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第150話 謁見

 キルスが王城にやってきて一週間が過ぎた。

 今日は予定通り国王との謁見である。

 そのため、今日は朝からエミルにより幾度となく服装などのチェックが行われている。


「うん、これでいいわね」

「さっきと、何が違うんだ」


 先ほどは納得していなかったのに、少しだけいじって納得する。

 キルスには意味が分からなかった。


「全然違うわよ」

「キルス様、そろそろお時間です」


 ちょうどその時、リッタがキルスを呼びに来た。


「わかった、今行く、じゃぁ、行ってくるよ」

「ええ、失礼のないように、ちゃんとするのよ」

「大丈夫だって」


 今日何度目かになる言葉をかけられキルスは苦笑いしながら応える。


「心配ねぇ」


 そんなキルスのに心配するエミルである。


「はははっ、キルスってば、エミルさんにはほんと弱いよねぇ」


 姉に勝てる弟はいない、まさにそんな図が今ここに出来上がっていた。


「ほら、いってらっしゃい」

「あ、ああ、行ってくる」


 というわけで、キルスはリッタの後に続いて部屋を出て、城に向かって行った。



 城内、この一週間で何度か入っているが、こうして表から入るのは初めてだ。

 いつもは、オルクの手伝いの時に裏口から厨房に入っていたためである。

 その表はというと、まさに豪華の一言であった。

 キルスの乏しい感性ではそれしか言えず、ただ絶句していた。


(すげぇな)


 そうして、お上りさんの如く(まぁ、実際にバイドルという田舎から出てきた)、周囲をきょろきょろと眺めて歩いていると、不意にリッタが大きな扉の前で立ち止まった。


「こちらへお入りください、後は別の者がご案内いたします」


 そういわれたので、キルスは中に入る。すると、リッタとは別のメイドが降り、何も言わずに歩き出したので、キルスは後に続いた。


(この先が謁見の間ってやつか)


 前世においての物語で主人公が謁見するという物を見てきたキルスだけに、まさか自分がこうして謁見の間にやってくる日が来ようとはと、感慨深くなった。

 それから、少し歩くと再び扉があり、その先には赤いじゅうたんが敷き詰められた階段、段数にして12段、そこを登りきると再び豪華絢爛な大きな扉がそびえていた。


「こちらが謁見の間となります」


 メイドがそういって、扉前に立っている衛兵に合図を送ると、その衛兵が扉をゆっくりと開けた。


 その扉を抜けるキルス、この時すでに先ほどのメイドはいない、ここからはキルス1人で歩かなければならない。


(長いな)


 そんなことを思いながら、なるべくきょろきょろしないようにしながら歩いていく。


(周りにいる連中は、この国の貴族か?)


 中央を歩いていくと、周囲には豪華な服に身を包んだ貴族がずらと並び、その前には騎士が並んでいた。

 そうして、歩くことしばし、事前に言われていた通りの場所までたどり着いたキルスはその場で止まり、片膝を付き跪いた。

 そんなキルスの様子を見た執事が奥の扉を静かに開け出ていった。


 そして、しばらくして謁見の間に大きな声が響く。


「エリュシン・ド・ドランゲル・キリエルン陛下、おなーりー」


 その声が響いたとたん、騎士たちは持っている剣を構え、貴族たちは跪いた。


「大儀である、面をあげよ」


 国王がそういったことで、貴族たちは立ち上がるが、キルスはそのままだ。

 これは、事前に奏するように指示があったからだ。


「さて、そなたがエンシェントドラゴンを討伐せし、キルスか、よい、面をあげよ」


 そういって声をかけられたことで初めてキルスは顔をあげることができる。


「ふむ、聞いていた通り、若いな」

「Bランク冒険者、キルス、現在15歳とのことです」

「ほぉ」


 キルスの年齢を聞き、国王は感心し、周囲にいる貴族たちはざわつく。


「キルスよ。まずは、我が娘カテリアーナに貴重なるドラゴンの血を分けたこと大儀であった。おかげで、我が国の危機を乗り越えることが出来よう」


 そういわれたここで、キルスはそのまま再び頭を下げる。


「その若さで、その強さ、見事である。また、聞いたところによると、そなたの剣は魔剣ということだが誠か?」


 そう聞かれたが、この場において言葉を発していいのは貴族のみ、平民に過ぎないキルスには言葉を発することはうるされていないので、仕方なくうなずくだけとなる。

 ちなみに、こればっかりは仕方ないので無礼とはならない。


「そうか、見てみたいものだな」

「陛下、こちらを」


 国王がキルスの剣を見てみたいということだが、これも事前に話が行われており、国王の隣に居た宰相が国王にキルスの剣を差し出した。


「ほぉ……」

「キルスさん、どうされました?」


 国王がキルスの剣を見て感心するのと、そんな国王の隣に控えていたカテリアーナがキルスの様子の変化に気が付き声をかけたのが同時だった。

 このようにこの場で好き勝手に発言をすることはたとえ貴族であっても許されない。しかし、国王の娘たるカテリアーナにはそれが許されるのである。

 そう、カテリアーナが気が付いたように、キルスの様子がおかしい。

 その目は国王が持つ剣、エスプリートに向けられていた。


(おいおい、どうなってるんだよ。一体!)

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[良い点] >(おいおい、どうなってるんだよ。一体!) A:王様が剣に魅入られて召し上げそうだ B:王様が剣に魅入られて振り回しそうだ C:誰かにパクられて偽物に替わってた 本命はCかな?
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