第134話 ギガポイズンフォレストワーム
翌日
キルスはソルンドの森にシルヴァ―とともに立っていた。
「さて、シルヴァ―、そろそろやるか」
「バウ、バウ!」
キルスがそういうと、シルヴァ―も気合十分といった風にそう吠えた。
「じゃぁ、後は頼む」
「任せな。あんたもしっかりやりなっ」
キルスは近くにいた女性冒険者に声をかけるとそう返事をされた。
なぜ、ここに女性冒険者がいるかというと、それは前日受付で情報を得た後のことだ。
討伐事態はこの街の冒険者では無理だが、そのあとの解体や運搬は任せてほしいとギルドから提案を受けた。
解体はともかく運搬なら、キルスのマジックストレージがあれば問題ない。
しかし、キルスのマジックストレージの存在は当然秘密、そのため小さい魔物なら問題ないがあれだけ大きい魔物となるとさすがに目立つために使えない。
ということもあり、キルスは了承したのであった。
それなら、討伐後でもいいのではと思うが、彼女たちにはもう1つ仕事があった。
それが、闘っている最中に邪魔をするものが現れないかと監視だ。
そんなわけで、現在ギガポイズンフォレストワームの周囲を囲むように多くの女性冒険者が立っているというわけだ。
こうして、準備万端、ついにキルスはギガポイズンフォレストワームと対峙する。
「こうして近くで見ると、ほんとでかいな……うぉっと!」
キルスが足元までやってきて見上げていると、いきなり表面に滴っていた毒がキルスめがけて落ちてきたので慌ててよけた。
「あっぶねっ! 危うく闘う前に終わるところだった」
キルスの額からは冷や汗が流れていた。
「バウン?」
シルヴァ―からも大丈夫? と言われた。
「ああ、大丈夫だ。さてと、こんなアブねぇ奴はさっさと討伐してしまうか」
「バウン」
キルスは愛剣であり魔剣エスプリートを抜き放ち、まずは小手調べという風に切りつけた。
ガキィィン
まるで金属とぶつかったような硬い音がして、はじかれてしまった。
「かてぇな。おい」
エスプリートは長い年月をエンシェントドラゴンの魔素を浴び続けたことでオリハルコンへと進化している。その切れ味はすさまじく、金属でさえバターのように斬ることができる。
そんなエスプリートの刃とキルスの長年かけて培ってきた技術をもってしても切り裂くことは適わなかった。
「シルヴァ―!」
キルスは続いてシルヴァ―に攻撃するように指示した。
それを受けたシルヴァ―空掛けのスキルを行使して飛び上がり、文字通り食らいついた。
「ギヤァァァァッ」
どうやら、シルヴァーの牙は通るようでギガポイズンフォレストワームは悲鳴をあげた。
「どうやら、全く通らないってわけじゃなさそうだな、なら」
ここで疑問、ギガポイズンフォレストワームは全身から毒を滴らせてそれをまき散らしている。
そこにシルヴァ―は食らいついた。
そうなると、本来であればシルヴァ―はその毒に侵されるのではと思うだろう。
しかし、それは杞憂だ。シルヴァ―は魔狼王、すべての魔狼の能力を使うことができる。
そして、魔狼の中には毒の牙や毒の爪といった攻撃手段を持つものもいる。
フェンリルはその能力を持っているし、何よりそんな魔狼の攻撃を受けたとしても耐えきれるように毒無効というスキルも持っているのである。
また、現在シルヴァ―はいつものサイズであり、本来のサイズへとはなっていない。
その理由は、サイズちがいで力が変わるわけでもないし、何より本来の大きさとなったら、まさに怪獣大決戦の様相になってしまう。
そうなると、下手をすればソルンドの森どころかソフテノーグまで被害が出かねないからだ。
「なら、次は俺の番だな」
キルスはそうつぶやくと、エスプリートに魔力を込める。
それを、持って再びギガポイズンフォレストワームに斬りかかる。
「グギャァァァッ!」
今度の攻撃は通った。
「っち、あせぇな」
かつてエンシェントドラゴンを両断した魔力剣をもってしても、1mほど切り裂いただけであった。
1mというと、かなりの深いと思うが、ギガポイズンフォレストワームは巨体だ、その直径だけでも10m近くはあり、1mではたいしたことはなかった。
「なら、何度も行くだけだ。っと、うぉうっと」
当然ギガポイズンフォレストワームもただ斬られるわけではない、身体をひねりシルヴァ―を振り払い、尾によってキルスを薙ぎ払おうとする。
シルヴァ―の方は、問題ないにしても、キルスはしっかりと毒が効く、そのため当たるわけにはいかず、なかなか攻撃を当てずらいものとなっていた。
それでも、幾度となく切りつけ、よけるを繰り返して、ようやく切断に成功する。
「グヮギャァァァァァ!!!」
身体が切断されたことであたりに響くような悲鳴をあげのたうち回る。
「ヌォッ、あぶねっ、よっと、シルヴァ―!」
余り暴れるのでさすがのキルスでもよけきれず、溜まらずシルヴァ―を呼んだ。
シルヴァ―もそれを察知して素早くキルスの元へと急いだ。




