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第140話 最高の土産

「ただいまぁ」

「あら、おかえ、えっ!」


 キルスがバイドルの家に帰ると、いつものように食堂で給仕していたエミルにより出迎えられたが、その途中エミルが驚愕した。


「ふふっ、また来ちゃった」

「シュレリー? えっ、どうして、どういうこと」


 そう、キルスとともにシュレリーの姿があったのだ。

 この状況にエミルは混乱した。というのも、シュレリーは以前キルスに連れられて遊びに来ていたが、キルスがカルナートに向かうと同時にトーライドに帰ったからだ。

 トーライドからバイドルまではシルヴァ―でも3日はかかり、決して気軽にやってくることはできない。


「まぁ、説明は奥でするよ。土産もあるし」

「そ、そうね」


 というわけで、食堂から自宅リビングまで移動したのであった。



「あっ、シュレリーおねえちゃんだぁ」

「ほんとだぁ」

「どうしたの?」

「わぁ、みんな元気だったぁ。遊びに来たよぉ」


 リビングに入るとそこにはキルスの弟妹達、突然やって来た従姉のシュレリーを見つけ飛びついた。

 そんな従弟妹達の反応に嬉しくなったシュレリーは、さっそくと言わんばかりに遊びに行ってしまった。


「あははっ」

「あらあら、まぁいいわ、キルス、説明してくれるんでしょ」


 遊びに行ってしまったシュレリーに苦笑いしたキルスとエミルだった。


「ああ、わかってる」


 その後、キルスはエミルと途中でやって来たレティアにカルナートで転移スキルを獲得した話をした。


「……転移スキル……それはまた、凄そうね」


 レティアはその凄さに若干引きつつそういった。

 レティアとしては、自身が現役のころにぜひ欲しい能力だと思ったからだ。


「ほんとにね。でも、その力のおかげで、こうしてシュレリーを連れてこられるようになった訳ね」

「そういうこと」


 それからキルスはカルナートでの土産話をしつつ、各地で手に入れた土産を取り出し、姉弟達に配っていったのである。


「そういえば、玲奈と幸は?」


 土産を配り終えたところで、家の中に玲奈と幸がいないことに気が付きエミルに尋ねた。


「レイナちゃんとサッちゃんなら、ターナーさんのお店よ」

「ああ、そうか、そろそろ冬だしな」

「ええ、注文が一杯あったみたい」


 玲奈と幸は現在冬に向けて編み物によるセーターやマフラーなどの量産に入っていた。

 幸が毛糸を紡ぎ、玲奈が編んでいるのである。

 もちろんこれらの作業は2人だけでやっているのではないが、2人が中心となっているのは確かである。


「じゃあ、夜にするか」



 ということで夜である。


「あぁ、疲れたー」


 笑顔でそういいつつソファに座ったのは従弟妹達とたっぷり遊んだシュレリーだ。


「ふふっ、お疲れ様。といっても、すごく嬉しそうだけど」

「そりゃぁ、みんな可愛いもの」

「ただいま、って、あれ?」

「ただいま帰りました」


 玲奈と幸が帰ってきたが、ソファにシュレリーが座っていたことに驚いた。


「あっ、レイナちゃんとサッちゃん、おかえり、元気?」

「えっ、はい、元気ですけど、なんで、シュレリーさんが?」


 それから玲奈と幸にもキルスが転移スキルを獲得したこと、それを使ってシュレリーがやって来たことを話した。


「転移って、なにそれ、主人公じゃん」

「凄いです」

「おっ、2人とも帰って来たのか」

「うん、っていうか、キルス、なに、転移って、うらやましんですけど、あたしも欲しい!」


 玲奈はキルスにそういった。


「ああ、玲奈と幸も覚えることも使うことも問題なく出来るだろうけどなぁ、これって自分が行ったところじゃないと転移出来ないからなぁ」


 玲奈と幸も世界を渡ったことで膨大な魔力を獲得している上に、この世界に来た時エリエルから特別に翻訳スキルを与えられている。

 そのため、2人も獲得が可能であった。


「そうなんだ。まぁ、確かによくある設定よねぇ」

「だな、まぁ、それはそれとして、2人に土産があるんだけど、いるか」

「お土産? なになに」

「その、申し訳ないです」


 土産と聞いて玲奈はそわそわしだし、幸は恐縮していた。


「まずは、これだよ」


 そういってキルスがマジックストレージから何かの植物で編んだ袋を1つ取り出した。


「なにこれ?」


 取り出された大きな袋に訝しむ玲奈であった。


「こいつは、ネメニス穀っていってな。昔は家畜の餌だったらしい、まぁ、開けてみろよ」

「家畜の餌? そんなもの、いらないんだけど……ええっ! こ、これって!」


 玲奈は家畜の餌なんかどうするんだと思いながらも言われた通り袋の中を見てみると、そこにはかつて見慣れたものがあった。


「ちょっ、これって、ねぇ、キルス、お米? だよね」

「ああ、驚いたろ、カルナートではリゾットみたいにして食ってたよ」

「うそでしょ。もう食べられないかと思ってた」

「は、はい」

「さいこー、ありがと、キルス、ねぇ、さっそく食べようよ」

「おう、もちろんだ。でも、その前に実は土産はまだあるんだよ」

「えっ、まだあるの」


 そういって、キルスが次に取り出したのは、2つの壺、その中身は味噌と醤油である。

 それを見た玲奈は当然絶叫、幸もまた喜んだのである。

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