にですか?」


 キルスも当然捜査が終わるまで王都にいるつもりでいた。

 しかし、それは王都の宿でということであった。

 そして、出来れば捜査に参加するつもりでもいたが、それに関しては宰相から断られた。

 というのも、この事件は騎士団をはじめ王国の問題、国をあげてそうさせてほしいと頼まれたのだ。

 そういわれればキルスも強く言えず、任せることにしたのだった。


 その後、キルスは離れに戻り、キルスの帰りを待っていた家族にことの経緯を説明したわけだが、当然この窃盗事件は家族みんなが憤慨したのだった。



 そんなキルス達をよそに、騎士団長ゾロテスは詰所に戻ると信用できる部下だけを集めていた。


「……というわけで、我が騎士団において窃盗が発生、陛下もお怒りとなっておる」

「なっ!」

「まさか!」


 それを聞いた騎士たちも驚愕した。


「ついてもは、まずはこの剣の制作者コルダスなる物を探す、グンデート知らないか?」


 グンデートの趣味は剣の収集ということで、休みとなれば鍛冶屋や武器屋をめぐっていることをゾロテスは知っていた。


「コルダスですか、もちろん存じております。腕のいいドワーフで、西区に工房を構えております」


 案の定すぐに答えが返ってきた。

 これには、ゾロテスもある程度予想通りだった。

 今回の事件、犯人にとってはとっさの出来事だったと睨んでいる。

 というのも、キルスが王都にやって来たのは突然だった。

 事前に準備ができることではない。

 そして、カテリアーナが招いたということで謁見までの時間も一週間と短かった。

 その間に偽物の剣を用意し、入れ替えるわけだから、時間などあるはずもなかったのだ。


「よし、ならばすぐにそ奴を捕らえるぞ」

「はっ」


 こうして、ゾロテス以下騎士団による捜査が開始したのだった。

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