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第136話 転売目的か?

 ギガポイズンフォレストワームをなんとか討伐したあと、周囲を囲っていた冒険者たちはわらわらと集まってきた。

 そうして、話し合いの結果ギガポイズンフォレストワームは、ソフテノーグに譲ることにした。

 というのも、毒素材となるためにキルスでは扱いに困る上、その肉は食べることはできるだろうが、虫ということでキルスは好んで食べたいとは思わなかったからだ。


 ということで、その日は街をあげての宴会となった。

 それもそうだろう、これまでギガポイズンフォレストワームが近くに陣取っていたことで、人々にとっては言い知れない恐怖と不安からストレスがたまっていた。

 それが、キルスが討伐したことによって解放されたのだから。


 そうして、翌日キルスはギルドで報酬をもらってからそそくさとソフテノーグを後にした。

 急いだ理由は、当然騒がれるのを避けるためである。


「ふぅ、何とか撒いたな。しかし、まさかあそこまで騒がれるとはなぁ」

「バウ、バウン」


 上空において、キルスとシルヴァ―はようやくの一息を付いた。


「さて、じゃぁ、メインも終わったし、後はウオニースに行って米の入手だな」

「アウン、アウン」


 キルスが満面の笑顔でそういったことで、シルヴァ―も嬉しくなったのか、かける速度も上がった。



 こうして、旅立つことしばし、キルス達の眼下には街が1つ見えてきた。


「おっ、あそこだな。シルヴァ―、えっと、ああ、あそこに降りてくれ」


 ウオニースを確認したキルスはあたりを見渡し、いつものように街から少し離れた空き地にシルヴァ―に降りるように指示を出す、それにシルヴァ―は応えるのであった。


「ようこそ、ウオニースへ」


 ウオニースの街並みは、いたって普通だった。

 こんなところに米があるのだろうかと、そう思いながらもキルスは米を扱っている店を探した。


「おっ、あれかな?」


 そんなキルスの目にこの世界での米、つまりネメニス穀とかかれた看板が見えた。

 それを見たキルスは期待を胸にいそいそとその店に向かったのである。


「いらっしゃい、おやっ、外国人? 珍しいねぇ」


 店に入ってきたキルスを確認した中年の女性がそういった。どうやら、この店の主人の用だ。


「ああ、この間ネメニス穀? っていうのを食ったんだけど、美味かったからね。それを入手したくなったんだ。あるか?」

「あらっ、気に入ったの、嬉しいねぇ。ネメニス穀はこっちだよ」


 そういって、主人はキルスをネメニス穀のある場所まで案内した。


「これさ、見てみるかい?」

「ああ、頼む」


 見ない選択肢はなかったキルスは当然即答する。

 そうして、ようやくの対面である。


「……おおっ、これはっ」


 果たして、そこにあったのは間違いなく生米である。


「ちょっと1粒食べてみていいかな」


 キルスは生米の試食を申請してみた。


「いいけど、硬くて食べられないと思うよ」


 主人は笑いながら許可を出した。


「じゃ、じゃぁ、さっそく」


 ガリッ!

 キルスが米をかじると、そんな音を立て砕けた。

 前世での護人であれば現代人らしく顎が弱く砕くことはできなかっただろう。しかし、この世界で育ったキルスにとっては、硬い肉などの硬い食べ物はよく食べる。そのためこのくらいなら問題なく砕くことが出来た。

 と、同時にキルスの口の中に広がる懐かしい味、まさに米の味であった。


「……ああ、これだぁ」


 感慨深くそういった。


「これをもらいたい」

「毎度、一袋でいいかい」


 米は植物で編んだ袋、大きさは大体40キロはありそうなものであった。

 普通はそれを1つか、それをさらに小分けにした子袋で買う。


「いや、出来ることなら大量に欲しい。ああ、そうなると、持てないか……ああ、ちょっと待っててくれ、運ぶものを用意してくるから」

「ああ、行っておいで」


 女主人に送り出されてキルスは一旦店を後にしたのであった。


 そんな、キルスが次に訪れたのは街の門近くにあった馬車屋である。

 ここでは、馬車のレンタルはもちろん馬車の販売も行っている。


「いらっしゃいませ、本日はレンタルですか?」


 キルスが冒険者然とした恰好をしていることもあり、対応した若い女性店員はレンタルだと思った。


「いや、この店で一番大きい荷馬車をもらいたい」

「荷馬車ですか? えっと、購入ですと、大金となりますが……」


 大丈夫ですかと暗に尋ねた。


「問題ない、これでもそれなりに稼いでいるからな、いくらだ」

「はい、大きさにもよりますが、この店で一番となると、金貨3となりますがよろしいですか?」

「ああ、それで頼む」

「畏まりました。では、馬車を引く馬はどういたしますか?」


 女性店員はさすがに馬車だけ売って終わりではなく当然引く馬も別売りで進めてきた。


「いや、俺には従魔がいるからな。その従魔で問題ないから馬はいらない、ああ、だが、従魔にあうハーネスはいるけどな」

「従魔、ですか、わかりました、では、お連れ頂いてもよろしいですか」

「ああ、ちょっと待ってくれ」


 そういって、キルスは店の前で待たせていたシルヴァ―を連れて行き、女性店員は若干顔を引きつらせながらも丁寧に対応し、キルスもなんとか荷馬車を購入することができた。

 ちなみに、シルヴァ―のハーネスなどもろもろの値段と合わせて、金貨3枚と銀貨4枚となった。


 そうして、荷馬車を手に入れたキルスは意気揚々と先ほどの米屋、ネメニス穀を売る店へ向かい、荷馬車に乗るだけの米を購入することにしたのであった。

 その際、ネメニス穀を販売している主人は購入量からどこかで売るつもりかと、疑われたのは余談だ。

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