第128話 女尊男卑の国
キリエルン王国を無事に出国したキルスとシルヴァ―は、現在両国の間にある緩衝地帯を歩いている。
周囲には当然、多くの人々が歩いており、そんなキルスとシルヴァ―から距離を開けていた。
キルスもシルヴァ―も、その様子を気にもせずにカルナート側の門を目指して歩いていた。
「シルヴァ―、疲れてないか?」
「アウン、アウン」
キルスの言葉にシルヴァ―は疲れてない、大丈夫、という風に吠えた。
「そうか、じゃぁ、関所を越えたら、また、飛んでもらうからな」
「バ、バウ」
シルヴァ―は任せてと吠えた。
こうして、歩くこと300メートルほどかキルス達の目の前に巨大な門が出現した。
「待ちなさい。そこのあなた、止まりなさい」
門に近づくと、武装した女性が数人やって来た。
(ここも、女ばかりなんだな)
キルスはそう思いながらも立ち止まった。
「なんだ?」
「そ、それは、魔狼か?」
どうやら、シルヴァ―を見て飛んできたようだ。
「ああ、俺の従魔だ」
「従魔? そうか、申し訳ないが詰所までご同行願えるか?」
「ああ、構わない、ああ、それと、これを向こうのタライドって兵士から預かってるんだが」
そういって、キルスは懐から手紙を取り出して見せた。
「タライド殿から、了解した。こちらへ」
その後キルスは詰所に、シルヴァ―は門から少し離れた場所に待機となった。
詰所に入ると、そこは明らかにキリエルン側とちがいなんとも清潔だった。
そこが、男所帯のキリエルン側と、女所帯のカルナートのちがいというものであろう。
「そこにかけなさい」
そういって、女兵士の1人がキルスに椅子を進め、自身も反対側に座ると、キルスが渡した手紙を見始めた。
「……うむ、向こうで確認済みか、それと、我が国の魔物の討伐依頼を受けてくれたとあるが、相違ないか?」
「ああ、間違いない、これは、依頼書だ。確認してみてくれ」
「失礼する……確かに、しかし、その若さでBランクとは、それと、フェンリル、まさか、そのような存在をこの目で見ることができるとは思わなかった」
この女性兵士とタライドは当然ながら知り合いのため、その手紙の内容には驚いたものの、信じたようだ。
「問題ないようだ。あなたの入国を許可しよう。だが、あなたが受けた依頼の魔物は相当なものだと聞いている。くれぐれも気を付けるように」
「ああ、わかってる。といっても、実際に見てみないことにはなんとも言えないけど」
「そうだったな。では、サラ、大門をあけるよう、伝えてくれ」
「了解しました」
というわけで、キルスは無事にカルナート王国に入国することができた。
「じゃぁ、シルヴァ―、また頼むな。目指すは、王都だ」
「バウン」
キルスは再びシルヴァ―にまたがり、王都がある南西に向かっていった。
関所から王都へはシルヴァ―の足で1日の距離にある。
関所を出たのが、昼過ぎであったことから1晩夜営をして翌日の昼前には王都にたどり着いた。
「へぇ、あれが王都か、でかいな」
王都というのはその国において最も発展していることが多い場所だ。その例にもれず、カルナートの王都エイドルもまた、人口約20万人の都市である。
「シルヴァ―、あそこらへんに頼む」
「アウン」
いつものようにキルスはシルヴァ―に適当な空き地に降りるように指示を出した。
そうして、これまたいつものように王都の門に向かって歩いていく。
「ようこそ、王都エイドルへ、身分証と従魔証の提示をお願いします」
キルスが門まで来ると、女性の警備兵が一瞬シルヴァ―に驚くもののすぐに平静を取り戻してそういった。
「あっ、ああ」
これまで、どんな街を尋ねても、ほとんど警備兵が飛んできたというのに、ここでは普通に対応されたので、キルスも一瞬戸惑ったままマジックストレージから自身のギルドカードとシルヴァ―の従魔証を取り出して提示した。
「……っ! 確認しました。どうぞ、お通り下さい」
女性警備兵はキルスのランクとシルヴァ―の種族に驚愕するも、これまたすぐに平静を取り戻して手続きを済ませた。
(へぇ、これが、王都の警備兵ってわけか、優秀なんだな。そういえば、キリエルンの王都はどうなんだろうな)
キルスはキリエルンの王都には言ったことがないために、同じように優秀なことを願いたいと思った。
「さて、どんな国かな」
キルスはそうつぶやきつつ、門をくぐり周囲を見渡した。
すると、やはりというか、女性が多い、屋台の店番も見かける警備兵も、道行く人も、冒険者もほとんどが女性だった。
もちろん、中には男性もいるが、その男性は、明らかに主夫といった装いであり、買い物袋を持っていた。
また、中には、数人の女性に囲まれてしどろもどろになっている男性の姿も見えた。
「ほんと、男女逆って感じだな」




