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第14話 ゴブリン討伐

 キルスの剣修行仲間であるドーラフが取り巻き2人を連れて防壁の外に出て行ったという情報を受けたキルス。

 とりあえずその場所に行き状況を確認しようと思った矢先。

 壁の向こうにいるドーラフたちがゴブリンに襲われかけていた。

 このままではまずいと判断したキルスは、急いで穴を抜けることしたのだった。


「せまっ」


 キルスは急いで穴を抜けようとしたが、この穴かなり狭く5歳の体でもまっすぐ通れず頭を通してから体をひねらなければ無理だった。

 それでも、ようやく通ることができたキルスが見たものは、まさにドーラフが果敢にもゴブリンに斬りかかっているところだった。


「うわぁ」


 しかし、幼いドーラフの技ではゴブリンには届かない。

 ゴブリンは、ドーラフの剣を簡単に回避してしまった。


「くそっ、なんで、当たらないんだ」


 ドーラフは、なぜ最強たる自分の剣がゴブリンごときに当たらないのか、全く分からなかった。

 それから、数合、ドーラフの攻撃が当たったのはわずかに1撃のみ、しかもその1撃はゴブリンにほとんどダメージを与えることができなかった。

 その時、ゴブリンの攻撃が、ついにドーラフを捕らえた。


「ひぃ、たすけ……」


 ドーラフは、自分ではこのゴブリンには勝てないと、そう感じて後ずさった。

 それが功を奏して、なんとか薄皮一枚を斬られるにとどめることができた。

 だが、それで安堵したのもつかの間、すかさずゴブリンによる追撃。


「あっぶねぇ。おい、ドーラフ大丈夫か?」


 万事休す、まさにそのタイミングでキルスが間に合った。


「キ、キルス?」


 ドーラフは自身を助けてくれた少年の名をつぶやいた。


「とりあえず、下がってろ、後は俺がやる」


 キルスは、とっさのこともあり、思わず子供らしくない言葉遣いでそういった。


「えっ、おい」


 ドーラフは、自分がどうしようもなかったゴブリン相手に自分よりも弱いキルスがかなうはずがないと思った。

 実際、キルスはどうしようかと考えていた。


(さて、後は俺がやるっていったけど、今の俺じゃ、剣ではドーラフよりも弱い。そのドーラフではゴブリンには勝てない。そうなると、今の俺じゃどう考えても詰んでるよな。でも……)


 そんなキルスだったが、1つだけ打開策があった。


「やるしかないか」


 キルスは、そうつぶやくと、おもむろに右腕にはまった腕輪をつかんだ。

 そして、その腕輪を外したのだった。


「さてと、それじゃ、久しぶりにやるか」


 キルスが外した腕輪は魔封じの腕輪。これはキルスが赤子のころに思わず魔法を使ったことでレティアによってはめられたものだ。これによりキルスは魔法が使えなくなっていた。

 しかし、この腕輪はキルスのことを思ってのものであったためにキルスでも簡単に外すことができる。

 といっても、これを外してはならないと両親から言い聞かせられていたために、これまでキルスが外すことはなかった。


 その間、当然ゴブリンも待っているわけではないために、持っていたボロボロの剣を振り回してきた。

 それを、難なく回避したキルスは、すぐさま呪文を唱え始める。


『風よ。汝は鋭い、鋭き刃、その刃にて我の敵を斬れ 風刃』


 キルスがそう呪文を唱え右手を前に出すと、周囲の風が集まり一筋のかぜとなりゴブリンを真っ二つにした。


「えっ!」


 ドーラフにとって生まれて初めて見る現象に驚愕していた。


 ゴブリンが死んだことを確認したキルスは外していた魔封じの腕輪を再びはめてから一息ついた。


「ふぅ、何とかなったか」

「お前ら―、無事かー」


 ちょうどその時、そんな声とともにガイドルフと警備兵がこぞってやってきた。


「無事だったか……なに?」


 ドーラフ達とキルスが無事だったことに安堵したガイドルフだったが、不意にキルスのそばにあるゴブリンの死体を訝しんだ。


「おいおい、これって、どういうことだよ。まさか……」


 ガイドルフはまさか5歳の子供が、ゴブリンを討伐できるとは思っていない。しかし、状況からみると、どう考えてもキルスがやったことだと判断できる。

 どういうことだと、困惑するしかなかった。

 それは警備兵も同じで、ひとしきりゴブリンとキルスを交互に見続けた。


「えっと、まぁ、それより、おい、ドーラフ」

「は、はい」

「わかっているな」


 その後、キルス達はガイドルフと警備兵たちに連れていかれ街まで戻り、ガイドルフから説教を受け、続けざまにそれぞれの両親からも説教を受ける羽目となったのは言うまでもないだろう。




「はぁ、壁に穴だと、しかも子供がそこを通って外に出ただって、おいおい、それは本当か」


 突然の報告に思わず地を出しつつ激しく動揺しているのは、バイドルを預かる代官、スナイダーだった。

 彼は、町人からは可もなく不可もなくの評価を受けているが、誰よりも街に住む人々を考えている男だった。

 その男からしても、壁に穴が空いていたことに気が付かなかったこと、それを子供が見つけ通って外に出たという事実は衝撃的だった。


「まずは、とにかく、その穴はふさいで、他に空いていないかも調べろ」

「了解しました」


 その言葉通り、それから警備兵たちが壁に張り付くように調べ、徹底的に穴が空いていないかを確認した。

 幸い、穴はドーラフが見つけた穴以外は存在しなかったのは、僥倖だったのだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] ドーラフは、キルスをやり込めようとして、壁から出たのでしょうが、壁から出てその後、どのようにしてキルスをやり込めるつもりだったのかな?
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