第127話 国境の関所
トーライドを出発したキルスは、一路カルナートとの国境に向かって進んでいた。
今更ながら、キルスがなぜ、初めていく場所に迷うことなく行くことができるのか、それを説明しておこう。
もちろん、地図などは持っていない、地図はこの世界においては軍事機密、一介の冒険者が持てるものではない。
なら、どうやっているのかというと、普通ならどの街を経由していくのかの情報を元に街道にかかれた案内板にしたがって向かう。
しかし、キルスはシルヴァ―にまたがり、空掛けのスキルで空を飛んでいる。案内板なんてものは存在しない。
そこで、役立つのが鑑定スキルだ。
キルスは、経由地の情報を元に、上空から見えてきた街に鑑定をかける。すると、街の上空にその街の名前が記載されるのだ。
それを見たキルスは、まるでゲームだなと思った光景であった。
こうして、鑑定スキルを駆使して迷わずに目的の場所まで行けるのである。
そうして、ついに眼下にはカルナート王国との国境となる関所を確認することができた。
「あそこか、シルヴァ―、あのあたりに降りてくれ」
いつものようにキルスはシルヴァ―に街道から少し外れた空き地におるように指示を出す。
「バウ」
シルヴァ―はその指示に嬉しそうに返事をしながら空き地に降り立った。
「よしっと、じゃぁ、行くか」
「バウバウ」
キルスはシルヴァ―にお疲れの意味を乗せて撫でてから街道に向かって歩き出した。
街道に出ると、そこには行列が出来ていた。
「うぉぅ」
街道に並ぶ人たちが、シルヴァ―を見て声をあげる。
これは、いつものことなので、キルスもシルヴァ―も慣れて物だった。
「俺の従魔だ。安心しろ」
「ああ、なんだ、従魔か、驚かせやがって」
「心臓に悪い」
こういった苦情もまた、いつものことであった。
そうして、少し距離をおかれながらも並ぶこと小一時間、関所に近づいていくと不意に兵士が数名やって来た。
「通報があった。巨大な狼を連れているのはお前か?」
どうやら、誰かが兵士に通報したらしい。
「ああ、まぁ、俺しかいないから、言っておくが、こいつは俺の従魔だぞ」
「そのようだな。従魔石があるし、だが、念のため来てもらっていいか」
「ああ、特に構わないぞ」
というわけで、キルスはれつから離れて兵士たちとともに詰所に向かうことになった。
「悪いが、その従魔は中には入れられない」
「わかってるって、シルヴァ―、ちょっとそこらで待っていてくれ」
「アウン」
キルスがそういうと、シルヴァ―も慣れた様子で、詰所入り口の側でお座りの状態となった。
シルヴァ―と別れて、詰所にやって来たキルスは、これまたいつものように身分証と従魔証の提示を求められた。
「ほら」
「わるいな。って、おいおいおい、まじかよ」
担当者はキルスから受け取ったギルドカードに記載されたランクと、従魔証にかかれたシルヴァ―の種族に目を見開いた。
「どうしました。先輩」
その様子を見ていた別の兵士がそう尋ねた。
「いや、おい、お前ちょっとタライド先輩を呼んで来い」
「はい」
そういわれて、兵士の1人が慌てて部屋を出ていった。
「はぁ、お前さぁ、やるならもっとうまくやらないとだめだぜ。こんな分かりやすい……ゴッ」
残された兵士がキルスに対して訳の分からない説教を始めようとしたところで、不意に入ってきた新たな兵士がその頭に拳骨を落とした。
「そうではないだろう。まったく、いや、すまない」
「先輩、なんでこんなに早く」
「扉の前にすでにおられました」
どうやら、このタライドという兵士は呼ばれる前から扉の前で待機していたらしい。
「っで、君が問題の子だね。ちょっと失礼するよ」
そういって、タライドはキルスのギルドカードを改めた。
「ふむ、なるほど」
「どうです。先輩、偽物でしょ」
「いや、本物だ。失礼した。わたしもこの者たちも悪気があるわけじゃないんだ、すまない」
「いや、よくあることだし、このランクには俺自身が一番驚いてるから、気にしないでくれ」
キルスがそういったことで、タライドはほっとしつつ、本来効くべきことを尋ねてきた。
「では、出国の手続きをするが、目的は?」
どうやら、このままタライドが応対するようである。
「カルナートに出現したっていう魔物の討伐依頼を受けたんだ。これが、その依頼書だ」
そういって、キルスは懐から取り出すふりをしてマジックストレージから依頼書を提示した。
「では、拝見……ああ、たしかに、この話は聞いている。なるほど、君が受けたのか、うむ、確かに、君なら問題ないだろう。その若さでBランク、さらにはフェンリルを従魔にしているとは、了解した。君の出国を許可する」
ということで、キルスは無事出国を果たすことができるようだ。
ただ、問題が1つ。
「ああ、わるいけど、俺の従魔なんだけど、大きさから門を通れないんだけど、飛び越えさせるか、大門を開けてもらえると助かる」
「ふむ、そうか、フェンリルだったな。どのくらいの大きさだ」
タライドは先ほどまでキルスの相手をしていた兵士に確認した。
「そうですね。フェンリルとしてはかなり小さいと思いますが。それでも大きいですからね。大門を開ければ通れるはずです」
「そうか、なら、大門を開ける許可を出そう」
というわけで、シルヴァ―も無事にキリエルン王国側の関所を抜けることができたのである。




