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第144話 美のために その2

 突然やって来た王族の女性たち、余りのことで茫然としていたがキルスであったが、何とか再起動して家のリビングへと案内した。

 それから、まずは自己紹介となった。


「お初にお目にかかります、キルスの姉でエミルと申します。以後お見知りおきを願います」


 そういって、エミルはスカートをつまんでカーテシーをした。

 その姿を見た王族の女性たちは、庶民とは思えないエミルの見事なカーテシーと、美しいとしか表現できない容姿に動揺を隠せずにいた。


「え、えっと、こちらこそですわ」


 王族の女性陣の中で、一番年上であり、立場も最も上である第一王妃のテリーヌが、自身の矜持を目一杯動かしそういった。


「えっと、それで、殿下、なぜ、こんなところに?」


 キルスは既知の存在であるカテリアーナに事情を尋ねた。


「え、ええ、実はですね。先日、わたくしたちの弟である第一王子であるリオンの誕生パーティを開いたのですが……」


 それからカテリアーナはここに至る経緯を説明し始めた。

 それによると、先日行われた第一王子のリオンテイルの誕生記念パーティが開かれたおり、カテリアーナはバラエルオン伯爵とその夫人エリーゼと面会した。

 その際にエリーゼからエミル作の石鹸や化粧水、使用人たちにとハンドクリームを受け取ったという。しかも、カテリアーナだけではなく、王妃達や王女たちにも贈られていた。

 この贈りものには彼女達も大変喜んだという。

 そして、これらの物を開発し、エリーゼが行っていた素晴らしいメイク術を持つという玲奈に興味を抱き、ここまでやって来たというわけであった。


「……というわけでして、ぜひ、こちらを開発された方にお目通り願いたく、失礼とは存じましたが、押しかけさせていただきました」

「……」


 話を聞いたキルスとエミルは絶句した。

 王族がそんな簡単にこんな田舎に来てもいいのだろうか、キルスはそう思った。


「えっと、つまり、殿下方は玲奈に会いに来たと?」

「はい、ご紹介頂けますか?」

「えっと、それは、もちろん構いませんが、姉さん」

「えっ、あ、うん、そうね。キルス、レイナちゃん呼んできてくれる」

「わかったけど、玲奈ってどこ?」


 キルスも別に玲奈を監視しているわけではないので、今日玲奈が何をしているかは知らなかった。


「今日は、キレル達とお買い物に行ってるわよ」


 今日の玲奈はキレルや幸とともに冬物の服を買いに出かけていた。


「えっと、それじゃ、俺は玲奈を探してきますので、席を外します」


 キルスは殿下たちを見てそういった。


「ええ、構いませんわ」

「その間は、私がお相手いたします」


 エミルがそういった。


「ええ、お願いしますわ。実はエミルさんにもお話を伺いたいと思っておりましたの」


 というわけで、キルスは急いで玲奈を探しに出かけたのだった。



 キルスは外に出ると、まず服屋を目指して走った。

 だが、街中のどの服屋を探しても玲奈たちは何処にもいなかったのだ。


「どこ行ったんだ?」


 その後キルスはあちこちを探し回った結果、ようやく雑貨屋を物色している玲奈たちを発見したのだった。


「ああ、いたいた、玲奈!」

「あれっ、キルス?」

「キルス兄さん、どうしたの?」


 玲奈たちは小物類を眺めていた。


「んっ、ああ、そうそう、それよりキルス聞いた。なんか、すごいVIPがこの街に来ているみたいよ」


 玲奈の言ったように殿下たちがやってきていることはすでに噂となっていた。


「だろうな。そのVIP、家に来てるぞ」

「えっ、そうなの!」

「ああ、っで、そのVIPの目当ては玲奈だそうだ」

「あたし? どういうこと?」


 玲奈は自分が目当てと聞いて意味が分からなかった。


「ほら、玲奈が作ったやつ、あれとかの話を聞きたいらしい。というわけで、すぐに帰ってきてくれ」

「う、うん、わかった。えっと、キレちゃん、サッちゃん、というわけだから、帰ろうっか」

「はい」


 そういうわけで、キルスと玲奈、幸とキレルは家に帰るのであった。



「失礼します。殿下、お待たせしました」

「まぁ、早かったですね。さぁ、どうぞ」

「し、失礼します」


 道中VIPが王族だと聞いて、玲奈は緊張が隠せない様子となっていた。

 ちなみに、幸は恐れ多いと奥に引っ込んでしまっていたが、キレルは会ってみたいとついてきていた。


「あら、あなたが?」

「は、はい、そ、その、あた、いえ、私が玲奈と言います」

「あらあら、ずいぶんとお若いのね」


 カテリアーナ達は、メイク術にはじめ化粧水などを開発したと聞き、勝手に玲奈をそれなりの年齢に達した人物と思っていただけに、実際の玲奈を見て驚愕した。

 それを感じたキルスは、日本の話をし始める。といっても、日本とも異世界ともいわずに、遠くの国とだけ言ったわけだ。


「……なるほど、それは、すばらしい国ですわね」

「ええ、我が国もそのようにしたいものですね」

「はい、お母さま、そうですわね」

「すごいです」


 キルスの話を聞き目をキラキラとさせている殿下たちであった。


「ええ、そうね。本当に、素晴らしいわ。さて、レイナさんでしたね」

「えっ、あ、は、はい」


 テリーヌに話しかけれれて玲奈はしどろもどろになった。


「本日は、あなたに美容についてお話を伺いに参りました。ぜひ、わたくしたちにご教授願えませんか?」


 テリーヌは頭を下げてそういった。

 これにはキルスを含め皆が驚愕した。


「は、はい、そ、その、あた、私でよければ……」


 玲奈も驚愕しながらも、つい了承したことで、さっそくと言わんばかりに玲奈の美容講座が始まったのであった。

 キルスはその時、女性たちの美に対する姿勢を見て若干引きつつも素直に感心したのであった。

 そして、講座が始まると、そっとリビングを出たのであった。

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