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第133話 情報収集

 この世界に来てはや15年、キルスはついに日本人なら誰もが夢見るソウルフード、米と出会った。


「こ、こんなところにあったのか……」


 キルスは久しぶりの米を噛みしめつつそうつぶやいた。


「おっ、それが気に入ったのか」


 とここに声をかけてきたのは、キルスとともにオーク討伐に参加していたドロシーであった。


「ああ、まぁな」

「ふふふっ、それはネメニス穀っていうもので、昔は家畜の餌だったんだよ」


 キルスがまるで子供用にはしゃいでいる姿を見たドロシーは微笑みつつ教えてくれた。


「家畜の、そうなのか」


 米を家畜の餌、日本人であるキルスにとっては衝撃的な内容だった。

 しかし、確かに米は生では硬く食べられないことを考えるとそれもアリかと思えてしまった。


「そう、長いこと家畜の餌だったんだけど、数十年前だったかな、この国でちょっとした干ばつがあってねぇ。麦も野菜も全く取れなかったんだ。でも、ネメニス穀だけは収穫出来て、試しに調理してみたんだよ」


 すると、思っていたよりもずっとおいしいことに気が付いたという、それ以来研究が進み、現在ではカルナート王国各地で食べられるようになった。


「ほんと、こんなおいしいものを家畜の餌にしていたんだから、男どもは何をやってたんだろうと思うよ」


 この国の女性は何かと、男を責めるような言葉を使うことがある。

 男であるキルスとしては苦笑いして聞くしかなかった。


「なるほどな。それで、こいつは何処で手に入るんだ」

「気に入った。これはね、あたしの故郷で、ウオニースって街の特産品なんだ。寄ってみるといいよ」

「ウオニースか、分かった必ず行くよ」


 キルスはそういいつつも、社交辞令ではなく本気で行こうと考えていた。


(米、かなり買わないとな)


 そうした衝撃的な出会いを経たキルスはその後も宴会を楽しみつつ、その日は宿に戻ったのであった。


 翌日、キルスはギルドに来ていた。


「キルスさん、いらっしゃいませ。ギガポイズンフォレストワームの件ですね」

「ああ、情報を頼む」


 ギガポイズンフォレストワーム、長い名前だが今回キルスがカルナートにやって来た真の目的はこのワームの討伐である。

 先日もこの情報をもらおうとギルドを訪れていたが、急遽オークの集落が発見されたので討伐に向かったのであった。


「そうですね。出現したのは今から3ヵ月ほど前、王都より南西に位置するソフテノーグの街近くにあるソルンドの森です。名前の通り巨大で毒をまき散らしているそうです。現在は出現位置からほとんど動いていないとのことですが、我が国の冒険者では太刀打ち出来ず、こうしてお願いしているというわけです。詳しくは現地のギルドでご確認ください」

「おう、わかった、ソフテノーグだな」

「はい」



 それから、キルスは情報をもとにシルヴァ―にまたがり一路、ソフテノーグに向かった。



 王都からソフテノーグまでは、シルヴァ―の足で1日の位置にあり、途中で夜営をしてたどり着いた。


「あそこか、ていうか、ほんとでかいな」


 いつもは街の確認の為に鑑定スキルを使うが、今回はその必要がない。

 なぜなら、街の近くの森から巨大なミミズのようなワーム型の魔物の顔が飛び出していたからだ。


「下手したら、シルヴァ―よりでかいんじゃないか」


 キルスがそう思うのも無理はない、ギガポイズンフォレストワームの大きさは、ゆうに100mは越えているように思う、シルヴァ―が本来の大きさとなると隊長70mぐらいということを考えれば、それよりも大きいことは明らかだ。


「あれじゃ、普通の冒険者じゃ無理だよな。それに毒をまき散らすってことだし、俺でもヤバイな。まぁ、それはともかく、とりあえず街に行ってギルドに聞いてみるか」


 ということで、キルスはギガポイズンフォレストワームが鎮静している森とは反対側の門の近くに降りるようにシルヴァ―に指示し、街へと入っていった。



 街へと入ったキルスであったが、街の中は特にパニックになっているというわけでもなく、普通だった。

 この街も当初はかなりパニックとなっていたが、3ヵ月も経った今ではすっかり慣れてしまっていた。

 そんな街を歩きながらギルドを目指していれば、当然シルヴァ―を見た住人がギョッとしていた。

 それでも、やはり巨大な魔物が近くにいるだけあり、すぐにシルヴァ―の首にかかっている従魔石に気が付き、または、知らなくても知っているものが教えることで、特にそれ以上の問題もなくたどり着いていた。


「いらっしゃいませ、本日はどうしました」


 ギルドに入ると、やはりカルナート王国、冒険者のほとんどが女性であり、受付は男性であった。

 そんな、男性受付の前に立ったキルスは懐からと見せかけて依頼相とギルドカードを提示した。


「移動報告と、こいつの情報をもらいたい」

「かしこまりました。失礼しま……えっ!」


 丁寧に受け取った受付はキルスのカードにかかれたランクと、依頼表に驚愕した。

 この受付のキルスに対する第一印象ではまだ冒険者になりたてのだったが、移動報告をしてきたことからDランクかと思っていた。

 それが、実際にはBランクで、しかも見せた依頼表がこの街で悩まされている種である、ギガポイズンフォレストワームというのだから、これを驚くなという方が無理があるだろう。


「え、えっと、あなたが、これを、受けるので……」

「ああ、そのつもりだよ。まぁ、俺もキリエルンのトーライドのギルマスから頼まれたんだけどな」

「!? そ、そうですか。わ、分かりました。では、ご説明します」


 ギルマスから受けた依頼ということで受付もキルスの実力が認められたものだと判断せざるを得なかった。

 そうして、受付から説明を受けることなったわけだが、それによると、この地域には元々ポイズンワームとフォレストワームという2種類の魔物が存在していた。

 フォレストワームは土魔法を駆使して土中に潜り土を柔らかく耕す、そこに木の種が落ち木が生える。

 しかも、フォレストワームのフンはとても栄養価が高いのか、1週間もあれば立派な木と成長してしまうという。

 一方ポイズンワームはその身から出す毒により、木をからしてその養分を摂取している魔物だ。

 この両者が上手くバランスを取りソルンドの森が形成されていた。

 そして、ギガポイズンフォレストワームはこの両者の交雑種と思われるという。

 しかし、ここで疑問が生じる。同じワーム種でも交雑はありえない、というのもポイズンワームの毒でフォレストワームが死んでしまうからだ。

 だが、どういうわけか両者の特徴を持った毒を持ちながら土魔法を操るワームが出現したという。

 ちなみに、名前にまずポイズンと入っているのは単純に発見時毒をまき散らしていたためにポイズンワームの変異種と思われたからだ。

 また、巨大化した理由はわからないが、おそらく長い年月土中で発見されずにいたことと、交雑による変異種となったことがあげられるとのことだった。


 そうした情報を聞いたキルスはどうやって討伐しようかと悩むのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] オーク退治に参加した時の報酬は、どうなったんだろう。
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